第3章 第5話:管理者の「消し忘れ」と謎のコマンド
松明の光で埋め尽くされた「不夜城」と化した村。ログは、先ほど暗闇の境界線で見た「黒い人影」の正体を探るべく、村の最果て――描画距離の限界点へと向かった。
「ログくん、どこまで行くのぉ? この先はまだ、私が世界を『生成』してない未完成のエリアだよぉ!」
エクセルが息を切らしながら追いかけてくる。ログの目の前には、文字通り「世界の終わり」が広がっていた。ある一線を境に、地面も空も幾何学的なチェック模様に塗りつぶされ、その先は底の見えない「奈落」へと繋がっている。
「……ここだ。エクセル、お前の権限で、この境界線の『操作ログ』を表示しろ」
「えぇーっ、私の日記を見るみたいで恥ずかしいよぉ。……えいっ」
エクセルが空中に投影したホログラム。そこには、彼女がこの世界を作った時の雑な「創造ログ」が並んでいたが、その末尾に、明らかに異質な「一行の文字列」が刻まれていた。
『[2026-03-30 20:30] EXECUTED: //set 0 (Target: Chunk_404_Null)』
『[2026-03-30 20:31] ACCESS_DENIED: User "Excel" is NOT the Owner.』
「……おい、エクセル。この『//set 0』っていうコマンド、お前が打ったのか?」
「ううん、知らないよぉ! 私、スラッシュを二回打つなんて面倒なことしないもん! それに……ほら、私なのに『アクセス拒否』されてる!」
ログは冷や汗を拭った。
//set 0 ――それは、特定の範囲内のオブジェクトを文字通り「無(0)」に書き換える、強力な編集コマンド(ワールド・エディット)だ。しかも、神であるエクセルを差し置いて実行されている。
「……確信した。この世界には、俺とお前以外の『開発者』が潜んでいる。……それも、俺の知っている、最高に性格の悪い奴だ」
ログが奈落の淵を覗き込むと、空中に一つだけ、ポツンと「透明な看板」が浮いているのを見つけた。それは、開発者がデバッグ中に残した、消し忘れの「コメントアウト」だった。
看板を調べると、そこには見覚えのある殴り書きのようなメッセージが記されていた。
『おい、ログ。このクソゲーのデバッグは進んでるか?
重力が予約制だの、松明で山が支えられるだの……
こんな仕様を許容しているお前は、相変わらず「仕様書の奴隷」だな。
私は先に、魔王城へ行く。
"最適化"された世界で待っているぞ。―― J』
「……J。やっぱりお前か、二階堂……!」
ログの脳裏に、前世のプロジェクトで「効率こそ正義、不要なデータ(人間)は切り捨てろ」と豪語していた天才プログラマー、二階堂潤の冷徹な顔が浮かんだ。奴はこの世界のバグを直すのではなく、バグを利用して世界を自分好みに「再構築」しようとしているのだ。
「ログくん……二階堂って、お友達なの?」
「友達なわけあるか。……だが、奴はこの世界の管理者権限の半分を、すでにバックドアから盗み出している。このままじゃ、この世界は奴の独裁的なパッチで、面白みのない『完璧なだけの計算機』にされるぞ」
ログは拳を握りしめ、奈落の向こう側に広がる、かすかなデータの残光を見つめた。
バグだらけで、カクカクしていて、松明一本で山が消える。そんな不条理で、どこか愛嬌のあるこの「クソゲー」を、ログは(腹を立てながらも)守り抜く決意を固めた。
「エクセル、行くぞ。次のエリアは『ソーシャルゲームの街』だ。……確率論を弄ぶ奴らに、真の『乱数調整』ってやつを叩き込んでやる」
「うん! ログくんについていくよぉ! ……でも、ガチャで爆死するのは嫌だなぁ!」
「安心しろ。俺の前では、確率は確率じゃなくなる」
二人は、チェック模様の境界線を飛び越え、次なる不条理――「確率」が支配する第4章へと足を踏み入れた。奈落の彼方で、二階堂Jの残した看板が、松明の光に照らされて静かに揺れ続けていた。
【第3章5話・デバッグログ】
▶ 事象:管理者以外によるコマンド(//set 0)の実行痕跡を確認。
▶ 原因:第三者(コードネーム:J、二階堂潤)によるバックドアの設置と権限奪取。
▶ 対策:ログが敵対デバッガーの存在を認識。追跡を開始。世界の「悪意ある改変」に備える。
▶ ステータス:第3章・クラフト世界編、デバッグ完了。次章へ移行。
【次回予告】
第4章「ソーシャルゲームの街」第1話「排出率0.01%の絶望」──「おい、この宝箱……開ける前に10回スクワットしろ。それで『伝説の剣』を確定させてやる」
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●Note
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【約10万字完結済】月・水・土 21時更新。
※初回5話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。
※本作はAIを執筆補助に使用しています。




