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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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25/107

観察する回

依頼内容はこうだった。

【貴族屋敷・晩餐会の静観警備】

戦闘不要。

威圧担当。

参謀は壁。

もう嫌な予感しかしない。

「大丈夫」 ミレアが言う。

「人は観測されると秩序を保つ」

「その理論、貴族にも通じるのか?」

「統計上は八割」

二割を引くのが俺だ。

屋敷は豪華だった。

シャンデリア。

赤絨毯。

料理が無駄に高そう。

俺は壁際に立つ。腕を組む。

ミレアは後ろで本。

完璧な布陣。

貴族たちは最初こそピリッとしていた。

「参謀殿が来ているそうだ」 「静かにしろ」

静観、成功。

やっぱ俺、向いてるんじゃ――

ドン。

床が揺れた。

天井のシャンデリアが揺れる。

ざわつく会場。

「なに今の」

二度目。

ドゴォン。

壁が割れた。

外から巨大な影。

出てきたのは。

三メートル級の魔物。

黒い装甲。

赤い目。

明らかに畑向きじゃない。

貴族、悲鳴。

「きゃああああ!」

俺、腕組み継続。

やばい。

足が震えてる。

ミレアが小声で言う。

「想定外」

だろうな。

「静観、継続しますか?」

「するわけないだろ!」

魔物が咆哮。

窓が割れる。

テーブルが吹き飛ぶ。

貴族が転ぶ。

俺の評価が消し飛ぶ。

しかし。

逃げたい。

でも。

貴族の一人が叫ぶ。

「参謀殿が動かないぞ!」

動けないんだ。

「計算しているのか!?」

してない。

「策があるのだ!」

ない。

ミレアが冷静に言う。

「今あなたが走ると、秩序が崩壊します」

「もう崩壊してる!」

「まだ三割」

何の割合だ。

魔物がこちらを見る。

ロックオン。

俺。

終わった。

その瞬間。

ミレアが一歩前に出る。

本を閉じる。

珍しい。

「弱点、胸部中央」

「知ってるなら先に言え!」

「今分析完了」

遅い。

魔物突進。

俺、悲鳴。

だがその瞬間、別の方向から矢が飛ぶ。

屋敷の護衛隊がようやく参戦。

「援軍だ!」

遅い。

混戦。

テーブルが砕ける。

料理が飛ぶ。

ワインが俺にかかる。

最悪だ。

ミレアが言う。

「今です」

「何が!?」

「あなたが指をさせば統率が生まれる」

無茶言うな。

だが。

護衛隊が混乱している。

「どこを狙え!?」

「散開!?」

「いや集まれ!?」

ぐちゃぐちゃだ。

俺、半泣きで叫ぶ。

「胸だ! 胸を狙え!」

言っただけ。

根拠はミレア。

矢が集中。

魔物、怯む。

さらに魔法。

ドン。

爆発。

魔物、倒れる。

沈黙。

会場、静まる。

貴族全員が俺を見る。

「……最初から弱点を」

「やはり静観は策だったのだ」

違う。

震えてただけだ。

ミレアが小声で言う。

「成功率、上昇」

「上げるな」

ギルド翌日。

掲示板に新しい紙。

【緊急時対応参謀(静から動へ)】

やめろ。

二つ名みたいにするな。

受付が笑顔。

「昨日の件、王都に報告が」

最悪だ。

ミレアが真顔で言う。

「理論更新。静観は万能ではない」

「やっとまともなこと言ったな」

「ですが」

嫌な予感。

「あなたが叫ぶと成功率が高い」

「叫び担当にするな」

俺の異世界生活。

静かにしてるだけのはずが、

なぜか本番だけ当たる。

一番怖いのは。

理論が崩れたはずなのに、

評価だけは上がることだった。

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