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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
到着と
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葵をまた追いかけていた。

だが、やはり今日は調子が悪い。

頭の中で葵が王子様のように助けてくれたシーンを何度も何度も脳内で繰り返し再生される。

葵を見ていたら、そればかりで意識が侵食されてしまうので、角で見るのをやめて壁にもたれかかって、どこを見るでもなく立っていた。

そしたら、すぐそこの角から葵がやって来た。

「あれ?さっきの・・・」

「さ、さっきはありがとうございました!」

まさかの再会に頬が赤くなる。

頭を下げると「いえいえ、気になさらないでください。気をつけて」と言い残し、横を通り過ぎて去ろうとした。

「あ・・・」

もっと葵としゃべりたい、仲良くなりたい、このチャンスを逃せば次はない。

何のために地元を黙って出て来て、隣の大陸にまで来たんだ?と自問自答する。

『私は・・・この瞬間のために来た!!』

「あ、あの!!待ってください!!」

勇気を出して走り寄って行くと、つまずいてしまった。

しかし、地面には打ち付けられていない。

「大丈夫ですか?」

なんと、素早く葵が戻ってきて受け止めてくれていた。

本当に王子様のようだ、夢みたいな瞬間だ。

胸がときめく。

この感覚は本物だった、本物の恋なんだと確信する。

「怪我は?」と聞かれて言葉を発する余裕も無いので首を横に振って答える。

「よかった!」

優しく微笑みかけて、ゆっくりと丁寧に立ち上がらせてくれた。

しばらく、2人で向かい合った。

ドキドキとしたのも束の間、「失礼」と言って、しゃがんでマントの下辺りをめくり、スカートの刺繍ししゅうにある特徴的な模様を見ていた。

「この刺繍、たしかアラビアータ郊外の集落に住む人々が衣服に施していた。今、転けかけた時に見えたんだよ」

途端にときめきが動揺に変わる。

冷や汗がこめかみを伝うのを感じる。

葵は自分が狙撃手だとわかっていて今の会話をしていたのだ。

それについにバレてしまった。

「全部思い出したよ」とさらに追い詰めてくる。

「お前は本当にずぶの素人だな。狙撃の腕はあるようだが、人に向かって射ったことがない。怖かっただろ?初めて人に当てた時は・・・」

その時、船の中で葵の腕に当てたことをトラウマ的に、鮮明に思い出された。

それに対してに過呼吸気味になり、冷や汗がさらに湧いてきた。

そんな状態の相手にも容赦無く葵がマントをいで、背負っていた小さめの矢と矢筒までもを暴いてしまった。

「やっぱりな。お前、アラビアータ周辺からずっと俺たち・・・いや、俺をつけていただろ?目的は何だ?何故、俺をつけ狙う?全部吐いてもらおうか」

葵の問い詰めに、体が硬直してしまった。

「目的を吐け!!」と怒鳴られた時に、体を翻して走って逃げた。

葵がここに来る前から確認していた逃走経路で相手をまく。

相手もしつこく、足が速いが、小回りでは勝っていた。

しばらくの闘争劇の後、葵がついて来ていないことを確認し、安堵する。

しかし、あまりにもおかしい。

あのウェストポートでの追い詰め方をする葵がここまですぐに標的を見失うだろうか?

「おかしい・・・何かある!!」

そして、色々と周辺に警戒をしながら突き進むと葵の声が聞こえた。

それはいいが、一緒にいるのが女ではないか!!

格好的にこの街のシスターであろう。

だからってあの方に近づき会話を交わすことが許せない。

思わず怒りのままに矢を放つと、いい軌道に入って2人の間を通り抜けていった。

「ふん!小刻みに震えておびえてる。いい気味!」

なんて余裕をかましながら見ていたら、様子がおかしくなった。

恐怖に震えていると思ったら、矢を片手でへし折った。

嫌な予感がする。

すぐさま逃げ出した。

「お待ちください、葵さま!!必ず、私が敵を撃退いたします!!」と聞こえた後に足音が聞こえてくる。

「相手は小回りも利く!!路地でまけるか!?」

しかし、こちらも狩猟のプロ。

相手の気配を察知しては逃げ隠れすることも、気配をこちらが消すこともできる。

なんとか翻弄ほんろうしていたが、ついに形勢が揺らいだ。


息を潜めて建物の隙間にある、大人1人が通れるほどの狭く薄暗い場所でゴミ箱の横にしゃがんで身を潜める。

シスターの足音が”コツ・・・コツ・・・コツ・・・”とゆっくり通り過ぎてゆく。

無心で木と同化するように潜み続けていたら、足音はもう聞こえなくなっていた。

安堵のため息を吐き、立ち上がった途端に、遠くに消えたはずのシスターの足音が早足でこちらにまっすぐ向かう音がする。

「え!?なんで!?」

慌ててさらに奥へと入り、さらに狭い上に暗い隙間へとシスターに背を向ける形で身を押し込めた。

息を殺して隙間から様子を伺う。

「こんにちは〜」と言いながらシスターが路地をのぞいていた。

これはあくまで女狩人視点ではあるが、明るい路地からの光で逆光になり、シスターの顔は全く見えないはずなのだが、目は鋭く赤く光っているように感じた。

『猛獣の目だ・・・とことん追いかけられて、見つかったらお腹割かれて食べられるやつだ・・・』

そんな仲間の猟師がいたことは父からも再三聞いたし、自分の仲間も同じ目にあったことが鮮明に思い出される。

「あらあら・・・どこにいるのかしら?」

さっき座って潜んでいたゴミ箱の裏を覗き込んでいる。

そして、地面に手を触れて熱を感じていた。

「まだ・・・いるわね、近くに」

そう言って振り向いた顔は、口元が大きく左右に釣り上がり、笑っているのだが、こちらには恐怖を植えつけてくるほどの殺気を感じる。

多分、トラウマが増えた。

葵の腕を射ってしまった時以上のトラウマだと思う。

「ひっ!!」と小さく口から漏らしてしまった。

慌てて口をつむぐが、相手の足音がじわじわとこちらに向かっている。

”コツ・・・コツ・・・”

また一歩、また一歩とやって来る。

『自分は木だ・・・自分は木だ・・・』と言い聞かせて目をつぶった。

額から汗がにじみ出る。

すると、幸いにもシスターは自分の潜む建物の隙間を通り過ぎて行ってくれた。

安堵から小さくため息が漏れる。

さらに汗は額から頬を通って、顎から下へと落ちた。

「木は汗をかかないのよ」

目だけで横を見るとシスターが間近でこちらを見ている。

「それと、安堵のため息も」

一度も瞬きをせずに淡々と言葉を発する。

真横にいるシスターはまるで聖女とは・・・いや、この世のものとは思えない。

蛇に睨まれたカエルのように身を硬直させ、本能的に息が止まった。

『次の一呼吸でられる』

そんな錯覚が即座に浮かんだ。

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