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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
群像劇
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59/110

葵視点の四天王〜パルフェ〜

「魔王軍に乗り込む前に来た女の人・・・パルフェだっけ?あの人はどんな人だったの?」

「パルフェか・・・あいつは天才型だったな。武術は俺たちの中では1番苦手だったが、あの千里眼をあの回数、あの長さで使えるのはパルフェの魔力を操る技術の賜物たまものだ」

「へぇ、そうなんだね。どこか・・・器用そうだもんね」

ディンブラは明らかに言葉を選んでいた。

それは十分、葵にも伝わっていた。

「この際ハッキリ言うけど、あいつは俺のストーカーだった」

「え!?」と言う大きな声と共に、ディンブラは体を飛び跳ねる勢いで葵に向けた。

「どういうこと?つけられてたの?」

「何と言うか・・・千里眼で寝姿見られたり、居場所の特定をされたり、それで秘匿ひとくにしていた場所に来られたり・・・まあ、その他諸々だ」

ゆっくりと前に向いて背をもたれかける。

「・・・ふーん。君も大変だね。それってさ、今も見られてるの?この前から誰かにつけ狙われてるけど」

「いや、あれは違うな。どうも素人じみている。それに、千里眼は魔王の死と共に魔道具も消滅したから使えないし。俺も今は同じ理由でサーベルが無いんだよ」

「へぇー」と返すディンブラはシャロンから言われた言葉を思い出していた。


魔王討伐後、葵はサーベルを置いていくという奇行に走ったとのこと。

「なんかね、なんかね!サーベルが魔王が死んだら溶けて無くなるなんて言うの!!絶対有り得ないよ!葵さん裏切った罪悪感で頭おかしくなったんだよ!!」

なんて息巻いて言っていた。


『まぁ、有り得ないっちゃ有り得ないし、お世話になった場所や人を裏切る苦痛もわかるけど、葵くんがこう言うんだから信じるしかないよな・・・』

少し頭を押さえて悩んだが、笑顔を作って葵に向けた。

「そうなんだね!サーベルも、千里眼も溶けて無くなったんだよね!」

「は?誰も溶けたとか言ってないだろ?」

『しまった』と思い目線を逸らす。

葵がまたブレーキをかけて停めた。

「何で停めるんだよ?進みなよ!」

手で促すが、葵が疑いの目を向ける。

「何かおかしいな・・・。溶けた?どうせシャロンあたりに変なこと言われたんだろ?俺が魔王討伐後にサーベルを置いて行ったことをあいつだけが気にしていた!魔王が死んだらサーベルも消えると俺は説明したんだ。あの時のシャロンは実に不可解な顔をしていた!!」

「いや、僕に責められても・・・。たしかに葵くんのその話は聞いたけどさ、今、葵くんを信じただろ?」

それにもまた片眉を下げて続ける。

「少し、疑っただろ?半信半疑とでも言おうか」

ディンブラは視線を逸らせた。

「そう言えばさ、パルフェはどうして葵くんをそこまで気に入ったの?」

「それは・・・」と言葉に詰まっていたが、頭をいてから続けた。

「まぁ、ディンブラには言っておくか」

そんな前置きをされて傾げる。

「元は嫌われていたんだよ」

「え?そうなの?」


葵の言う通り、元々は嫌われていた。

そもそも葵が魔王軍内で嫌われる時というのは、“家族がいる恵まれたボンボン”というのが大きな理由である。

むしろそれ以外で嫌われたことがない。

きしめんからもそうめんからも同様の理由で煙たがられていた。

そして、パルフェも同じように煙たがり、避けていたり、睨みつけたりしていた。

魔王軍入りたての訓練生時代、知能が元から高かったのだが、武術には触れたこともなかったので苦手だった。

元来、家族は女の子が欲しいとのことだったので、せめて顔の可愛いことだし、女性的な趣味でも持って擬似女の子になればとの思いから女の子が好むようなことばかり押し付けられていた。

なので武術なんかは無縁だった。

そればかりは0スタートなので、日々、本を読み、教官に学びに行き、誰よりも練習をした。

そんなある日、厳しい訓練の合間に武術の本を読んでいた。

日々の疲れもあるが、必死に追いつくために学びをやめない。

そして、大事だと思ったところはペンで印を入れていた。

中庭に置かれている木製の机と椅子に座って本を読んでいると、パルフェが他の同期と共におしゃべりしながらやって来た。

目の前にいつも嫌っている葵がいることさえ気づかず、はす向かいに座って、机に手を置いて話しを続けていた。

葵も相手に気づかず、ペンを取ろうとしたのだが、集中しすぎて本を見ながら手を伸ばした。

ペンに触れたと思ったが、どうも感触が違う。

何より平たいし、温かい。

本から顔を上げると、呆然ぼうぜんとこちらを見るパルフェがいた。

視線を下げると、葵が握っていたのはなんと、パルフェの手だった。

慌てて手を引っ込め、謝る。

「ご、ごめん!」

それからすぐにペンを掴んで本に印を書いていると、休憩の終了を告げるチャイムが鳴った。

葵は頬をあからめはしなかった。

そんなことより、普段からのパルフェは冷たくきつい態度の印象が強かったので、怒らせたかもしれないという恐怖の方が勝っていたので、さっさと去りたかったのだ。

慌てて片付けて去った後、パルフェはその場にそのまま固まっていた。

頬を赤め、口を半開きにし、葵が去った後も葵のいたところを見続ける。

「パルフェ?お〜い、パルフェったらー!!」

一緒にいた訓練生がパルフェを呼びながら、目の前で手を振る。

そして、しばらくしてからつぶやくように言葉を出した。

「葵って・・・顔、綺麗なんだね・・・」

「え?そんなのみんなずっと言ってるよ?でもパルフェが嫌いって言ってたんでしょ?」

友達の言葉は全く耳に届いていなかった。

うっとりとしながらため息を吐いていた。


「そこからなんだよ。ストーカーが始まったのは。ま、ストーカーはパルフェだけじゃないけどな」

ストーカーの中には男もいるがそれは黙っておいた。

「へぇ・・・そうなんだ」

「引いてるだろ」

慌てて否定する。

「いや!・・・そんなことないよ?でもさ、隠密部隊隊長の葵くんに気づかれずに、場所の特定から突撃まで完璧にこなすなんてすごいことだよね?」

「う・・・それは・・・そうだな。たしかにあいつのお陰で探知に隠密に回避にと、色々スキルアップしたよ・・・」

葵は引きつった笑いをしていた。

ディンブラもこれ以上掘り下げると葵のトラウマとか出て来そうな予感がしたのでやめることにした。

「えっと・・・じゃあさ、きしめんは?どんな人だったの?」

「きしめんは1番思い出深いよ。何より、入隊してからの寮ではずっと同じ部屋だったからな」

そう語り始めた葵は遠くを見て、どこか寂しそうでもあった。

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