キャンディ
バーベキューを堪能して、食べすぎたうちの子達はそのまま数人、地面で寝てしまった。
この森は心地良いし、外で寝かせてあげてもいいかも。
木陰にラグを敷いてティーとリアを運んで寝かせる。タオルだけでもかけてあげないと…。
「アスカちゃん私もそこいいかしら?」
「勿論です、もう一枚敷きますね」
王妃様の為にもう一枚ラグを敷く。寝てるリアの横だと間違いなく蹴られるからね。それは避けたい。
「ありがとう。 それにしてもこの森は心地良いわね〜」
「そうですね。 魔力が濃いので、私達のように魔力量が多いと余計にそう感じるのかもしれません」
「なるほどね。セイナ様がここを選んだ訳がわかった気がするわ」
「はい。ここで過ごせば魔力の総量も増えやすいですからね」
「たしかに…魔力が濃いほど影響があるって聞いたことがあるわ」
そのまま話してたら王妃様もウトウトしだしたのでアリアさんにタオルとクッションを渡しておく。
「ありがとうございます」
「いえ、王妃様の事はお任せしますね」
「はっ…」
アリアさんに任せて私はあの子を探しに行く。
魚を運んでくれてから見かけてないんだよね。
食事はしないから当然なのかもだけど…。
「キャンディ、何してるの?」
「ますたぁ…」
バーベキューをしていた場所から少し離れた湖のほとりで座り込んでるキャンディを見つける。
「どうかしたの?」
「ううん、あまりにぎやかなのって得意じゃないから…それにますたぁならこうやって見つけて来てくれるもの」
この口調のときは絶対なにかある。普段はもっと軽いからね。
「キャンディはまだ私に隠し事できると思ってるの?」
「うっ…なんでよ〜ますたぁはズルいわ」
「それで?どうしたの」
「…私サキュバスよ?悪魔の一種。そんな私がますたぁの大切な家族と一緒にいていいのかなって」
「キャンディは私の家族に危害を加えるの?」
「そんな事する訳ないじゃない! ますたぁの大切な人達なら私も全力で守るわ」
「じゃあ何の問題があるの?」
「だから私はサキュバスで悪魔なの」
「それを言ったら私は魔王だよ?魔の者を統べるトップだった」
「…そうだったわね。ますたぁは優しいから忘れちゃうわ」
そんな事を気にしてたのね。
「確かにキャンディの服装や言動は子供達に悪影響かもしれないね」
「そうよね…」
「でも、そうやって悩むってことは気にかけてくれてるんでしょ?」
「ますたぁの大切なものは私にも大切なものだから」
ほんと、こうしてるといい子なんだよなぁ。
「キャンディを呼び出した時に私が言ったこと覚えてる?」
「当たり前よ! 契約の言葉だもの。 ”今日からお前も俺の家族だ。たった今からお前も俺が守るべき存在となった。だからこれだけは約束しろ。 勝手に死ぬな。よく覚えておけ“ よね」
「改めて言われると恥ずかしいけど…キャンディも家族なんだよ。あの子達と同じね」
「ますたぁ…」
「ただし! そういう事をしようとしたら殴るからね?」
「ちぇ〜。ますたぁのいけず〜。今いい雰囲気だったじゃないの〜」
「ハグくらいならいいけど…」
「ほんとに!? 前はそれすら嫌がってたのに…。あぁ、あの子達の影響かぁ〜。ちょっと妬けるけど」
リア達で慣れたのは間違いない。
仕方ないから私からキャンディをハグしてあげる。
「ふわぁっ! ますたぁ!? あぁ〜幸せだわ〜満たされる〜」
「これでわかった? キャンディがサキュバスで悪魔なのは今さらだよ。それ以前に家族なんだから」
「うん、うん! ありがとうますたぁ」
そう言ったキャンディにもう一度ハグをされて…。ふっと湖を見たらラムネが顔を出してた。
ラムネも家族だよ。
喜んでる感情が飛んできて、こちらへ首を伸ばしてきたから撫ぜてあげる。
「ちょっと〜ラムネ。今は気をきかせる場面よ?もしかしたらこのままイケるかもなんだから」
「キャンディ…?」
「ひっ…嘘です! 調子に乗りました!」
この辺はやっぱりサキュバスなんだなぁと実感する。
「ますたぁ…」
「うん、お祖母ちゃんが戻ってきてるね」
「私は還っておくわ〜。トラブルの種になりたくないし〜」
そう言うとキャンディは自分で戻っていってしまった。
気にし過ぎだよ…。
うちの子達は自分で還れるように権限を渡してある。
特にキャンディは潜入任務をしてる時に、もしもの事があったら直ぐに安全を確保できるからね。
他の子達も同じ。いざという時のため。
普通は絶対そんな権限を渡さないらしいけど。
私には理解できない。この子達の安全が一番大事でしょ?
最初は出てくるのも自由にさせてたんだけど、私がちょっとでも危ないってなると飛び出してきちゃうから…。 あ、キャンディは別。あの子は出てくるのが身の危険。
うん? ラムネはまだ泳いでていいよー。こんな大きな湖はそうそう無いからね。
嬉しそうに湖へ潜っていくラムネを見送る。
私はお祖母ちゃん達を迎えに行く。 空を見上げるともう夕方だね。
お祖父ちゃんの魔力波長は分からなかったから、このままだと魔力ドームを抜けられない。
急いでお祖母ちゃん達の元へ向かう。
「お祖母ちゃん、ストップ! お祖父ちゃんの魔力波長を登録させて」
「あぁ…これ例の。流石ね。 貴方?」
「うん、アスカちゃんよろしくね」
「おじい…ちゃん…?」
「そうだよー」
嘘でしょ…?




