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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
到着と
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メリリーシャの地理

首を固められて捕まった瞬間に毛布と人形を残して脱出をした。

狩猟時に何度も経験したことだが、”捕まえられる”と確信した瞬間、隙が生まれるのだ。

今の葵も同じ心理が働いていることは明白だった。

身を隠す、矢を射ることはプロだが、逃亡が素人である相手を捕まえ、油断が生じている。

その隙を突いてあざむき逃げ切った。

呼吸が乱れて冷静な判断のつかないまま、ひたすら走った。

とにかく、葵という恐怖から今は身を隠した。

その間にも脳が勘違いを起こす。

胸の高まりを恋と結びつけてくる。

こんな状況でも、また一段と葵への思いをつのらせた。


その後、葵たちは町中へと繰り出していた。

2人で何か話しながら散策をしている。

その最中に気づいたのだが、もしかしたら葵の隣の人・・・男かもしれない!!

動揺のあまり、そこまで葵を見ずに、ディンブラのことばかり見て性別を確認しようとしていたので、あまり気配に気づかれなかった。

とはいえ、時々見ていた分は気づかれていたようだ。

声を聞いても低い、一人称も僕、よく考えたら葵と並ぶと小さく見えるが170cm後半はある。

『私は間違えて嫉妬に苦しんでいたっていうの!?』

その夜、悶々(もんもん)としてなかなか寝付けなかったという。

「でもさ、考え方によっちゃ、男女のカップルじゃなかった分よくない?彼女じゃないから、私にもチャンスあるっぽいし・・・」とぶつくさ独り言の絶えない夜となった。


そんな気もそぞろな状態でのこと。

寝不足で頭も冴えない中葵とディンブラを探していたら、まさかの葵がすぐそこの角から姿を現した。

驚きはしたものの、冷静を装い通り過ぎる。

葵も道をすんなりと譲ってくれた。

『あっぶな〜!!・・・って、あれ?私の顔バレてない?』

振り返ると、葵とディンブラでこちらのことなど気にも止めずに会話をしていた。

ほんの少し、寂しく思ったがそのまま通り去った。


ウェストポートでの会話を聞いていると、どうやら目的地はメリリーシャのようだ。

そこまで彼らが徒歩道を使って車で行くという会話が聞こえてきた。

生憎あいにく、徒歩道は蜂の大量発生のせいで通れそうに無い。

なので馬車を使って先回りをしようと考えた。

『まぁ、だって、あの2人男同士だし、心配するようなことはないからね・・・』

そしてメリリーシャに先回りして地形の確認を行う。

そこは自分では見たことのないくらい人が多かった。

「な、何!?この人の量!!今日お祭りでもあるの?」

キョロキョロと見渡す限り人、人、人。

すっかり疲れてしまった。

翌日にリトライすると、人の量はこのくらいいるものだとやっと理解できた。

ここの地形では大通りは人が多く、人意外の遮蔽物しゃへいぶつは少ないが、建物が他の町と違って高くて多いので、上に行くと標的を観察しやすい。

しかし、その反面路地も多い。

「この前みたいに追いかけられたら、路地に逃げ込むのがいいのかも」

路地では小回りが利く方が有利になりそうだ。

さらに遮蔽物が多いし、人が少ない。

大通りでの狙撃は気がひけるが、路地くらいの交通量ならタイミング次第で狙撃は可能と判断。

こうして地理の把握を済ましてあとは地図と照らし合わせて歩いて見て回る。

そうして待つこと数日、葵たちがやって来た。

車を降りると真っ先にある国の大使館に入っていく。

「エ・ディ・ブ・・・ル?大使館。どっかの国なのかな?」

大陸を渡った彼女には初めて聞く名前だった。


葵たちがメリリーシャに到着して翌日のこと。

葵が1人で行動をしていたので、追跡を行う。

一日見ていたが、本当に散策しているだけだった。

あの旅の相棒がいないのが気になるが・・・。

『単独行動?・・・ま、いっか』

特には気にしなかった。

そのまま尾行としていると、男性2人組と話をしていた。

大きな声で「葵さま」と呼んでいる。

どうやらあの方の名前は葵と言うらいしい。

「葵・・・さま」

名前を知れたことの喜びを噛みしめるようにつぶやく。

どういうわけか、見ているうちに男性2人が葵にすがりついた。

その時に嫉妬心がいてくる。

「葵さまに触れるな!!」

強烈な怒りを覚え、矢を構えて放った。

だが、葵が察知して2人を引き寄せて回避されてしまった。

すぐに身を隠して様子を伺う。

殺気を上手く抑えられず、次の矢を準備していた。

そんな時、葵の口から衝撃的な言葉が発せられる。

「わからないのか!?俺だって大切に思っているからだ!!失いたくないんだよ!!」

気づいたら次の矢を放っていた。

3人の間に刺さる。

「はっ!」として慌てて場所を移動した。

「私のバカバカバカ!!どうしても葵さまを前にすると冷静になれない!!」

自己嫌悪に陥りながら移動した。

「早く移動しないとあの方ならすぐに特定してしまう!!」

はやる気持ちを抑えながら小走りで狭い階段を駆け下りていると、逆に駆け上る足音が聞こえた。

「まさか・・・もう来たの?」

一気に呼吸が詰まった。

足を止めてしまったが、冷静に一度深呼吸をして歩く速度で階段を降りていると、下から葵がやって来て少しぶつかって通り過ぎて行った。

その時に驚きで「きゃっ!!」と小さく悲鳴をらしてしまったが、何も気にせず屋上へと行ってしまった。

茫然と葵の去って行った方向を見上げていたが、そのまま下りて行った。


翌日も葵を探していたのだが、脳内に昨日の葵と鉢合わせた時のことを何度も再生される。

自分が移動するのが少しでも遅れていたらと考えると、恐ろしい。

あまり考えずに前の人について歩いていると、その男性に絡まれてしまった。

「何してたんだ?お前!!」

特には前の男性のことを考えてもなかったので、急に言われたいちゃもんに驚く。

『しまった!何も考えずについてきてしまった!!』

「や、やめてください!何もしていません!!買い物に来ただけです!!」と言い訳するが、相手も許してくれなさそうだ。

こちらに近寄って来る。

「いいや!お前は今までずっと俺の後をつけていた!!何なんだ!!」

「違います!!あなたのことなんてつけてません!!誤解です!!」

「じゃあ、買い物しに来たくせにこそこそとしてるのは何なんだよ!?」

『え!?こそこそしてた!?・・・つい癖が出てしまったか』

問い詰められて言葉に詰まっていると、葵がやってきた。

「おい、その辺にしておけ!」

葵を見た瞬間に鼓動が高鳴る。

恋の意味合いでの高鳴りなのか、葵に追い詰められた時を思い出しての高鳴りなのかはわからない。

葵が相手を追い払ってくれた。

自分のために。

礼を言うと「いえ!お気をつけください!」と笑顔を向けて去っていった。

その後、しばらくの間茫然ぼうぜんと立ち尽くして、いつまでも葵の背中を見ていた。

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