第3章 第4話:夜になると湧いてくる「理不尽な爆弾」
村の冠水も炭鉱の崩落も、ログの「バグ利用」によってどうにか収束した。しかし、本当の恐怖は太陽が立方体の水平線の彼方へ沈んだ時に始まった。
「……おい、エクセル。さっきから、家の外で『カチカチ……カチカチ……』って、メトロノームみたいな音が聞こえないか?」
ログは村の集会所に避難し、コンソールを叩いていた。外は街灯一つない真の暗闇だ。
「あ、あれぇ? それはね、夜を盛り上げるために『暗さレベル』が一定以下になったら、自動でモンスターが生まれる(スポーンする)ようにしたんだよ! ほら、暗いところにはオバケが出るって、定番でしょ?」
ログの眼鏡が、コンソールの警告赤光を反射して不気味に光った。
「なんでモンスターの発生源を『座標』じゃなくて『光度』に直結させてんだよ! これじゃあ、家のクローゼットの中だろうが、ベッドの下だろうが、暗ければどこにでも奴らが湧く(ポップする)じゃねえか!」
「えへへ、サプライズだねぇ!」
「サプライズで家が吹き飛ぶ奴があるか! ……おい、コンソールの数値を見ろ。現在地の光度レベル:0。……来るぞ」
その瞬間、部屋の隅の、影になった何もない空間から「シュンッ」というノイズと共に、一体の奇妙な生物が現れた。全身が緑色の苔のような模様で、四本の短い足があり、何より「顔」が絶望的に悲しそうな、それでいて虚無を見つめるような表情をしている。
「……何だ、このクリーチャーは。……おい、エクセル。こいつの攻撃ルーチンを表示しろ」
「えーっとね、名前は『緑の爆弾くん』! 性格は人見知りで、誰かと目が合うと緊張して爆発しちゃうんだよぉ!」
「人見知りのレベルを超えてるんだよ!!」
ログが叫んだ直後、緑色の生物の体が白く発光し、「シュー……」という導火線が燃えるような音を立て始めた。
「カウントダウンが始まってる! エクセル、伏せろ!」
ログはエクセルの頭を掴んで床にダイブした。次の瞬間、ドゴォォォォン!! という凄まじい爆発音が響き、集会所の壁に直径3メートルの巨大な「立方体の穴」が空いた。
「はぁ、はぁ……。なんて理不尽な設定だ。……おい、エクセル。この『湧き条件』を今すぐ修正しろ。せめて『家の中』は除外しろ!」
「それがね、この世界の『家』っていう定義が、『ドアがあって光度が高い場所』って決まっちゃってるから、松明を置かないと家として認識されないんだよぉ!」
ログは立ち上がり、壊れた壁から外を覗き見た。暗闇の中、村中のあちこちで「シュー……ドカン!」「シュー……ドカン!」という爆発音が連鎖している。村人たちがパニックになりながら松明を持って走り回っていた。
「……わかった。暗闇がトリガー(実行命令)なら、世界を『光』で埋め尽くすしかない」
ログはコンソールを高速で叩き、自作のスクリプトを走らせた。題して、『湧き潰し(ライト・リミッター)マクロ』。
「エクセル、お前の『松明の在庫』データを全開放しろ。……行くぞ、全自動設置だ!」
ログが指を鳴らすと、彼の周囲から無数の松明が弾丸のように射出され、地面、壁、天井、さらには木の上まで、数メートルおきに規則正しく突き刺さっていった。一瞬にして、村は昼間よりも明るい「不夜城」と化した。
「……ふぅ。光度レベル、全域で15を維持。これで奴らのスポーン条件(if文)は真(True)にならない」
「わぁ……! ログくん、星空よりキラキラしてて綺麗だよぉ!」
「綺麗じゃねえ、眩しすぎて眠れないだろ。……だが、これがこの世界の『安全』の代償だ」
ログは眩しさに目を細めながら、ふと村の外れ――松明の光が届かない「暗闇の境界線」を見つめた。そこには、爆発する緑の生物とは明らかに違う、「黒い霧のような人型」が立っていた。その影は、ログのコンソールに一瞬だけ、エクセルの権限を上書きするような奇妙な文字列を残して消えた。
『//admin_auth: SUCCESS』
『//user: "J"』
「……『J』? ……まさか、あいつか?」
ログの脳裏に、前世のオフィスで隣の席に座っていた、あの嫌味な天才プログラマーの顔が浮かんだ。
【第3章4話・デバッグログ】
▶ 事象:低光度エリア(明るさレベル7以下)における自爆型モンスターの自然発生。
▶ 原因:スポーン条件が光度レベルのみに依存し、居住区・室内判定の実装が完全に漏れていたため。
▶ 対策:松明の大量自動設置による「湧き潰し(ライト・リミッター)マクロ」を全域で実施。
▶ 懸念:第三者(コードネーム:J)による管理者コマンドの実行痕跡を確認。正体の追跡を開始。
【次回予告】
第3章最終話「管理者の『消し忘れ』と謎のコマンド」──「……おい、エクセル。お前、自分以外のプログラマーに鍵を貸したのか?」
【約10万字完結済】月・水・土 21時更新。
※初回5話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。
※本作はAIを執筆補助に使用しています。




