シンデレラの記憶②
元使用人たちを焼き尽くし、次に向かったのは自分との縁談を破談にした貴族の家。
2階の窓から様子を見ていると、他の女との縁談が進み、家に招いて食事をしている最中だった。
「いやぁ、あそこのお家は良家ではあったが、あのご令嬢が使用人をいじめていたとか・・・」
「私の前ではどうやら取り繕っていたようです・・・とても残念です。しかし・・・」
そう言って、おしとやかで品のある女性と見つめ合う。
「そこの話が破談となったお陰であなたのような素敵な人と出会えた。私は果報者です!」
女性も嬉しそうに頬を染める。
その様はまるで愛し合う2人そのものだ。
「君のために仕立てたこの国一番のドレス、あとで着てみてよ!」
「ありがとうございます!私こそ果報者ですわ!」
そこに大窓を開けて中に入って行く。
「あーらぁ!!悪かったわね、そこの女と真逆で!!」
「き、君は!!」
「どうやって入って来た!兵を呼べ!!」
父親が息子とその婚約者を守ろうと兵隊を呼ぶが、全く動じない。
「君の家はご両親に不幸があり崩壊したと聞いたが?それにその格好・・・。この距離をどうやって来たんだ?」
「このボロ布のこと?あぁ、気にしないで。もうすぐこの国一番のドレスを着てやるから!!」
不適に笑うと、貴族の息子が怒りに表情を歪めた。
怒りのままに掴みかかろうとする貴族の息子に手を添えて息を吹きかけるとたちまち全身を炎が包み、もがき苦しみながら煤塵と化した。
婚約者の女は悲鳴を上げ、その場で腰を抜かす。
息子を焼き殺された父は駆けつけた兵隊達に命令して取り押さえようとしたが、それらさえも一息で燃やし尽くした。
後ずさる父親に近寄り、目の前で立ち止まる。
左手を自分の腰に当て、右手の人差し指を相手の額に置いた。
「息子が変に賢くて損したわね。私のこと探ったりせずそのまま縁談を進めていればお互いに今頃幸せだったのにね」
「お、お前のような女を嫁にしたって息子はすぐに離縁していたさ!!この、性悪女!!」
額から鼻筋にかけて指を滑らせて行くと、その後をマグマが追うように赤い道ができる。
完全に指を離すと、呻きながら口やら耳やら目やら様々な穴から火を吹く。
頭蓋骨が燻る炭火のように熱を持ち、脳がじわじわと焼かれてゆく。
内に籠った熱が眼圧を上げ、目玉が飛び出て、追従するように脳みそが飛び出した。
悲鳴を上げることはなく、動物の死骸を動かした時に体内の空気が狭い口や鼻を通る時に鳴るような甲高い「キュゥゥゥ」といった音を出して倒れ、体が燃え灰になった。
それからたった1人となった腰を抜かした女性に振り向く。
「さ、案内してくれる?」
「・・・え?」
怯える彼女を魔法で立たせて歩かせる。
そして将来彼女が過ごすはずであった部屋に来た。
そこには立派な赤いエンパイアドレスが陣取っている。
「まぁ!素敵じゃない!!ねぇ、これ着させてくれる?」
彼女は普段、使用人たちに着させてもらう側なのだが、目の前の恐ろしい化け物の言うことを聞き、使用人のようにドレスを着る手伝いをする。
「あぁん、キツいわよ!もっと緩めて!!」
「は、はい!!」
震える手で腰付近にある編み上げの紐を解いて緩める。
完成した姿を大きな姿見で確認する。
「あら、いいわね!やっぱり私には一番というものが似合うわ!いいわよね?これ、貰っても?」
「は・・・はい・・・」
俯き震える惨めな姿に満足したように笑顔を向ける。
この短時間で恐怖が彼女をかなり老けさせたようにも見える。
「ありがとう。ご苦労様」
そう言うと投げキッスをするように彼女を一瞬で焼いた。
「お手伝いしてくれたから苦しまずに死なせてあげる!」
高慢な高笑いと共に元令嬢は館を焼き尽くした。




