表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/107

真似される回

翌日。

俺は嫌な予感を抱えたままギルドに入った。

理由は単純だ。

入口付近に、立っているだけの新人がいたからだ。

依頼書も見ていない。

受付にも話しかけていない。

ただ、腕を組み、壁際に立っている。

「……何してる?」

声をかけると、新人は一瞬だけこちらを見て、低い声で言った。

「待っています」

何をだ。

掲示板の前にも、立っている新人がいる。

中庭にもいる。

なぜか畑の依頼の紙の前には、二人いる。

全員、武器を持っていない。

全員、無言。

全員、意味ありげな顔。

嫌な予感が、確信に変わる。

受付嬢に聞く。

「……今日、新人多くない?」

「ええ。昨日の講習の影響ですね」

最悪の単語が出た。

「皆さん、“参謀式”を実践しているそうです」

そんな式はない。

畑の依頼を受けようとすると、先客がいた。

新人Aが畑の入口に立っている。

中に入らない。

追い払わない。

ただ立っている。

農家のおじさんが困惑した顔で言う。

「この人……何してるの?」

新人Aは静かに答える。

「抑止です」

何をだ。

結果。

カラスもどきは普通に来た。

普通に作物をついばんだ。

新人Aは普通に見ていた。

被害:大。

農家: 「……何もしてないよね?」

新人A: 「はい。参謀式です」

違う。

昼前には、町のあちこちで同じ光景が発生していた。

倉庫の前に立つ新人

井戸の横に立つ新人

なぜか宿屋の裏で立つ新人

何も起きない場所で、

何も起きないことを見張っている。

町、ざわつく。

噂が広がる。

「参謀の真似らしい」 「でも全然違う」 「やっぱり元祖じゃないと」

やめろ。

午後、ギルドで緊急集会が開かれた。

新人たちが並ぶ。

全員、どこか誇らしげ。

教官が腕を組む。

「なぜ真似した」

新人Bが答える。

「失敗例だと教わりました」

「それで?」

「失敗を避けるため、同じ行動をしました」

教官、黙る。

俺は頭を抱える。

教官が俺を見る。

「どう思う、参謀」

呼ぶな。

「……俺は、立ってるだけだ」

新人たち、一斉に頷く。

「その“だけ”が難しいんです」

違う。

結論が出る。

【通達】

参謀式行動は、本人以外禁止。

理由: ・再現性なし

・被害拡大

・説明不能

新人たち、落ち込む。

新人Cが泣きそうな顔で言う。

「じゃあ、どうすれば……」

俺は正直に答えた。

「普通に仕事しろ」

沈黙。

その言葉が、一番理解されなかった。

夜。

俺はいつもの畑に立っていた。

理由は依頼だ。

それ以上でも以下でもない。

風が吹く。

カラスもどきが近づく。

俺がくしゃみをする。

鳥、逃げる。

農家: 「やっぱり参謀だ!」

違う。

翌日。

掲示板に新しい貼り紙が増えていた。

【畑の見張り】

※参謀限定

俺はそれを見て、静かに思った。

この町では、

何もしないことが、最も難しい仕事らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ