ついにアレクシスとコンラッドまでもが
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楽しんでいただけると幸いです。
アレクシスとコンラッドは嫁いできたローレッタに良い感情は持っていなかった。
彼女の舞踏会での態度はこの目で見ていたから知っている。彼女は常に男に囲まれて笑っている淫蕩な女だった。
それが父の命令で政略結婚をすることになり、その夜コンラッドは珍しくヤケ酒をした。アレクシスも付き合ってくれた。「なぜ私があんな女と」と酔って言うコンラッドにアレクシスは同情したものだ。
そして結婚後、2人のローレッタへの評価はさらに下がる。
彼女は図々しくも自分を「侯爵夫人と呼べ」と言い、父に無理やり許可を出させてそのように振る舞った。家じゅうを練り歩き、メイドや使用人、ここにやってくる者まで見ていた。
クレアを嫌っているという話を聞き、2人はクレアを守らなければ、と考えた。
あんなうちの君主に盾突く女がか弱いクレアになにをするか分からない。
彼女は服装も侯爵夫人のように変え、図々しくも不敵にまっすぐ前を見据えて歩いていた。そして料理長にあれが食べたいとワガママを言い、侍女と酒盛りをし、仕事が遅いくせに父の執事にチョコレートを買いに行かせる。とんでもない女だと2人は思った。
ドレスや靴、アクセサリーは何かの集まりで使わない限りはほとんど要求してこなかったが、時たまクレアにあげるものよりも高い宝石を要求するのが癪だった。
ただクレアに買っている宝石類の総額よりは安いためにしぶしぶアレクシスは買ってやっていた。クレアが5つ宝石を買うのに対して1つか2つ要求されれば買わないと噂が尾ひれをつけて広まってしまう。
しかもローレッタは買ったら満足するタイプなのか、それを貴婦人の集まりで付けるくらいだった。舞踏会では違うものを付ける。2人は腹立たしかった。
それが悪霊に取り憑かれてすべてひっくり返ったのがこの間のことである。
まずは侍女のマーガレットと執事のフォールズ氏の訴えだった。彼女はうわべだけ見ればワガママそのものだが、実情はまったく違った。
2人に敬意を示し、侯爵夫人らしく日々仕事をし、マーガレットに対してもフォールズ氏に対してもそうだったらしい。
チョコレートの件は自分の勘違いだとフォールズ氏は言っていた。ローレッタの言葉が足りず、勘違いで自分が買いに行ったと。2人は内心驚いた。
そして次はコンラッドが最近仕事がはかどらないことに気づいた。ずっと仕事をしているため、疲れていた。そういえばローレッタがこの家に来た時から定期的な休みがあった。
それはだいたいローレッタがめちゃくちゃなワガママを言ったあとだった。たとえば別荘に連れて行けだの、海が見たいだの、乗馬をしてみたいだの、領地をすべて見たいだのだ。
あの時はなんて女だと思ったが、今思うとあれは休息の一部になっていた。
そして料理長や庭師や使用人やメイドからも苦情が来始めた。
料理長はローレッタが自分の料理を楽しんでくれないと嘆き、庭師は心配し、メイドからは仕事中に話しかけられて迷惑していると言われ、使用人も同じく。洗濯女や給仕係までもが早く悪霊祓いをと急かすためについにファウラー侯爵は第3関門に打って出ることにした。
アレクシスの方が気づいたのはもっと早い段階ーーローレッタが由香子を追い出すために対処をしている時に、この女はわりと頭が良いと思ったが、決定的だったのは紳士の集まりでビリヤードをしていた時だった。彼にとある伯爵が言った。
「ローレッタ夫人は最近はサロンに顔を出さないのですか?うちの妻が彼女との音楽の話を楽しんでまして寂しがってましてね」
それを発端に次々と貴族の男たちが集まり、アレクシスに言った。
「うちもそうなんですよ。ローレッタ夫人がうちの妻に字を習ってまして、曰く『字が下手なので教えてください』と自ら頭を下げてきたようでして。妻がそれで気に入って字の書き方を教えてたんですが、来なくなってしまって大丈夫かと」
「ローレッタ夫人はまたうちの娘のピアノを聞きに来られないんですか?娘と仲が良くて、娘がねだって大変なんですよ」
「うちの妻もローレッタ夫人は一緒にいると楽しいと言ってましてね。あの方身に着けるアクセサリーも上品でしょう?彼女がサロンに必ずつけてくるネックレスが欲しいとねだられましてね。どこのか知ってますか?」
それらを聞いてアレクシスはローレッタは衣装から靴からアクセサリーにいたるまですべて計算しその時々で身につけるものを変えていたのかと知り、彼らに「すみません、ローレッタは今体調が優れなくて」と嘘を吐いた。
そして気づいた。そういえば彼女がクレアを嫌っているという噂はあるが、実際に嫌がらせをしたことはあったか?と。
コンラッドとアレクシスは2人で椅子に座り、煙草をふかしてそれらを話し合い、我々はローレッタに対し、重大な間違いを犯していたのかもしれないという結論に達した。
それからである。コンラッドがローレッタを恋しく思うようになり、アレクシスが悪霊を祓うことに本気で取り組み始めたのは。
このようにして、物語はどんどん崩れ、キャラクターは自我を持ち始め、修復不可能なところまで来ていた。




