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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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勇者の回2

翌朝、目が覚めた時点で嫌な予感はしていた。

理由は簡単で、

宿の廊下がやけに静かで、

女将がやけに優しく、

そして、外がやけに騒がしかったからだ。

これはもう、何かが始まっている。

宿を出ると、町の広場に人だかりができていた。

嫌な予感が、確信に変わる。

中央に立っているのは――

勇者だった。

一人で。

しかも、地図を広げている。

なぜだ。

「おはようございます、参謀」

見つかった。

いや、向こうから見つけに来た。

「今日は集合が早いですね」

集合していない。

俺は即座に言った。

「俺、参加するって言ってません」

勇者は頷いた。

「ええ、知っています」

知ってるなら、なぜ準備が進んでいる。

「ですが、準備は進めます」

意味がわからない。

周囲を見ると、

知らない戦士、

知らない魔術師、

知らない僧侶、

知らない弓使いが集まっていた。

全員、俺を見る。

やめろ。

勇者が説明する。

「こちら、仲間候補です」

候補という割に、装備が本気だ。

「王都で声をかけました」

早い。

「参謀がいると伝えたら、全員即答でした」

なぜだ。

戦士が言う。

「あなたが、あの参謀か」

違う。

魔術師が言う。

「何もしてないのに評価が上がるって本当?」

誤解だ。

僧侶が手を合わせる。

「神の導きですね」

違う。

弓使いは無言で距離を取る。

賢い。

俺は勇者を見る。

「説明してください」

勇者は胸を張る。

「安心してください」

不安しかない。

「参謀は、後ろで全体を見てください」

「指示は最小限で」

「最悪、黙っていても構いません」

その条件が一番信用できない。

「今回の目的地は、森の浅いところです」

勇者は地図を指す。

「魔物の反応が出ていますが、危険度は低い」

その言葉を信じた結果、何度町が壊れかけたか。

出発。

なぜか、俺も混ざっている。

誰も疑問に思っていない。

森に入って十分。

魔物が出た。

普通に出た。

普通に強そうだ。

剣がぶつかり、

魔法が飛び、

僧侶が祈り、

弓が唸る。

完全に冒険だ。

俺は後ろにいる。

参謀だから。

その時、勇者が叫ぶ。

「参謀、どう思いますか!」

どう思うも何も、

俺は今、根に足を引っかけそうになっている。

だが、転びそうになった拍子に言葉が出た。

「……右、狭くないですか」

それだけだ。

次の瞬間。

魔物が右へ踏み込み、

木に引っかかり、

動きが鈍る。

偶然だ。

完全に。

戦士が叫ぶ。

「今だ!」

魔術師が撃つ。

僧侶が支援する。

魔物、倒れる。

静寂。

全員が、俺を見る。

やめろ。

「やはり……」

勇者が頷く。

「参謀がいると違いますね」

違わない。

帰り道。

戦士が言った。

「次はどう動く?」

聞くな。

魔術師が言う。

「作戦会議はいつ?」

やるな。

僧侶が言う。

「参謀の安全確保を優先しましょう」

余計なことを。

町に戻る頃には、噂が完成していた。

「勇者パーティ、始動」

「参謀、初陣で成果」

「やはり本物」

俺は何もしていない。

本当に。

夜、宿。

女将が言った。

「出発したんだって?」

俺は答える。

「勝手にです」

女将は笑う。

「それ、一番よくないやつ」

知ってる。

布団に入る。

今日の反省。

・断った

・否定した

・説明した

全部無駄だった。

勇者は一人で来て、

一人で決めて、

一人で進めて、

なぜか俺を連れていく。

俺は思った。

参謀の仕事は、

作戦を立てることじゃない。

被害が拡大しないように、

勇者を止め続けることだ。

明日も、たぶん。

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