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第1章 第5話:最初の「最適化」と旅立ち

ポルカの村にある冒険者ギルド「数式と剣亭」。そこは本来なら活気あふれる勇者たちの溜まり場のはずだった。しかし今のギルドは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

「増える! 増えすぎる! 誰か、このスライムを止めてくれぇ!」

ギルドの床を埋め尽くしているのは、無数の青いプルプルした物体。スライムだ。一匹叩けば二匹に分かれ、二匹叩けば四匹に。それはもはや生物の増殖ではなく、悪質なコンピューターウィルスの自己複製レプリケーションそのものだった。

「……おい、エクセル。あの光景、見覚えがないか?」

ログはギルドの入り口で立ち止まり、デバッグコンソールを起動した。画面には『Critical: Memory Leak Detected』の文字が赤く点滅している。

「あ、あれぇ? 私、スライムのドロップアイテム設定をいじっただけだよ? 『倒したら二倍の経験値がもらえる』って!」

「……お前は、馬鹿か。それは『経験値』じゃなくて『個体数』の変数を書き換えてるだろ! 『1体撃破 = スライム + 1』じゃなくて、『1体撃破 = スライム × 2』になってるじゃないか!」

ログがソースコードを指差すと、そこには恐ろしい指数関数が刻まれていた。倒せば倒すほど世界のリソース(メモリ)を食いつぶし、最終的にはこの世界そのものをフリーズさせる「無限増殖バグ」だ。

「このままだと、あと三十分でこの村の全座標がスライムで埋まるぞ。……エクセル、今すぐその増殖ロジックを一括削除パージしろ!」

「それが……書き換えようとしたら、エラーが出ちゃって! 『参照先が見つかりません』だってぇ!」

「チッ、ポインタが迷子ダングリング・ポインタになってやがる……。よし、物理的に干渉する。……貸せ、その剣を!」

ログは近くで腰を抜かしていた戦士から、錆びた鉄の剣をひったくった。

「ログくん、危ないよ! 叩いたらまた増えちゃうよぉ!」

「バカか。まともに叩くわけないだろ。……いいか、エクセル。今から俺がスライムに接触する瞬間に、『スライムの存在確率』を0.0000001に書き換えろ。一撃で消滅させる」

「わ、わかったぁ! えいっ!」

ログが剣を振る。本来なら1ダメージも与えられないはずの錆びた剣が、スライムに触れた瞬間――スライムの体が「ノイズ」のように乱れ、そのままパッと空中に霧散した。

一匹、また一匹。ログは無駄のない動きで増殖の根源(親プロセス)となっている個体を特定し、システムの穴を突いた「即死ハック」で消し去っていく。

「ふぅ……。とりあえず指数関数的な増殖は止めた。あとは残党のメモリを解放クリーンアップするだけだ」

ログが剣を戻すと、ギルド内に静寂が訪れた。呆然と立ち尽くす冒険者たち。彼らにとってログの戦いは「魔法」でも「剣技」でもなく、世界の理を直接弄ぶ異質な力に見えた。

「……助かった。あんた、一体何者なんだ?」

ギルドマスターが震える声で尋ねる。ログは眼鏡のブリッジを押し上げ、冷徹に言い放った。

「ただのデバッガーだ。……おい、ギルドマスター。この世界の計算式はバグだらけだ。これから俺が各地の『クソ仕様』を修正して回る。……文句はあるか?」

「い、いや……。むしろ頼む。このままだと、パンを食べるだけで死人が出る世界なんだ……。あんたにすべてを任せるよ」

ログはエクセルの襟首を掴み、ギルドの裏口へと向かった。

「さあ、行くぞエクセル。まずはこの近隣一帯の物理演算の再構築リファクタリングだ。……それから、その『創世の書』。今夜、一晩かけて全ページのコードレビューをするからな。覚悟しておけ」

「ふえぇぇ……! ログくんの説教、終わらないよぉ……!」

二人の後ろ姿が夕日に染まる「はじまりの村」から遠ざかっていく。一人は、世界の理を数式で支配しようとする男。一人は、その理を雰囲気でぶち壊してきた神。

この凸凹なコンビが辿る先には、さらなる理不尽と、想像を絶するクソ仕様が待ち構えている。

「……次は、隣の国の『重力設定』か。なんで『上』に向かって落ちる場所があるんだよ、お前は馬鹿か……?」

ログの怒号が街道の先へと消えていった。


【第1章5話・デバッグログ】

▶ 事象:スライムが撃破時に指数関数的に増殖。ギルド機能が全面停止。

▶ 原因:経験値の加算処理(+1)と個体数の乗算処理(×2)の取り違え(タイポ)。

▶ 対策:ログが特権権限で存在確率を操作し、個体群を一括削除。第1章・クローズ。


【次回予告】

第2章「命中判定の悲劇」──「おい、なんでダメージが『明朝体』か『ゴシック体』かで変わるんだよ! フォントの著作権料を払え!」


【約10万字完結済】月・水・土 21時更新。

※初回5話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。

※本作はAIを執筆補助に使用しています。

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