信じられないくらい嫌われる転生者
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楽しんでいただけると幸いです。
由香子は最近、皆に嫌われているのではないかと疑問をもった。
挨拶をしてもそっけないし、会話をしようとしても使用人たちは逃げていく。きっとこれは皆が以前のローレッタだと思っているからだ、と親切にするが、ますます皆は逃げていった。
彼女は不安になり、本当のローレッタに会いに行った。こいつが何をしていたのか知らねばならない。
夢の中で本物のローレッタはバラの花びらが入っている棺の中で眠っていた。由香子はローレッタの肩を掴み揺すったが起きず、由香子は大声で叫んだ。
「起きなさいよ!私に教えなさい!アンタなにしてたのよ?!おかげで私はまた嫌われているわ!」
揺すっても大声を出してもローレッタは起きず、目が覚めた時、由香子は頭を抱えた。どうしたらいいのか分からない。
侍女のマーガレットは極力こちらに話しかけないようにしているし、フォールズ氏もいつも機嫌が悪そうだ。家族は優しいが、
これでは生前の会社の時と一緒ではないかと由香子は顔を覆った。
しかしともかく朝ではある。着替えて朝食をとりに行かねばならない。今日はバザーの日だ。クレアとバージルの関係を引き裂くにはちょうどよいと由香子は笑った。
由香子は濃紺に白いレースのついたドレスを着て朝食を食べに廊下を歩いていた。その時にメイドに会ったので挨拶をした。
彼女たちも挨拶を返したが、それはそっけなかった。由香子は考えた。これはきっとローレッタが彼女たちをいないものとして扱ったせいだと。だから会話を弾ませようとしたが、彼女たちは逃げていった。
由香子の鬱憤は溜まっていった。
朝食の席ではクレアやアレクシス、コンラッドがいたがもう食事を始めていた。由香子は内心『私が来るまで待ちなさいよ』と思ったが、笑顔で隠し、挨拶をして席に着いた。
給仕人が食事を運んでくるのに由香子は「ありがとう」と言うと、とうとう我慢しきれなくなったのか、アレクシスが頭痛を抑えるように言った。
「ーーローレッタ、そうやって給仕人やメイドや使用人に話しかけようとするのはやめないか?彼らはスマートな仕事に集中しているんだ。ここはレストランでもホテルでもない。若奥様ならわきまえてくれ」
「アレクシス」
クレアが慌てて止めたが、隣を見ると悪霊が顔を赤くして震えている。これはまずいと思ったクレアは悪霊のフォローに回った。
「ローレッタが皆の仕事を尊重している証拠じゃない。アレクシス、そんなこと言わないで」
悪霊が望むようにねだるようにクレアが言うと、悪霊はこんな奴だったのかとクレアの方を見て卑しく笑っていた。
クレアは舞踏会で実に様々な演技をしてきて自分でもある程度は慣れていると思ったが、さすがにこれは、とどうにか鳥肌を隠し、笑顔を引きつらせた。
アレクシスは溜息を吐き、少し肉を食べて「では失礼する」と朝食を切り上げた。コンラッドも、耐えきれなくなったクレアもだ。
1人残された由香子は、歯を食いしばって肉にグサリ、とフォークを立てた。なんだあの兄妹。気持ち悪い。
そしてヤケになって朝食をガツガツ食べて由香子は出て行った。この行動で給仕人はあれはやはり悪霊だと確信し、仲間に伝えた。
メイドにも、使用人にも。彼らは隠れて煙草を吸いながら話し合っていた。
「あの気味の悪い悪霊、どうする?」
「アレクシス様が今度エクソシストを呼ぶとか言っていたぞ」
「ああおぞましい。早くどうにかしてほしい。あいつなれなれしいのよ」
「分かる。いちいち話しかけてきて鬱陶しい。こっちだって仕事あるのよ?」
「あんなのローレッタ様じゃないわ。あの人はもっとこう、素直だった」
「そうそう。もっと素直でなんていうか、好奇心旺盛?」
「そう、どこにでも来て試しては帰ってってを繰り返して...洗濯場まで来て湯に手を突っ込んで『熱い!』って騒いでたわよね。そういえばあの人来てから賃金ちょっと上がったわよね?」
「そういえば...じゃああの人全部調べてたの?この家のこと」
「そうじゃないか?侯爵夫人と呼べと言ってた人だぜ?家の管理はしないとならねえしな」
「じゃああいつやっぱり悪霊よ。だって私たちがやってること見えてないもの」
「そうだな。本当のあの人は侯爵夫人たるもの、贅沢はせず、責任をもって家を管理し、夫を補佐し、なにかありゃ戦う、って人だったしな。それが今じゃあ..」
「令嬢だってあんな派手なドレスにネックレスなんか普段使いしないわよ。あーはやく戻ってきて欲しい」
早いとこ元のローレッタ様に戻ってくれないかな、と使用人とメイドたちは溜息を吐き、煙草を吸った。




