18 料理長
ミューに案内されたことの有るダイニングに来た。
どの人が料理長かな?と見ていると、私の後ろから声がかかった。
「これはこれは」
「リリー様、こちら料理長のクックです」
「ちょっ、マーサ、それは通称!私の名は難しいのでみんなクックと呼んでいる」
「結局、クックで良いんでしょ」
「まあ、そうだけど」
掛け合い漫才か!
私が思わず笑うと二人がこちらを見た。
「リリーです。ご飯が美味しくて嬉しいです!ありがとうございます」
「好きなものあったら作るよー、どんなもの好きー?」
機嫌の良さそうなクックは調子も良いのか、愛想も良い。
クックは、色々な料理を知ることと作ることが趣味で、新しい人が来ると郷土料理を聞きたがるのだとか。
見た目優男風なのに、実態は料理オタクで、大量にいる胃袋を捕まれた若い女性ファンには見向きもせず、ひたすら新しい料理を求めているらしい。
「何か教えた方が良いですか?」
「リリーちゃん?様? 何か新しい料理知ってるの?」
「私の故郷の料理は、昨晩いただいた生のお魚類がのったご飯や、卵の蒸しもののような感じですが、民族的に色々な料理を作るので、家庭料理かお菓子なら作れます」
「そりゃ凄い!!!」
そこで待ったがかかった。
「そこまでです!リリー様に朝食を!」
マーサの一声で一旦終了し、今日のメニューが並べられた。
クロワッサン、カラフルオムレツ、コールスロー、カリカリベーコン、オレンジジュース。
「リリー様は好き嫌いがないのですね」
「そんなことはありません。生野菜は苦手ですし、自力ではあまり食べません。出されたら食べます。出されても残すものもあります」
「例えば何を残すのですか?」
「うーん、辣韮、沢庵、生の胡瓜、パクチー、つぶ餡、レーズンバターサンド、ベイクドチーズケーキ、かな」
「そ、そうなのですね・・・」
マーサがひきつってしまった。
好き嫌いが多い子は嫌なのだろうか。
「よ、食べ終わったかい?」
「もう少しです」
料理長が、ニコニコしながらデザートを勧めてきた。
「これ、食べるかい?」
「うわ!プリン!」
ほほが緩む。プリンも大好きだ。
「ん?ぷ・り・ん?」
省略語は伝わらない事が有ったんだった。
「あー、プディング、かな。砂糖1、卵2、ミルク4、位の重さの割合で作るんですよね?」
料理長は驚いた顔をして、だんだん笑顔になった。
「作れるのか!・・・よし、うちに来ないか?実務は免除で、アイデアだけで良いぞ!」
「免除!?」
私の疑問が伝わったのか、真面目な顔で説明をしだした。
「家庭料理と違って、数を作るから何でも多くて重いんだ。材料の1つがリリーちゃんと同じくらいの重さのものも沢山有るんだぞ」
「確かにそうですね」
「わかるのか?」
「お友達がお菓子を作る職人で、砂糖一袋が子供の体重くらい有るって言っていました。」
「砂糖って30kgがイッタイなのよ!」
「イッタイって何?」
「あー漢字で書いたら一袋も一袋も同じ字かな」
そんな話をした覚えがある。
「ほお、菓子職人の知り合いがいるのか。何か新しい菓子でも良いぞ!教えてくれ!」
「今度考えておきますね」
「おう!よろしく頼むな!」
プリンを美味しく食べ終え、食器を片付けようとしたらマーサが戻ってきた。
私が料理長と話している間、他の事をしていたらしい。
「リリー様、サラダを温野菜に変えてきました」
「え?」
「ほぼ毎食サラダが出ますので、あ、トマトはお好きですか?」
「はい。トマト大好きです。苦手なのは葉物です」
「次の食事から変わります」
「そんな面倒かけてしまって すみません大丈夫なんですか?」
「他にも生野菜を食べない人は居ますし、問題ありません」
「ありがとうございます」
至れり尽くせり。もう何度思ったことか。




