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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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93/107

モンスター、参謀回

そのモンスターが現れたという報告がギルドに届いた瞬間、空気が一段階だけ重くなった。

「中型以上」

「単独」

「討伐依頼」

この三点が揃うと、この町でもさすがに“日常”とは言い張れなくなる。

掲示板の前には、久しぶりに武器を背負った連中が集まっていた。

剣。

斧。

杖。

ローブ。

やたらと金属音が多い。

その端っこで、俺は何も持たずに立っていた。

理由は簡単で、

俺は参謀だからだ。

いや、違う。

俺は冒険者だ。

武器がないだけで。

「今回の編成なんだが」

リーダー格の剣士が地図を広げる。

魔術師が顎に手を当てる。

僧侶が頷く。

全員、戦う気満々だ。

そして、当然のように言われる。

「参謀、どう思う?」

どう思うも何も、

俺は今朝まで畑の依頼を探していた。

だが、この流れで「知らない」と言うと、

“慎重な判断”とか

“意図的な沈黙”とか

勝手に解釈される。

俺は仕方なく言った。

「……正面から行くと、たぶん派手になります」

全員が頷いた。

なぜだ。

モンスターは森の奥にいた。

巨大なトカゲのような姿で、背中には硬そうな甲殻、口からは時々火花のようなものが散る。

「火属性か」

魔術師が言う。

「硬そうだな」

剣士が言う。

「燃えたら困るな」

僧侶が言う。

全員が、俺を見る。

やめろ。

「……火力は、最初から出しすぎないほうがいいかもしれません」

俺はそう言った。

理由は単純だ。

周りの木が多いから。

だがその一言で、空気が変わった。

「なるほど」

「環境を考慮した判断か」

「さすが参謀」

違う。

常識だ。

戦闘が始まる。

剣士が突っ込む。

魔術師が詠唱する。

火球が飛ぶ。

氷槍が刺さる。

光が走る。

派手だ。

俺は後方で、ただ見ている。

参謀だから。

いや、違う。

途中、剣士が吹き飛ばされた。

モンスターが暴れる。

地面が割れる。

「どうする、参謀!」

俺は叫ばれた。

反射的に言う。

「……足元、ぬかるんでます!」

事実だ。

直前の雨で、地面は柔らかい。

次の瞬間、

モンスターが踏み込み、

自分で滑って転んだ。

空気が止まる。

「今だ!」

誰かが叫ぶ。

総攻撃。

剣。

魔法。

光。

モンスターはそのまま倒れた。

討伐完了。

しばらく誰も動かなかった。

やがて剣士が言う。

「……参謀、あれ、狙ってた?」

狙っていない。

俺は首を振る。

「偶然です」

誰も信じない。

帰還後。

ギルドは騒然とした。

「地形を利用した判断」

「敵の動きを読んでいた」

「無駄な被害が出なかった」

評価が積み上がる。

受付嬢が言った。

「参謀、報告書、どう書きます?」

書けるわけがない。

夜、宿。

女将が言う。

「また活躍したんだって?」

俺は答える。

「滑っただけです」

女将は笑う。

「それができる人が少ないのよ」

意味がわからない。

布団に入る。

今日の反省。

剣も魔法も出た

モンスターも倒した

俺は何もしていない

なのに、

参謀としての評価だけが、確実に上がった。

外で誰かが言っていた。

「次はもっと強いのが来るらしい」

聞こえないふりをした。

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