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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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ヒルダの光回

ヒルダが初めて回復魔法をまともに使った日から、何かがおかしくなった。

本人が一番驚いていたはずなのに。

翌週には、普通にダンジョン補助枠に名前が載っていた。

俺は横にいる。

相変わらず。

小型ダンジョン二回目。

新人剣士が派手に転ぶ。

ヒルダ、即回復。

光が安定している。

前より眩しい。

新人が感動する。

「す、すごい……!」

ヒルダが照れる。

俺は後ろで壁を見る。

壁は今日も硬い。

三回目。

中型スライムが出る。

新人が囲まれる。

ヒルダが叫ぶ。

「下がってください!」

声に迷いがない。

回復。

補助。

ついでに簡易結界。

あれ。

結界なんてあったか。

帰り道。

「覚えました」

さらっと言うな。

「怖いとき、魔力がまとまるみたいで」

才能の開花が畑基準で語られている。

ギルド。

掲示板の端。

【ヒルダ指名・回復補助】

早い。

俺の名前はない。

受付が言う。

「ヒルダさん、最近安定してますね」

俺を見る。

「付き添いの方も」

“の方”になった。

四回目。

討伐寄り依頼。

小型ゴブリン三体。

新人パーティーが焦る。

ヒルダが冷静。

「深呼吸です!」

なぜお前がリーダーみたいになっている。

俺は後ろで深呼吸する。

関係ないのに。

戦闘終了。

新人がヒルダに頭を下げる。

「あなたがいなかったら危なかったです」

俺を見る。

「あの人も……立ってくれてたので」

付け足しみたいに言うな。

夜。

宿。

ヒルダが言う。

「少し、自信つきました」

顔が明るい。

畑では見なかった顔。

俺はパンをちぎる。

薄い。

今日も薄い。

翌日。

掲示板中央。

【中級補助枠・回復要員】

ヒルダの名前。

中央だ。

端じゃない。

中央。

俺の立ち位置は壁際のままなのに。

依頼中。

中型魔物出現。

新人が吹き飛ぶ。

ヒルダ、即座に駆ける。

回復。

防御強化。

指示まで出す。

「左から回ってください!」

俺、左を見る。

誰も俺に言っていない。

癖だ。

戦闘後。

ギルドで拍手。

ヒルダが囲まれる。

「すごいですね!」

「次もお願いします!」

俺は端で水を飲む。

三杯目。

飲みすぎると“水の人”になる。

ヒルダが戻ってくる。

少し申し訳なさそうに。

「……あの」

「置いていってないですよ?」

バレてる。

「俺は」

「立つ専門です」

「それ、強いですけどね」

慰め方が雑だ。

そのとき、受付が言う。

「ヒルダさん、次は上級パーティー補助です」

空気が変わる。

上級。

俺の人生に縁のない単語。

ヒルダが迷う。

一瞬。

俺を見る。

昔みたいに。

「どうします?」

いつもの言葉。

だが今回は重い。

俺は考える。

畑。

薄いパン。

立つ日々。

そして今。

成長していくヒルダ。

俺だけが、変わらない。

「……行け」

思わず言った。

ヒルダが驚く。

俺も驚く。

「でも」

「俺は下で立ってる」

小物宣言である。

ヒルダは少し笑って言った。

「じゃあ」

「私が上で立ちますね」

意味が違う。

数日後。

掲示板中央。

【ヒルダ・専属回復士】

横に小さく書いてある。

※元・畑経験者

そこだけ残すな。

俺は壁際に立つ。

新人が話しかけてくる。

「あの、ヒルダさんの知り合いですよね?」

その肩書きになった。

俺は気づいた。

ヒルダは前に進んだ。

俺は立っている。

だが。

なぜかギルドの空気は優しい。

受付が言う。

「あなたが最初に誘ったんですよね?」

誘ってない。

「見る目ありますね」

ない。

俺は今日も壁際に立つ。

ただし今は、

“ヒルダを見つけた男”という

謎の肩書きつきで。

置いていかれている。

だが。

なぜか俺の評価も、

少しだけ上がっている。

理不尽だ。

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