↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうぞ、あなたが心を奪われたご令嬢とともにお行きください。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

第3話 伯爵との話し合い

 お父様は、マディウスの婚約破棄に激怒した。

 それは、当然のことだといえる。婚約破棄とは、二家の間で取り交わされた契約を破棄するということだ。さらに私に対する侮辱ともいえる。

 親友の息子であっても、この仕打ちはお父様も我慢ならなかったようだ。そこでモルドン伯爵と、改めて話すことになった。


「息子がしたことは、本当に申し訳なく思っている。まさかあれが、そのようなことをするとは……」

「俺としても、信じられないことではある。しかしモルドン伯爵、事実としてお前の息子は婚約破棄をしたのだ。その責任は取ってもらわなければならない」

「もちろん、そのつもりであるとも……」


 モルドン伯爵も、ひどく気落ちしているようだった。

 私にも良くしてくれた人なので、それを見るのは少し忍びない気持ちもある。

 とはいえ、マディウスの行いを擁護することはできない。それによって私やザナール侯爵家は、既に損害を被っている。


「しかし、謝罪の場にマディウス本人がいないということは、また気に入らないことではあるな」

「……」

「……モルドン伯爵? どうかされたのですか?」


 お父様からの質問に、モルドン伯爵は答えない。

 この期に及んで、隠すようなことがある訳もないだろうに。いやもしかしたら、マディウスはあの後――


「まさか、マディウスはあの舞踏会から戻って来ていないのですか?」

「……ああ、その通りだ。実の所、マディウスは帰って来ていない。大方、ロサーヌ嬢とともにいるのだろう。こちらに連絡は何もないが」

「そうでしたか……」


 マディウスは、王城で私とイルファー殿下の前から去ってから、家にも戻っていない。その事実は、嫌気が差すようなものであった。

 要するに彼は、ロサーヌ嬢にうつつを抜かしている訳だ。貴族としての立場や責任すらも、忘れているというのか。


「……モルドン伯爵、お前の友として言わせてもらうが、マディウスに対しては然るべき対処をしておいた方がいい」

「それは……」

「息子に対して情があることは理解できるが、これ以上家の一員として認めていると、破滅を招くことになるぞ? 俺達は家の当主として、時に非情にならなければならない」


 怒っていたお父様は、少し態度を軟化させて、モルドン伯爵に助言した。

 その言葉に、伯爵は目を瞑る。考えているのだろう。マディウスをどうするべきかを。

 貴族としては、切り捨てるべき状況だ。それは間違いない。しかし、息子に対してそうすることには、抵抗があるのだろう。


「……モルドン伯爵、ロサーヌ嬢は危険な令嬢です。彼女が公爵家との間で起こしたことは、知っているはずでしょう?」

「む……」


 私は、モルドン伯爵に言葉をかけた。

 それは私が、イルファー殿下が計画していることを知っているが故の言葉だ。このままでは、モルドン伯爵家もロサーヌ嬢の断罪に巻き込まれかねない。

 できることなら、そうなって欲しくはない。モルドン伯爵には、これまでお世話になってきたし、何より家の問題は領地の民の暮らしにも影響してくる。


「……そうだな。私も決断しなければならないか」


 モルドン伯爵は、数秒の沈黙の後、私の言葉に頷いた。マディウスに対して、然るべき対応をすることを決めたのだろう。

 これで少しは、モルドン伯爵家に対する風評などは避けられるか。それでも色々と言われることだろうが、何もしないよりは遥かにマシなはずだ。


◇◇◇


 モルドン伯爵がマディウスの家からの追放を決定してから、私はイルファー殿下に呼び出されていた。

 ロサーヌ嬢との一件に関して、話し合いたいことがあるということだった。私はとりあえず従い、王城まで足を運んだ。


「シルフィア嬢、忙しい中、よく来てくれたな」

「いえ、どうせしばらくはやることもなかったので……私は婚約破棄された身ですから。しかし、どうして私を? これ以上、役に立てるようなことはないと思うのですが」


 イルファー殿下には、当然協力したいと思っている。ロサーヌ嬢がこれ以上国をかき乱すのは、被害者の一人として食い止めたい所だ。

 ただ、私にこれ以上できることがあるのだろうか。もちろん、ザナール侯爵家の令嬢としてそれなりに力はあるとは思うが。


「ザナール侯爵家――お父様などではなく、私に連絡したのには理由があるのでしょうか?」

「あなたは、マディウス伯爵令息と懇意にしていたからな。今回の件において、あなたの存在はこちらにとって武器になる。以前と同じように、な」

「また、マディウスの罪悪感を刺激するということですか?」

「ロサーヌ嬢は手強い相手だ。あれを崩すことは容易ではない。故に俺は、マディウス伯爵令息の方を責めるつもりだ。二人が結びついている限り、その存在は弱点になりえる」


 イルファー殿下は、恐ろしい人であった。彼はマディウスの罪悪感をとことん利用するつもりだ。ロサーヌ嬢を切り崩すために。

 マディウスは私が決別の言葉をかけてからも、未練というか、曖昧な態度であった。彼の中には、確かに私への罪悪感があると考えられるか。

 それならば私の存在は、マディウスへの負荷として有効なのかもしれない。


「あなたに対しては、酷な頼みであると言えるか? もちろん、断ってもらっても構わない。かつての婚約者――幼馴染の前に立ちたくないというならばな」

「いえ、そのことについては、特に問題はありません。私としても、マディウスのことは気になっていますから。彼と、それからロサーヌ嬢を最後まで見届けたいという気持ちはあります」


 ロサーヌ嬢の一件に関して、被害者として、それからマディウスに微かに残る情から、私は見届けたいと思っている。

 だから、イルファー殿下の提案を断る理由などはない。もちろん、何が起こっても、マディウスを助けるつもりなどはない上で。


「マディウスはもう、私の知る彼ではありません。ロサーヌ嬢に魅入られてから、彼はもう変わってしまったのだと思います。大袈裟かもしれませんが、私の中にいたマディウスは死んだのです。今は彼がもう、抜け殻のように思えます」

「なるほど、それは道理かもしれないな。俺もクードに関しては、同じことを思っている。奴に同情するつもりなどはないが、な……」


 私の言葉を受けて、イルファー殿下は言葉を発した。

 その表情は、明るいものではない。クード公爵令息とは、仲が良かったのだろうか。いとことして、親交があったということかもしれない。


 だからこそ彼は、ロサーヌ嬢を追っているのだろうか。クード公爵令息の敵討ちとして。

 彼女と出会わなければ、違う未来があったかもしれない。そう思う気持ちは、私にもわかる。私達は、同じ立場にあるということだろうか。


「モルドン伯爵から、王家に要請があった。それはマディウス伯爵令息を家から追い出すというものだ。それを俺は通達しに行く。貴族の管理は、王家の仕事の一つだ」

「それに、私も同行すれば良いということですね?」

「ああ、俺の助手ということにしておけば、体裁としても問題はないだろう。そもそも、俺が自ら赴くことが異例中の異例である訳だがな」

「わかりました」


 私は、イルファー殿下の説明に頷く。

 また、マディウスとロサーヌ嬢と顔を合わせることになる。少し、気を引き締めておかなければならないだろうか。きっと、穏やかな邂逅には、ならないのだから。

最後までお読みいただきありがとうございます。


よろしかったら、下にある☆☆☆☆☆から応援をお願い致します。


ブックマークもしていただけるととても嬉しいです。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。