こいつ本読まないからweb小説みたくこれでうまくいくって思ってんだよ(改)
更新しました。
楽しんでいただけると幸いです。
日を追うごとにローレッタに成りすました悪霊の態度にアレクシスやクレア、コンラッドにファウラー卿やアグネス夫人までもが彼女に嫌気が差してきた。
飴玉を渡して黄金をもらおうとする奴の図々しさとなにかあれば被害者のように振る舞い、言い訳をし、それでいて人に好意を要求する下心満載の態度の人間はここまで人を苛立たせる存在なのかと、とファウラー家の人間は痛感した。
一番辛いのはコンラッドだった。こんな人間に愛しているふりをしないといけない。コンラッドは無理やり笑顔を作り彼女に接した。彼は心底思った。
結婚したのがあのワガママで意見を押し通し、自分を曲げないローレッタで良かったと。
皮肉にも彼は由香子のおかげでローレッタへの愛を深めていった。
ローレッタを嫌う者はなにもファウラー家の者だけではなかった。
執事のフォールズ氏も仕事が終わるたびに『がんばったでしょ』と言わんばかりの態度を隠しきれずに笑顔で礼をして帰って行くローレッタにいい感情は抱いていなかったし、侍女のマーガレットもローレッタの媚びた態度に表情こそ崩さないが内心では軽蔑していた。
こいつには自我がないのか?と唾棄しそうになったときに、アレクシスに呼ばれ、2人はローレッタに悪霊が取り憑いていると説明されて納得した。納得せずにはいられなかった。
マーガレットはアレクシスにたずねた。
「あの、アレクシス様、その悪霊はいつになったら追い出せれるんでしょうか?アイツ、私に自分のアクセサリーを渡してきて『もしもお願い事があったら頼むわね』と、まるで私を金で動く女だといわんばかりの態度で言ってきたんです。侮辱にも程があります。私はメイドではなくローレッタ様の補佐を行う侍女でございます。「ミス・マーガレット」と呼ばれる存在です。侍女と主人は信頼関係で結ばれ、そして良い仕事をするためのパートナーでもあります。侍女のこの私への態度をあの悪霊は分かっていない。失礼です」
「私も同感です。仕事はできますが、いちいち気にかけないといけないのが鬱陶しい。以前のローレッタ様は仕事は遅かったが少なくとも気にかけろと要求することは無かったし、私を『ファウラー侯爵閣下の』執事だと敬意をもって接していました。ーーあまり認めたくはないですがきちんとした侯爵夫人の1人でした。それが今ではファウラー侯爵閣下の執事ならば私にも親切にして当たり前、という態度で接してきます。あまりにも失礼です。私が彼女に親切にすることも厚意を与えることもありません。ただ同じ空間で仕事をするだけです。私は侯爵閣下の執事なのですから」
2人の訴えにファウラー家の皆は溜息を吐いた。どうやらどんどん嫌われているらしい。アレクシスは2人に言った。
「2人とも、屋敷中の人間にローレッタが悪霊に取り憑かれていると教えてやってくれ。あれは本来のローレッタではないと。しかし取り憑かれていると知られていると悪霊が知れば何をしでかすか分からない。すまないが賃金を今までの倍にするからローレッタが元に戻るまで耐えてくれと伝えてくれ。こちらも教会やセシル殿下の協力でエクソシストも集めている」
「ーーかしこまりました」
マーガレットとフォールズ氏も仕方なく頷いた。アレクシスは考えた。この短期間でここまで嫌われる人間も珍しい、と。
悪霊が憑いているという話はすぐに伝わった。というよりローレッタの服がまたあのフリルやレースのついたドレスに戻ったのですぐに分かるようになった。どうやら悪霊はあのような服が好きらしい。そしてファウラー家の人間は気づいた。
悪霊は生前、このようなオシャレをしたことがないから自分の顔や体型に似合う服を選ぶことができないのではないか、と。
これならば分かりやすいとファウラー家の誰もがそう思った。あとは早いところ悪霊を追い出すだけだ。皆は元のローレッタが恋しかった。
あの率直な物言いをする侯爵夫人であるように振る舞い、ファウラー卿の了承を得て侯爵夫人にふさわしいかテストされている侯爵家次男の奥様が。
自分を隠さないあの不敵な女が恋しかった。ワガママには多少苦労するがそれでもあっちの方がいい、というのが皆の考えだった。




