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第2章 第1話:雨の日は誰も当たらない

魔法大国アルカディアへと続く一本道。そこは世界で最も「洗練された戦士」が集う場所のはずだった。

だが、ログの目の前で展開されている光景は、あまりにもマヌケだった。

「くらえ、この……っ! 当たれぇ! 外れた!? なぜだ!」

街道の脇で、一人のエルフの弓使いが叫んでいる。相手は動きの鈍い低級モンスター「ウッドタートル」。距離はわずか5メートル。エルフの放つ矢は、面白いようにカメの甲羅の数センチ横をすり抜けていく。

「……おい、エクセル。あのアタッカー、重度の乱視か? それとも、エイム障害のデバフでも受けてるのか?」

ログは立ち止まり、デバッグコンソールを展開した。エクセルは隣で「おかしいなぁ」と首を傾げながら『創世の書』をパラパラとめくっている。

「変だねぇ。あの子、DEX(器用さ)は255のカンスト設定だよ? 本来なら目をつぶってもハエの目玉を射抜けるはずなんだけど……」

「……待て。そのDEXの値、命中計算式に正しく代入されているか? ソースを見せろ」

ログがコンソールのコマンドを叩き、世界の「物理命中ロジック」を逆アセンブルした。そこには、ログの想定を遥かに超えた「芸術的なゴミ」が記述されていた。


『Hit_Rate = (Base_Accuracy) * (Current_Humidity * 0.01)』


「……絶句した。なんで命中率の決定係数に『器用さ』じゃなくて『現在の湿度(Humidity)』を参照してんだよ!」

「ひえぇっ!? だってね! 弓道って、空気の湿り気で矢の飛び方が変わるって聞いたから! 湿度がたっぷりある方が、矢が『しっとり』当たるかなって……」

「『しっとり』で矢が当たるか! 物理法則をイメージビデオのノリで決めるな!」

ログはコンソールの数値を指差した。今日のアルカディア地方は抜けるような快晴。湿度はわずか15%。

「いいか、エクセル。この式だと、どんなに腕の良い弓使いでも、乾燥した日には命中率が15%に固定されるんだよ! 砂漠地帯に行ったら、誰も自分の鼻の頭すら触れなくなるぞ!」

「あうぅ……。じゃあ、雨の日なら最強になれるよ?」

「雨の日に弓を引くバカがいるか! 弦が緩むだろ! ……おい、弓使い! 止まれ、無駄撃ちするな!」

ログは必死に矢を放ち続けているエルフの少年に駆け寄った。少年は泣きそうな顔で「ボク、才能ないのかな……」と落ち込んでいる。

「少年、お前に才能がないんじゃない。この世界の『神』が絶望的に算数に弱いだけだ。……エクセル、今すぐ湿度の変数を書き換えろ。無理なら、この場所にだけ局所的な異常気象を発生させろ」

「えっ、でも、天候操作魔法はMPをたくさん使うし……」

「いいからやれ! このままだと街道が『外れ矢』の山で埋まって通行止めになるぞ!」

エクセルが泣きべそをかきながら杖を振った。「えいっ! 『局所的・超加湿(加湿器マックス)』!」

次の瞬間、周囲数メートルがサウナのような猛烈な霧に包まれた。視界が真っ白になるほどの蒸気。湿度は一気に100%を突破し、コンソールが計測不能のエラーを吐き出している。

「げほっ、ごほっ! ……おい、エクセル、やりすぎだ! 蒸し風呂にするなと言っただろ!」

「だって、多めの方が当たるかなって……」

だが、効果は劇的だった。エルフの少年が霧の中で適当に放った一本の矢。それは物理法則を無視したような謎のカーブを描き、まるで磁石に吸い寄せられるようにウッドタートルの急所に突き刺さった。

「当たった……! 当たったよ! ボク、やっぱり天才だ!」

「……違うぞ。お前は今、湿度が100%を超えたせいで『絶対命中オートエイム』状態になっただけだ。喜んでる暇があったら、今のうちに仕留めろ」

ログはコンソールを叩き、計算式中の『Current_Humidity』という変数を、強制的に『DEX』のアドレスへとリダイレクトした。

「……よし。これで、腕の良い奴が正しく報われる世界(Ver 1.1)になった。エクセル、二度と『情緒』で計算式を組むなよ。物理エンジンをポエムで動かすな」

「うぅ……。科学の心がないよぉ……」

「科学の心があるから怒ってるんだよ! ……さあ、行くぞ。湿気がすごすぎて、俺の眼鏡がさっきからずっと真っ白だ」

霧の中から抜け出したログ。しかし、城門が見えてきたところで再び足を止めることになった。城壁の上で練習をしている魔導士たちが、なぜか「巨大な筆」を持って、空中に習字のような文字を書いているのだ。

「……エクセル。あの魔法使い、なんで『火球ファイアボール』という文字を、あんなに太い楷書体で書いてるんだ?」

「あ、あれ? それはね、『フォントの美しさ』が威力に関係する設定にしたからだよ!」

ログの眼鏡が、再びピキリと音を立てた。第2章、魔法演算のデバッグは、物理法則よりもさらに「泥沼」の予感がしていた。


【第6話・デバッグログ】

▶ 事象:命中判定の異常な低下(晴天時、達人弓使いの命中率が15%以下に固定)。

▶ 原因:命中率算出に「器用さ(DEX)」ではなく「湿度(Humidity)」が参照されていたため。

▶ 対策:変数の参照先をDEXにリダイレクト。局所的な高湿度環境による暫定復旧。

▶ 備考:神の「情緒的プログラミング」の根絶が急務。


【次回予告】

第7話「フォントサイズで威力が変わる魔法」──「おい、その『爆』って字のハネが甘いぞ! 威力が半減してるじゃないか!」

【約10万字完結済】月・水・土 21時更新。

※初回5話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。

※本作はAIを執筆補助に使用しています。

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