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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
越境
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ウェストポートにて

葵とディンブラはウェストポートでホテルを取り、滞在することにした。

「ディンブラ、さっきはその・・・ありがとう」

「別に、大したことないよ。君だっていつまでも家族に本当の自分を隠して生きていくと息が詰まるだろ?僕が代弁しただけだ」

それからディンブラが地図を広げた。

「で、これからどうする?何か気になる所とかある?」

「そうだな・・・このウェストポートを見てみてもいいか?」

「いいよ」と言って立ち上がった。


ウェストポートを歩いて回る。

最初に来たのは繁華街。

まだ午前中なのでどの店も閉まっていたが、外装的に夜に開く飲食店街なのだろう。

今は静かな店の前には前日に出たゴミが各店の前に置かれていた。

「以前この辺で科学の世界のマフィア、rossoの2人とパーティがトラブルを起こしていた」

「なんか前に言っていたね。妖精とベタを間違えたとか・・・」

「あぁ、そうだ。ただ、本当にあの幹部のランブルの依頼で部下がただただ間違えただけだったのは意外だったけどな」

上述の通り、不幸なトラブル以外の何者でもない。

そのお陰でrossoの下っ端の1人は危うく葵に処分されかけたのだ。

そして次に向かったのは、イナリがパーティと戦っていた通路。

繁華街よりは少し離れ、住宅街の中に個人商店が所々にある。

ここは日中でも人通りが多少はあった。

「この辺りで俺の部下とパーティが戦っていたんだ。そこに割って入って部下を助けていたら、ちょうどあの辺りから視線を感じて・・・」

葵が歩いていくのを、後から追いかける。

曲がり角を曲がろうとしたら、女性が歩いて通り過ぎたので、葵が一旦立ち止まった。

通り過ぎてから角を覗く。

「ここで誰かに見られていた。俺の勘だが、白いプルチネッラなんじゃないかと思っている」

ディンブラが見る限り、一般的な路地であった。

「そっか、ここにもいたんだね」

それから再びウェストポート付近の街に向かう。

大きめな建物の前に来た。

「魔道具展示館?」

「ウェストポートは西の大陸の出入り口だからな。人だけじゃなく、物の出入りも盛んな歴史ある港町だ。輸入などで入って来た珍しい物や、昔からある魔道具を街が管理と展示している公共施設だよ」

中に入ると、実に様々な魔道具があった。

「わぁ!こんなにもたくさん!」

初めて見る物が多かったので、ディンブラが目を輝かせる。

展示品を見て回った。

「ここではないが、ここの倉庫でパルフェの部下とパーティが戦闘を行った」

「その戦闘はどうなったの?」

ディンブラの質問に立ち止まって考えながら答える。

「あー・・・パーティの勝ちかな?」

「何?その曖昧な答えは?」

それには目線を逸らせる。

「だって俺の部下じゃないから・・・」と誤魔化しはしたものの、実はこの決着は葵が決め手となった。

名前を呼ばれて返事をしたら封じ込められるという魔道具の箱をシャロンとキャメリアから受け取り、その後追いかけて来たパルフェの部下の名前を呼んだのは葵なのだ。

そして、後からやって来たアスタから「そいつは葵のストーカーで、この箱に一生封じ込めて肌身離さず持っているつもりだったんだ!」とのカミングアウトを聞いた。

それを元の位置に戻しておくとは聞いた。

葵なりに罪悪感があったので見に来たものの、見当たらない。

『ま、いっか』と思ってしまった。

「今回展示されてないだけかもしれないしな」

「何か言った?」

「いや、なんでも!行こうか!」

不思議そうにするディンブラに先を促した。


その夜、ベッドに寝そべりながら話していた。

「今日は東の大陸からの視線とか殺気はあった?」

「視線は感じたが、殺気は無かったな」

葵は目を閉じたまま答える。

「何なんだろうね?誰でなんの目的なんだろう?葵くんだけじゃなくて、周りの人も狙ってる・・・」

「全く見当もつかない。明日、ここを出ようか。メリリーシャに向かう前にもう一つ見に行きたい所があるんだ」

「わかった。この近く?」

葵に顔を向けるが、相変わらず天井を向いたまま目を閉じている。

「ああ、そう遠くない。魔女の住んでいた家だよ」

「魔女・・・また君が倒した相手?」

ディンブラの声色が変わる。

正直トラウマなのだろう。

「違う。俺じゃなくて・・・たしかそうめん」

「・・・そっか」

葵が体を起こした。

「なんで安心したように言うんだよ?俺が毎回毎回残虐ファイトしてると思ってんのか?」

「あんなもん見せられたらこっちだって警戒するだろ!!」

ディンブラも体を起こして言い返す。

「あれは!!・・・シンデレラとキャンドルが俺のことをその周囲に悪口を言い回ってたから・・・。なんか小心者だの卑怯者だの!仕方ないだろ!部下も人質に取られていら立ってたんだから!」

「楽しそうにサーベルの血拭いてたけどね?顔の返り血より真っ先に!!」

「違っ!!刀の手入れは大変なんだぞ!?刃毀こぼれとか、血でびたり、脂付いたら切れ味落ちたり!!」

「あっそ!だけどあんなにも残酷にしなくてもいいと思うけどね!一発で倒すとかさ!!」

葵はそのまま拗ねて布団にくるまって寝た。

ディンブラも同じく背を向けて寝た。


翌日、2人はメリリーシャに向かう道すがら、薔薇の魔女白雪姫と、穴の魔女ハンターの住んでいた家に訪れた。

やはり中は魔王軍によって掃除されており、もぬけの殻のなっている。

「ほんと、生活感無いくらい掃除していくね・・・」

ディンブラはある意味感心していた。

「まぁ・・・魔王軍は掃除に厳しかったから。こういう後処理の抜かりなさを普段から鍛えられてたんだよ」

見渡していたディンブラが葵に聞く。

「葵くんはここに入ったことあるの?」

「いや、初めてだ。討伐したそうめんとその部下と・・・たしかパーティがここの魔女たちと友達になっていたから入ったんだろうな、きっと」

それからしばらく核の破片でも無いかと探していたが、全く無かった。

車に戻ってメリリーシャを目指す。

「何も無かったね・・・」

「そう言えば、シャロンが白雪姫の核を持っていたな・・・」

ディンブラも思い出して言う。

「そうだ!僕が新種の蛾と間違えて捕まえて持っていたのをあげたんだ!」

「ハンターの核も魔王軍が所有していたが、ここの魔女は欠片も残さなかったんだな」

エンジンをかけて出発する。

表には出さないようにしたが、葵はちょっと不機嫌になりながら運転していた。

『だったらさ、シンデレラもキャンドルも俺たちにわざわざ核を見つけさせて、あんな残虐シーンをディンブラに見せなくてもよくないか!?』

「葵くん、なんか怒ってる?」

「別に!!」

表に出さないように頑張ってはみたが、所詮は末っ子。

丸出しだったようだ。

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