第3章 第3話:松明一本で支える超重量
村の浸水問題を「ドア」という名のデバッグで解決したログだったが、休む間もなく次のエラー報告が舞い込んだ。場所は村の北側に位置する「大炭鉱・グリッドマイン」だ。
「ログさん、助けてくれ! 採掘中に『砂利の層』にぶち当たっちまって、上から数万トンの砂が崩れてきそうなんだ! 今、一人の若者が必死に支えてるんだが……」
「数万トンを人間が支える? 物理的に不可能だろ。ステータスが剛力キャラ(STR特化)なのか?」
ログが現場に急行すると、そこには信じられない光景が広がっていた。坑道の奥、天井から今にも崩落しそうな膨大な量の砂利ブロック。それを支えていたのは、屈強な男……ではなく、地面にポツンと置かれた一本の「松明」だった。
「……おい、エクセル。あの松明を見ろ。燃えカスみたいな木の棒の上に、家一軒分くらいの砂利が乗ってるのに、1ミリも燃えてないし折れてもいないぞ」
「あ、あれぇ? それはね、松明を『非透過・不壊オブジェクト』として設定したからだよ! ほら、暗いところで折れちゃったら危ないでしょ?」
ログは膝から崩れ落ちそうになった。コンソールを叩き、砂利と松明の干渉ロジックを解析する。
『if (Falling_Block.collidesWith(TORCH)) { Falling_Block.destroy(); Falling_Block.dropAsItem(); }』
「なんで衝突判定が起きた瞬間に、重力ブロックを『アイテム化』して消去してんだよ! これじゃあ、松明一本あればどんな巨大な山も下から削り取れるだろ!」
「えへへ、お掃除が楽ちんだねぇ!」
「楽ちんのレベルを超えてるんだよ! 構造力学が泣いてるぞ。いいか、本来なら松明なんて砂に埋もれて消えるのが道理だ。なのに、この世界じゃ松明が『物理演算の終着駅』になってやがる」
その時、坑道が大きく揺れた。天井の砂利がさらに数千個、連鎖的に落下を始める。「うわぁぁ! 逃げろ! 埋まるぞ!」と叫ぶ炭鉱夫たち。
だが、ログは逃げなかった。逆に、崩落の直下に向かって突き進む。
「ログくん、危ないよぉ!」
「見てろ、エクセル。バグを制する者は、作業効率を制するんだ。……おい、村長! 松明をあと十本貸せ!」
ログは落下してくる砂利の「予測地点」に、次々と松明を設置していった。するとどうだろう。凄まじい轟音と共に落ちてきた数万トンの砂利が、松明の先端に触れた瞬間に「シュンッ!」という軽い音を立てて消滅。代わりに、小さなサイコロ状のアイテムに姿を変えて、ログの足元にポロポロと転がってきた。
「……ふぅ。一瞬で100スタック分の砂利を回収完了だ」
「な、なんだってんだ……。俺たちが一ヶ月かけて掘る量を、あの兄ちゃんは歩きながら片付けちまった……」
炭鉱夫たちが呆然と立ち尽くす中、ログは松明を一本拾い上げた。
「エクセル、この『松明の無敵属性』は今すぐ修正しろ。ただし、アイテム化のロジックは残していい。……じゃないと、この世界の採掘効率がバグりすぎて、資源価格が暴落するぞ」
「は、はいぃ! 属性を『透過可能』に変更するねぇ……」
ログは、自分が一瞬で更地にした炭鉱の奥を見つめた。そこには、まだ誰も足を踏み入れていない「未生成」の闇が広がっていた。
「……おい、エクセル。あの闇の奥から、カチカチっていう変な音が聞こえないか? それも、規則正しい……まるで『プログラムの実行音』みたいな音が」
「え? 私は何も聞こえないけど……ログくん、疲れすぎじゃない?」
ログは眼鏡の奥の瞳を細めた。このブロック世界には、神であるエクセルすら把握していない、「誰かが意図的に残したコード」が潜んでいる。ログは次の松明を掲げ、さらなる不条理が待つ闇へと足を踏み出した。
【第3章3話・デバッグログ】
▶ 事象:重力ブロック(砂・砂利)が松明に接触すると一瞬でアイテム化し、崩落が停止する。
▶ 原因:松明の当たり判定に「破壊不能」と「衝突時アイテム化」の処理が重複していたため。
▶ 対策:ログが松明を「崩落終着点」に指定し、数万トンの砂利を一括高速回収することに成功。
▶ 懸念:松明除去後の物理挙動が予測不能。構造計算が実質的に存在していない。
【次回予告】
第4話「夜になると湧いてくる『理不尽な爆弾』」──「おい、この緑色の生き物、なんで俺と目が合った瞬間にカウントダウン始めてんだよ!」
【約10万字完結済】月・水・土 21時更新。
※初回5話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。
※本作はAIを執筆補助に使用しています。




