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第1章 第4話:アライメント(性格)の強制スクロール

「はじまりの村・ポルカ」の広場は、異様な緊張感に包まれていた。武装した自警団が一人の初老の男性を囲んでいる。宿屋の親父、トムだ。彼は手に持った「塩パン」を震わせながら泣き叫んでいた。

「違うんだ! 私は悪党じゃない! ただ、今朝はなんとなく左側からかじりたかっただけなんだぁ!」

「問答無用! 水晶玉の判定は『混沌・カオティック・イービル』だ! お前は今日から、魔王の片棒担ぎだ!」

自警団の槍がトムの喉元に突きつけられる。ログは背後でその光景を眺めながらコンソールを叩いた。

「……おい、エクセル。あの水晶玉、何だ?」

「あ、あれ? 私が作った『道徳心オートメーション・システム』だよ! 悪いことをした人がすぐわかるように、リアルタイムで性格を更新するようにしたんだぁ。便利でしょ?」

「……お前の『悪いこと』の定義を言ってみろ」

エクセルは指を折りながら無邪気に答える。

「えーっとね。パンを左から食べる、靴を右から履く、朝の挨拶で噛む……あとは、くしゃみの音が『クシュン』じゃなくて『ブェッ!』になる、とかかな!」

ログの血管がピキリと音を立てた。

「……お前は、馬鹿か。それは『マナーの悪さ』であって『悪(Evil)』じゃない。お前のせいで宿屋の親父は、パンの食べ方一つで処刑されようとしてるんだぞ」

「えぇっ!? 処刑!? ダメだよ、トムさんのパイ美味しいのにぃ!」

「だったら、そのクソ仕様を今すぐ書き換えろ!」

ログはコンソールのキーを激しく叩き、水晶玉の判定ロジックを強制展開ダンプした。そこには絶望的な条件分岐(Switch-Case文)が並んでいた。


『case EAT_PAN_FROM_LEFT: Alignment = CHAOTIC_EVIL; Wanted_Level = MAX;』


「……なんだこの雑なコードは。Else文がないじゃないか。一度『悪』に判定されたら二度と戻れない、片道勇者仕様ワンウェイ・ロジックかよ」

「だって、悪い子は一生悪い子かなって……」

「更生の余地を与えろ! ……おい、自警団! 待て!」

ログが叫びながら広場の中央へ躍り出た。もちろん、足元は「素数ステップ」を維持したままだ。

「なんだ貴様は! 邪魔をすると貴様もアライメント判定にかけるぞ!」

「やってみろ。……エクセル、今だ。判定変数のアドレスを上書き(オーバーライド)しろ」

「えっ、えーっと、ポチっとな!」

自警団のリーダーがログに向けて小さな水晶玉をかざした。ピカッ! と眩い光が放たれ、水晶玉に判定結果が表示される。

『Alignment: GOD_LEVEL_ADMIN (ERROR)』

「……えっ? 神……管理者……エラー?」

自警団たちが凍りついた。ログがエクセルに指示して書き換えさせたのは、性格のステータスではなく、アライメントそのものを「判定不能な特権階級」に偽装する偽造パッチだ。

「いいか、よく聞け。俺はこの世界の『倫理監査官』だ。宿屋のトムの判定は、システムのバグによる誤認逮捕だ。今すぐ解放しろ」

「そ、そんな馬鹿な……。だが水晶玉の結果は絶対だ……」

「水晶玉が絶対だと言うなら、俺のこの判定も絶対なんだな?」

ログがコンソールを操作すると、村中の水晶玉が一斉にレインボーカラーに発光し「ALL OK!」「EVERYONE IS GOOD!」という文字が躍り始めた。

「……ひ、光ったぁ!? 全員が『聖人君子』になったぞ!?」

「これでよし。……ふぅ。エクセル、とりあえず全員の性格を『中立(Neutral)』で固定した。これでパンをどっちから食べようが鼻をほじろうが、死刑にはならない」

「ログくん、かっこいいよぉ!」

「かっこよくない。場当たり的なパッチだ。……この世界のアライメント判定は、根本から腐ってる。善悪なんてものは数値で測るもんじゃない」

ログは震えるトムを助け起こすと、エクセルの耳を掴んで宿屋へと引きずっていった。

「まずは『道徳の定義ファイル』を全部……いや、消すとクラッシュするな。……よし、全判定結果に『× 0(ゼロ倍)』の補正をかけろ。これで何をやっても『無(0)』だ」

「ログくんのデバッグ、たまに解決方法が過激すぎるよぉ……」

宿屋の一室。ログはこれから向かう「冒険」の過酷さを予感していた。一歩歩けば爆発し、パンを食べれば大罪人。この世界は、神という名の「超初心者プログラマー」が作った、美しくも残酷なクソゲーだった。

「……さて。次はギルドの登録だな。……おい、エクセル。嫌な予感がするんだが、クエスト達成報酬の計算式はどうなってる?」

「えへへ……。依頼主の感謝の気持ちを二乗するようにしたよ!」

「……死ぬ気か? 『感情』という不定形の数値を二乗するなんて、計算結果が『不定(NaN)』になるに決まってるだろ! 報酬が虚数になったら、俺たちは働いても存在が消えるぞ!」

ログの怒号が、宿屋の二階から村中に響き渡った。


【第1章4話・デバッグログ】

▶ 事象:特定の行動によりアライメントが強制的に「悪」に固定される。

▶ 原因:短絡的な条件分岐(Switch-Case)による性格判定システムの実装。Else文なし。

▶ 対策:全判定結果に係数0を乗算。性格システムを実質的にNull化。


【次回予告】

第5話「最初の『最適化』と旅立ち」──「おい、このスライム……分裂の速度が指数関数的だぞ! サーバーが落ちる前に、一括削除パージしろ!」


【約10万字完結済】月・水・土 21時更新。

※初回5話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。

※本作はAIを執筆補助に使用しています。

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