28 カレーと、仕事が決まりました
「19:00頃呼びに参ります」
そう言ってヨーコは下がっていった。
まだ18:00前らしいので、何をしようかと考え、思い出した。
ドングリはどこにあるのかな?
いくら考えたところで置き場などわからないことなので、頭を切り替え明日必要な道具類を手早く用意してもらえるように書き出してみた。
キリ、接着剤、ハサミ、糊、ペン、 色紙・・・そんなところか。
あと、桐の若枝か、コルク無いかしら。
出来れば、ビーズとか、スパンコールとか、綺麗な小さいキラキラ類が欲しいなぁ。
いったい何を作る気だよ?と自分に突っ込みつつ、部屋をうろうろしながら一人妄想と戦っていると、ヨーコに呼ばれた。
コンコン
「リリー様お食事の用意が整いました。」
「はーい」
自分でドアを開けて出ると驚かれた。
なぜ驚くのだろう?
持ち直したらしいヨーコに続いてメインダイニングまで歩いた。
席につくとルーとミューとクックがいた。
どうやらクックがここにいるのは珍しいらしく、給仕の人たちが少し落ち着かないでいる。
クックがルーに話があるのだろうか?
料理が運ばれてきた。
今日のディナーはカレーとナンとミニサラダだった。
デザートは飲むヨーグルトらしい。
バターの香りの「バターチキン」ほうれん草が入っている感じのは「サグパニール」で、ひよこ豆が見えるのは「チャナマサラ」だろうか?
「カレーとナン、おいしそう!いただきます」
「これも知ってるのか!?」
「たぶんですが、タンドリー釜に張り付けて焼くパンのナンと、バターとトマトと鶏肉のバターチキン、ほうれん草の入ったサグパニール、ひよこ豆の入ったチャナマサラではないでしょうか?」
クックは目を見張ったあとニヤニヤと笑いだした。
「作ったことがあるのは?」
「スパイス調合からではありませんが、バターチキンと、ナンもどきです。家では簡単キーマカレーも作っていました。」
「ナンもどきとは?」
「流石にタンドリー釜がありませんので、オーブンや、トースターで焼きます。なので、もどきです」
「やっぱりうちにほしいなぁ」
クックは嬉しそうに呟いた。
「リリーは料理に詳しいのかい?」
ルーが訪ねてきた。
「特に詳しくもありませんが、食べるのは好きです」
「いや、十分詳しいと思うぞ!」
私がやんわり否定したのにクックに覆された。
「リリーは料理人になるのかい?」
ルーは聞いてみただけのようだが、いつもニコニコしているミューが泣きそうになっていた。
「ルーさん、私はいつまでここにいて良いですか?」
「見た目が15歳まで構わないよ」
「見た目年齢・・・」
私が考えていると泣きそうなミューがこちらを見ていた。
「リリーちゃん!もうあそべないの?」
「遊べますよ!明日も明後日もその次だって遊べます」
ほっとしたのかミューが微笑んだ。
ミューを見ていたルーが思いついたように、
「リリー、ナニーはどうだい?」
「ナニーって、私には何も、資格も教養もありませんが・・・」
「難しく考えなくて良いよ。教育は教師がいるからね。ミューと遊んでくれればね」
「そんな好条件で良いんですか!?」
「リリーに異存がないなら」
「異存なんてあるはずありません。むしろ好条件過ぎて、うふふふ」
「ちょっと良いですか?」
クックが手をあげて渋い顔をしていた。
「なんだい?」
「できればで良いのですが、お嬢様の勉強中の時間だけでもキッチンにリリーちゃんを、今日はその話をしに来ました」
「リリーが良ければ構わないけど、体力的に大丈夫かい?」
「実務なしのアイデア係りで来て欲しいと思っています」
え、クックが居たのは私の交渉のためだったの?
しかもアイデア係りって冗談じゃなかったんだ。
子供に見える私を誉めてくれているだけだと思ってたよ。
「リリー、どうする?」
ルーに訪ねられた私は間髪を入れずに答えた。
「役立つかどうかは疑問ですが、キッチンにも行きたいです!」
「そうか」
ルーはニコッと笑い、クックの方を向いた。
クックは、よし!と呟くと席を立ち、
「よろしくな!」
私にそれだけ言い残し、何も食べずに退室した。
いつ行くとか、何日行くとか、相談しなくて良いのだろうか?
「あ、ルーさん!」
私は思い出して呼び掛けた。
「ん?なんだい?」
「時計、時計が欲しいです!高価なら諦めますが、部屋時計でも、懐中時計でも何でも良いです」
「リリーの部屋には時計無かったの?」
「気がつくところにはありません・・・と思います」
「マーサ、は休みだったね。ヨーコ、時計無いなら用意してくれる?」
「かしこまりました」
「ありがとうございます!」
「足りないものは気がついたら言うと良いよ」
「はい」
カレーはおいしいし、仕事は決まるし、しかも仕事とは名ばかりの遊び係り。なんて至れり尽くせり。
「ごちそうさまでした」




