まあ、気持ち悪いよね→クレア、転生者あるいは作者の間違いに気づき対処に出る(改)
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楽しんでいただけると幸いです。
由香子が気づいた時、部屋が変わっていた。この家で2番目に広い部屋で、内装もロココ調で美しく、壁も美しいライトグリーンだった。
由香子は不思議に思い、スリッパを履いて部屋を見回してみると、そこは豪奢な家具が置いてあり、化粧台も白くてクラシック調で可愛くて由香子好みだった。
そこにはクレアにもらったアクセサリーはもちろんのこと、ほかにもネックレスや髪飾り、指輪などが置いてあった。銀の手鏡もある。
クローゼットを開けてみると由香子は驚いた。
服が全部新調されている。夏用のドレスだけで20着はありそうだ。靴ももちろん宝石のついた可愛らしいものがたくさん置いてある。
由香子は嬉しくなった。ようやく苦労が報われて皆が分かってくれたのだ。あのアレクシスもついに私に好意を抱いたらしい。由香子は「フフ、」と笑った。
謹慎が解けた由香子はクローゼットからフリルとレースのついた可愛らしい青のドレスを選び、青の靴と合わせて気分よく朝食をとりに向かった。
そこでは3人が先に食事をしていて、由香子の方を見るとクレアはもちろんのことアレクシスとコンラッドもぶっきらぼうに「おはよう」と挨拶をした。
由香子は席につき、尋ねた。
「すみません、記憶がないのですがお部屋はどうなっているのですか?」
「ーーあなたの扱いについて我々が間違っていたという結論に達しましてね。あれはお詫びです。欲しいものがあればなんでも言ってください」
コンラッドは棒読みにならないように苦労しながら由香子に言った。彼女は見え透いた演技で「まあ」と口に手を当て、言った。
「そんな、私なんかにそこまで...」
「いえ、当然の行為ですよ。ローレッタ」
コンラッドは悪霊が取り憑いた彼女はここまで怖気が走るほど気味が悪いのかと鳥肌を隠しながら言った。これならワガママ三昧の元のローレッタの方がまだましだ。少なくとも彼女は自分の意見を言い、率直な物言いをする。不器用だが本心から礼を言う。
この悪霊のような気色の悪い卑屈な物言いはしない。自分を下に見せない。被害者を気取って人をコントロールしようとしない。
コンラッドはこのプライドだけは高い被害者意識満載の気持ちの悪い悪霊はなんなのだとこっそり溜息を吐いた。
「ローレッタ、今日一緒にお茶会しましょう?もしよろしければですけど」
「まあクレア嬉しいわ、私も出てよろしいの?」
「もちろんですわ」
クレアは流石と言うべきか舞踏会で慣れているのか笑顔でいつもどうりの態度で悪霊と話した。コンラッドとアレクシスは女は恐ろしいな、と考えながら「いい考えだね、クレア」とぎこちない笑顔を向けた。
今回ローレッタがローレッタでいた期間は5日。これから何日この悪霊が外に出ているか分からない。悪霊の行動を観察し、パターンを調べ、どうにか対処しなければならない。
クレアが絶対にローレッタを死なせないと断言したからだ。
クレアが提案したのはこういうことだった。曰く、
「あの悪霊はどうしてローレッタが侯爵夫人になりたいと思っているのか、侯爵夫人とはどういうものかを知らないわ。だからあんな下級貴族でも買わない地味なドレスを買ったりするのよ。侯爵夫人がどういう存在なのかを知らないから、皆が私をちやほやして、ローレッタを無視してるって思ってる。ーーだから、一回贅沢させてみましょう?服も靴もアクセサリーもいっぱいそろえて、部屋も元のローレッタの部屋から童話のお姫様のような部屋に変えてみましょう?たしか空いてる部屋でそういう部屋があったはず。悪霊は知らないのよ。上級貴族のしきたりっていうものがどんなものなのかを」
それにはほかの3人も頷いた。
確かに日記帳には妙に「可哀想なローレッタの人生を変えてあげる」だとか「みんなクレアばっかり」だとか書いてある。ローレッタも不思議に思っていた点だ。
目指すのは侯爵夫人だが、今はコンラッドの妻である。妻であればその時に使う化粧品や衣装代は別に出るのだ。アレクシスやコンラッドや義母がクレアを可愛がり、貴金属を買い与え、ドレスを買い与えるのはクレアがまだ未婚の、庇護される立場ーーつまり子どもだからだ。
いくら同い年とはいえ、次男の嫁は貴婦人の集まりに行ったりなどの自由と使える経費が出る分、娘とはこれぐらいの差は出て当り前だ。それにアレクシスとコンラッドがクレアを可愛がってなにが悪いというのだろう?既婚なら問題だが、未婚であれば妹を可愛がるくらい、普通の家庭ならするだろう。
もしや、と思ってローレッタは皆に尋ねた。
「ねえ皆、この悪霊、皆が私をいじめて差別して楽しんでいると考えてるかもしれないから気を付けて。これ物語よね?どういう作者がどういう風に書いたのよ?」
それを聞き、アレクシスやコンラッドもなるほど、と納得し、クレアの提案に乗ることにしたわけだった。
そしてローレッタの予感は的中。この悪霊は重大な勘違いをしていることに3人は気づいた。これが悪霊の読解力のなさなのか、作者がちゃんと提示していないのかは知らないが、迷惑なことだと3人は内心で溜息を吐いた。




