バレた!
次に向かったのは郊外のラテルネ墓地。
「これに一息かけて」とシャロンが持ち上げた大きなランタンのように光る鬼灯に一息吹きかけた。
それから中に入ると、墓守のヘルハウンドとフィサリスのコンビがすぐに迎えてくれた。
ヘルハウンドは犬の姿ではなく、人の姿で現れた。
「あれ、今日はみんなお揃いなんだ!」
「久しぶりだな!」
アスタは展示会で占い師に言われた内容で「ヘルハウンドが怒ってるかも?」と受け取れる結果を聞いた後なので少し様子を伺う。
「どうした、アスタ?」
「いや、何も!!」
慌てて手を振り、本題に入る。
「この方が俺たちを旅路で助けてくれたんだ!それで、恩返しに安心して住めそうな家を探してるんだけど、どっか知ってる?」
フィサリスもヘルハウンドも首を横に振った。
「そっか、ありがとう!また来るよ!」
「待て、アスタ!」
ヘルハウンドに声をかけられて立ち止まる。
「その人、人間じゃないな?」
眉を近寄せて、疑うように幸福の王子を見る。
「おやおや、君も元はそんな姿じゃないのだろう?」
すると、ヘルハウンドは大きな犬の姿に変身し、威嚇した。
パーティが「まずい!」と言ったような表情をする。
「姿を現せ!!お前は何の目的でこのパーティに近付いている?私の友人たちに危害を加えると許さんぞ!!」
「わ!ヘルハウンド!違うんだ!!」
チョコが必死に止めようとしたが、幸福の王子が肩を叩いて退げさせた。
「私は犠牲の魔女、幸福の王子だ。そちらがその姿を見せてくれたのなら、こちらも応えよう」
そう言うなり、白い煙に包まれて、あっという間に白い大蛇に変身した。
「ま、魔女!?なんで魔女とつるんでんのよ!?」
フィサリスに聞かれるが、視線をそらせて気まずそうにする。
「話せば長くなる・・・」
初めてその姿を見たチョコは圧倒されていた。
「デカっ!!」
「チョコは知らないんだ・・・」
フィサリスに聞かれて頷く。
「うん。だってみんながウェストポートからここに来るまでに出会ったみたいだから」
「魔女だからと言って無闇に危害は加えないし、魔女も元は人間。友情のある者に対しては情があるというものだよ。どうかわかってもらえないだろうか?」
ヘルハウンドは少し訝しんだ目を向けたが、その腰の低い態度と殺気を感じない様子に一旦引くことにした。
その証拠として人の姿に戻ってから話をする。
「目的を聞かせてもらおうか。定住してどうする気だ?」
幸福の王子も人の姿に戻って話に応じる。
「ありがとう。・・・どうもしないさ。ただ、旅に疲れただけだ。のんびりと日々を過ごすのに、どこか人気の少ない場所か、全く私を知らない人々しかいない土地に行きたいと思っただけだよ」
「フィサリス、ヘルハウンド!幸福の王子は大丈夫だよ!俺たちのことを一晩守ってくれたんだ!」
「そう!メリリーシャにだって背中に乗せて運んでくれたの!」
「シュババババーーー!!って!」
アスタ、キャメリア、シャロンが必死に幸福の王子の援護に回る。
「うーん・・・・まあ、みんなが言うなら信じるけど・・・」
少し納得のいかない様子でフィサリスは言った。
「残念だけど、本当にここらで心当たりはないわ。悪いけど他を当たって」
「わかった。時間取らせて悪かったな。ありがとう!」
2人は納得いかないような、疑った眼差しで見送ってくれた。
「ごめんね、幸福の王子・・・」
シャロンが手を繋いで見上げた。
「なに、慣れたものだよ。この4人がここまで受け入れてくれてるのが不思議なくらいさ!」
優しくシャロンの手を握り返した。
「でも、そろそろ知人が狭まってきたな・・・」
「次はどこ行くの?」
チョコに聞かれてアスタは勢いよく答える。
「んなもん決まってんだろ!残る知人って言ったら、あとはあそこだけだ!!」
そしてたどり着いたのは、ロザの一族が住む館。
郊外にあり、周りは静かな森なのだが、街からそれほど離れておらず、手入れされた薔薇の咲く庭はとても美しい。
外観は古い煉瓦造りの家だが、それも味がある。
元々は築年数3桁はいってそうな洋館だったが、訳あって怒り狂った四天王2人に破壊された。
それから優秀な大工が作り直してるので、風格はそのまま、新築として建て直したので物件としては最高なのではないだろうか。
呼び鈴を鳴らすと、リーダーのメアが出てくれた。
「あ!みんな!久しぶり!!遊びに来てくれたの?」
喜んでくれたのも束の間、背後に控える魔女の姿を見つける。
「あれ?メンバー、1人増えたの?」
「はじめまして、幸福の王子です」
握手をすると、メアは即座に何かを感じ取った。
「え?・・・この魔力・・・それに幸福の王子だって?どこかで・・・」
眉を顰めて呟くように小声で言いながら考えると、すぐにアスタが割って入った。
「あれだよ、童話で読んだんだろ?俺もメアみたいになったもん!!あれ?幸福の王子って?って!!」
必死である。
「いや、わかったぞ!!魔女だろ!!たしか・・・犠牲の魔女、幸福の王子だ!!」
速攻でバレた。
「ああ、そうだよ!!だから何だよ!!」
開き直ると「そうか!じゃあな!!」と言ってすぐにドアを閉めようとするので、アスタも足を突っ込んでドアノブを引っ張った。
「離せよ!どうして君たちは毎回変な客人連れてくるんだよ!?何の嫌がらせだよ!!」
「話しくらい聞け!!この人の住めそうな家探してるだけなんだよ!!」
「乗っ取る気満々じゃないか!ここは渡さないからな!!」
「違うって!!」
キャメリアがため息を吐いてステファニアを召喚し、ツタを伸ばしてドアの隙間からメアの脇をこしょばした。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
笑ったと同時に手を離し、即座に5人が中に入って来た。
「ありがとう!お邪魔します!!」
「あ!入るな!!こしょばしは卑怯だろ!!」
「まぁまぁ、そう言わずに!」と幸福の王子が宥める。
「あんたが元凶なんだよ!!」
つっこまずにはいられなかった。




