34 木の実クラフト
ミューの部屋につくと、ノックする前にドアが開き、ミューが出てきた。
「リリーちゃん!」
「ミューちゃん、遅くなってごめんね」
「だいじょうぶぜんぜんまってないよ。・・・でもまってた!」
「ふふ、ありがとう」
ミューの中での「大丈夫全然待ってないよ」は待たせた相手が恐縮したときの返礼文であって言葉の意味はあまり理解していない呪文のようなものなのかもしれない。
部屋へ入れてもらい、道具や素材を確認する。
キリと接着剤と竹串とペンを、こたつに持っていった。
私とミューとマーサとエリーの4人で席に座った。
「大きいドングリをひとつと、同じくらいのドングリを2つ用意してください」
みんなでわいわいとドングリを選ぶ。
「これがいちばんおおきぃー!」
みなミューの可愛らしさにほほが緩む。
「つぎに、大きいドングリにお顔を描きます」
エリーの絵の上手さが凄すぎて少し不気味なドリンクになった。
「次は、大人の人に顔つきドングリに2つ穴を開けてもらいます」
マーサとエリーがキリで穴を開けてくれた。
「同じくらいの2つのドングリに1つ穴を開けます」
またまたマーサとエリーがキリで穴を開けてくれた。
「この穴のなかに、接着剤を付けた竹串を差し込みます」
ミューも同じように作っている。
「やじろべーのできあがり!」
「ん?なんですか?」
マーサが聞き直してきた。
あ、やじろべーは伝わらないのか。確かバランストイとか、釣合人形とかよばれてたはず。
「あー、釣合人形、なら通じますか?」
「はい、リリー様の元居た世界の名前なんですね」
「まあ、元というか、今でも眠るとあちらですが」
「え?」
「できた!」
「これをこの棒の上に置いても倒れません」
「すごーい!ふしぎー、あ、てにものった!」
ミューが喜んでいるので、大人の話は中断する。
「他のも作りますか?」
「つくるー!」
ドアがノックされた。
「ヨーコです、おやつをお持ちしました」
「はーい」
エリーがドアを開けに行った。
ヨーコは、ワゴンに5人分のおやつを持ってきていた。
一緒に食べるつもりらしい。
おやつはマロンパイだった。
渋皮煮のマロンが入った手のひらサイズのパイで、一皿に2個ずつのっている。
ミルクはピッチャーで持ってきていたので私もミルクを貰った。
あ、エリーってマロンパイは普通の量なんだな。って思っていたらマーサとヨーコが1つずつ貢いでいた。
面白そうなので私も1つ差し出してみた。
恐らくエリーはパイが好きなのだろう。
おやつを食べ終わったので、工作を再開した。
「では、装飾ツリーを作りましょう」
「はーい!」
「まず、好きな大きめ松ぼっくりを用意します」
「これにするー」
「コルクを切って幹にします。大人に切ってもらいましょう」
エリーがワインのコルク栓を半分に切ってくれた。
「松ぼっくりと同じくらいの大きさの台にコルクを瞬間接着剤でくっつけます」
「コルクの上に松ぼっくりを瞬間接着剤でくっつけます」
「できたよ」
「次に、ここにある好きな飾りをボンドでくっつけます」
ふと気づくと、工作はマーサとヨーコが入れ替わって作っていた。
マーサはどこへ行ったんだろう?
わいわいと騒ぎながら、みんなのツリーが出来上がった。
ミューのが一番上手だった。
「窓辺に飾ると良いですよ」
「はーい」
エリーがこちらを見ているので説明した。
「私がいた世界ではこういうのをクリスマスツリーと呼ぶのです」
「クリスマスとはなんですか?」
「本来は宗教的なものなんですが、私の国ではケーキとチキンを食べて、子供や恋人がプレゼントをもらう日でした」
「面白い日ですね」
「リリー様17:00を過ぎました」
ヨーコが時間を教えてくれたので今日は解散することになった。
マーサがいないのでヨーコと部屋へ戻った。
部屋に戻るなり眠気が酷くなり、そのまま意識を失った。
誰かが遠くで呼んでいる気がした。




