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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
越境
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思い出のある家

パーティと幸福の王子が固まって座るのを、テーブルを挟んで反対側に警戒したロザの一族5人が固まって座る。

まるでこれから何かの試合なり、ゲームが始まりそうな雰囲気だ。

「で?何の用?この家は渡さないけどな!!」

メアが切り込む。

そこに幸福の王子が話しはじめた。

「私は犠牲の魔女、幸福の王子だ。よろしく」

「知ってるよ。よろしくしたくないね!!」

普段から凛々しい感じのスプライが歯に衣着せぬ言動で強く断った。

困ったように笑い、続ける。

「私も君たちのことをわかるよ。ロザの一族は牢獄の魔女、荊姫いばらひめのキメラだね、その魔力」

相変わらずの穏やかな口調に一切屈しないピンピが言い返す。

「ああ、そうだよ!ここは荊姫さまとの思い出の家なんだ!例え相手が魔女でも戦ってでも死守してやるからな!!」

「戦う気はないよ。・・・それにしてもここ、いい家だね」

辺りを見渡す幸福の王子に猫のように5人が威嚇する。

「渡さないからな!!」とガートルード。

幸福の王子は「勘違いさせてしまったね」と苦笑いする。

「僕たちだってやっとここで落ち着いて生活しているんだ!!街の人にだって薔薇の加工や生花でやりとりをして、繋がりだってある!!」

イヴが必死に言うので、アスタが割って入った。

「違うんだよ!何もここを乗っ取りに来たんじゃなくて、空き家を探しているんだよ!」

「そうそう、幸福の王子が住めそうな空き家!」

チョコも続いて言うと、呆気あっけに取られた顔を見せた。

「え?ここを乗っ取りに来たんじゃないの?」

「なら、はじめから言ってよ!!」

「だから言ってんだろ!!」

メアとイヴに怒ってアスタが言い返す。

「ねぇ、どこか知らない?静かに落ち着いて暮らしたいんだって!」

「うーん・・・誰か知ってる?」とメアが聞くが、誰も知らなさそうだった。

「悪いね。僕たちじゃわからないや!」

アスタがメアにすがり付く。

「そんなぁ!ここが最後のとりでなんだって!!何とか思い出してくれよ!それかここで共同生活させてやってくれよ!!」

「何でだよ!?大使館で共同生活すりゃいいだろ!?」

「だって、キメラと魔女、同じような境遇じゃない!他は人間とかなの!!」

キャメリアも言うががんとして頷くことはなかった。

「君の妖精にでも聞けよ!僕たちはわからないってば!!」

そう言うなり、ついに追い出された。

「あーあ、仕方ないね」

「また出直す?」

キャメリアとシャロンが言っていると、アスタがメアの言葉に引っかかっていた。

「キャメリアの妖精?・・・魔女?」

腰に提げたラエビガータの魚の張子を見た。

それを掴み大きな声を出す。

「これだ!!」


斜陽に染まる頃、パーティと幸福の王子が来たのは、かつてカラの魔女、チキン・リトルが住んでいた家だった。

高い木等は無く、開けた土地に一軒家が一つ建っている。

白塗りの壁に、木のドアと赤い屋根がある。

決して大きいとは言えないが、1人でゆっくりするには丁度いい。

小高い丘になった場所の地面には芝生のような高さの雑草が一面に生えていて、時折長くなった雑草が飛び出している。

そして、人が歩く道は生えていない。

リトルが魔女狩りをされてから時間が経っているというのに、不思議とこの人の道には草が生えていなかった。

まるでまだ誰かここを通っているかのようだ。

リトルの家を見た瞬間に、幸福の王子の目は輝き出した。

「・・・ここは?」

「カラの魔女、チキン・リトルの住んでた家だよ!」

アスタの紹介を聞き、家に近寄る。

ドアには施錠はされておらず、鍵が開いていた。

中に入ると、リトルが住んでいた頃のままで、綺麗に保たれていた。

客間、台所、シャワールーム、寝室、それに小さな書斎の本棚には本が入れられていた。

卓上ランプもあるので、きっと夜もここで本を読んでいたのだろう。

幸福の王子が微笑み、書斎の机を一撫でする。

それから振り返った。

「ここにするよ!とても気に入った!!」

パーティもみんな喜びから笑顔になる。

それからキャメリアのラエビガータが姿を現した。

「おぉ、カラの魔女か。これからは私がここを管理しよう。譲っていただきありがとう」

すると、ラエビガータが指を立てて水で文字を作った。

“こちらこそ、我が家をよろしく”

そしてまた文字を変える。

“パーティは引き続き僕に任せて”

字を読み、ゆっくりと頷いた。

「ねぇ、どうしてここはいいの?リトルが住んでたから魔力が云々(うんぬん)かんぬんってないの?」

シャロンが純粋な気持ちで聞いてくる。

「特には無いよ。私が避けていたのは信仰心だ。ジャトロファとソルガムの村にはカラの魔女の信仰心がかすかに見えたんだ。ただ、今は違うものを信仰しているのだろうが、完全には消えていない」

「そうだったんだ・・・」

嬉しそうでいて、優しい眼差しを家に向ける。

「ここにはチキン・リトルとみんなの良い思い出が残っている。そこに私の家探しの思い出も増えた。とても素敵な家になったよ!ありがとう!」

「いえいえ、こちらこそ!」

「ウェストポートら辺から一気に運んでもらっちゃったしね!これくらいなんて事ないわ!」

「リトルの家も誰かが住んでくれたら安心だね!」

「ここなら静かに暮らせそうだし、見つかってよかった!!」

4人が笑顔で答えてくれたので、幸福の王子も喜んだ。

こうして、無事に家探しの任務は終了した。

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