葵視点の四天王〜そうめん〜
アシナガバチの巣を駆除した翌日、2人は再びメリリーシャに車で向かっていた。
その道中、ディンブラが聞いてみることにした。
「あのさ・・・魔王軍ってどんな感じだったの?」
「え?どんなって?・・・訓練は厳しくて、ご飯は大盛りだった」
浅い感想に呆れる。
「何その思い出?部活生の感想じゃないんだから」
「どんなことが聞きたいんだよ?てか何でそんなこと聞くんだ?」
不審な目を向けると、ディンブラは前を向いて一つ間を開けてから答えた。
「なんかさ、この前葵くんの家族に会った時に偉そうに言ったけど、たしかに付き合い浅いし何も知らないなって思って・・・」
「あー・・・なるほどな。たしかにお互いのこと何も知らないな」
ディンブラは口元に指を当てて少し考え、また葵に質問する。
「君たち四天王のこと聞かせてよ!どんな人たちだったの?」
「四天王な。あの3人はやっぱりどこか特別だな。思い入れが浅い奴なんて1人もいないが、特に関わりが薄かったのはそうめんだ」
葵は思い出に耽るように言った。
「関わりが薄かったの?」と傾げて覗き込むように見る。
「あぁ、なんか知らんが極端に嫌われてたんだ」
「そうめんって女性だよね?珍しいね、葵くんにしては」
「別に万人に受けるわけないだろ?誰だって嫌われることくらいあるよ!」
少し照れたように赤くなりながら言い放つ。
「嫌われてたってどうしてわかったの?」
「・・・とにかく態度が冷たかったな。そうめんは本当に努力していた姿ばかり見たよ。だから声をかけて褒めたんだ。すごいなって、尊敬するよって。そしたら、バカにすんなって言われたんだ」
「そっか・・・。相容れなかったんだね」
それからため息を一つ吐いてからまた続けた。
「だけど、エディブルの花園に行くきっかけをくれたのはそうめんだ。あいつがパルフェと仲違いをして、毒針を投げた時に俺が庇って刺さった。で、解毒をしにあそこにパーティと一緒に向かったんだよ」
「そうだったんだね。毒に詳しい人なの?」
「まぁ、そうだな。そうめんは誰よりも努力していたよ。魔法の使い方がとにかく苦手なのに、誰よりも繊細な技術を要する毒使いになった。武術も筋力不足で苦手だったけど、きしめんに率先して教わりに行ってた。そしたらリリウム一族のチョコと張り合えるどころか、上回る戦闘能力を発揮していた。敵に回したくはない相手だったな」
ディンブラは背もたれに背をつけて前を見た。
「そっか、認めてるんだね、その人のこと」
「全員のことを認めてるよ。みんなすごい奴らばっかで、ついていくのがやっとだった」
「でも、葵くんも強かったんでしょ?」
葵を見ると、変わらない調子でハンドルを握っている。
「スピードの早さと、雷魔法という特性が自分に合っていただけだよ。みんなの方がすごいさ」
葵は、魔王軍全体が家族がいない孤児だという境遇を気にしていた。
自分より過酷な環境の者が自分と同等の実力がある。
つまりは、自分と同じ環境であれば余裕で抜かされているということだと思っている。
だから葵は謙遜などではなく、本心で周りの人々の方が格上なのだと信じていた。
「そんなに自分を卑下しなくていいよ」
「・・・え?」
思わずブレーキを踏み、驚いた顔でディンブラを見た。
すると、相手もこちらを真剣に見ていた。
「自分に厳しい君の性格のことだから、きっと、自分より過酷な状況で生きてきた者が自分と同等の実力を持っているっていうのは、自分と同じ生まれだったら余裕で抜かれているなんて思ったんだろ?それは間違いだ」
「そんなわけ、あるかよ。みんなは本当にすごいんだ。俺なんか足元にも及ばない・・・」
俯きながら自信無さそうに答える。
「周りの人もすごいと思うよ?だけど、君自身が努力したのもあるんだろ?それとも、魔王軍というのは何かコネとかお金とか、家柄で上れる組織なの?」
「いや・・・それは無い」
「じゃあ、幹部になったのは君の努力じゃないか!」
それから優しく微笑みかけた。
「周りも認めてる。あとは自分だけだよ、認めてないの」
何か気づかされたような表情になり、再び葵はアクセルを踏んで進んだ。




