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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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参謀、実践投入回

王都は結論を出すのが早かった。

早いというか、勝手だった。

「参謀を前線に出すのは、危険すぎる」

会議室で誰かがそう言い切った瞬間、全員が深く頷いた。

誰も「本人はそんな大層な存在じゃない」とは言わなかった。

言えなかった、が正しい。

理由は単純だ。

参謀が“現場にいた”とされる場所は、だいたい壊れていない。

壊れるはずのものが壊れず、来るはずの敵が来ず、落ちるはずの梁だけが落ちる。

しかも、ピンポイントで。

「偶然」という言葉は、会議室から静かに追い出された。

こうして決まった。

参謀は、前線に出さない。

だが、作戦には組み込む。

結果としてどうなったか。

参謀は、その日も町にいた。

畑の端に立って、例のカラスもどきと無言の対決をしていた。

武器なし。

魔法なし。

実績は相変わらず、ほぼ畑。

一方その頃、勇者パーティは前線にいた。

「……参謀は?」

勇者が何気なく聞く。

「今回は来ないそうです」

僧侶が答える。

「そうか……」

勇者はそれだけ言って、剣を握り直した。

その一言だけで、なぜか空気が変わった。

敵は出てこなかった。

本来なら、谷を越えたあたりで群れが来るはずだった。

だが、来ない。

気配はある。

いるはずなのに、いない。

「……警戒してる?」

魔法使いが小声で言う。

「参謀が来る“かもしれない”と思ってるんだろ」

誰かが言った。

参謀は来ていない。

だが、「来る予定だった」という情報だけが、すでに戦場に存在していた。

結局、勇者パーティはほぼ戦わずに任務を終えた。

剣は振られず、魔法は使われず、僧侶は回復魔法を一度も詠唱しなかった。

戦果報告書には、こう書かれた。

――敵勢、参謀殿の不在を確認後、行動を控えたものと推測される。

推測が事実扱いになっているが、誰も突っ込まない。

その頃、本人。

「……今日、来ないな」

畑で、カラスもどきが来ないことを不思議に思っていた。

いつもなら、もう少し理不尽に飛んできて、作物を突いて、逃げるのに。

代わりに来たのは、王都からの使者だった。

「参謀殿」

「違います」

反射で否定する。

「戦果報告です」

紙を渡される。

読んだ。

勝っている。

しかも、やたらと大きく。

「……俺、今日なにもしてないんだけど」

「ええ。それが評価されています」

意味がわからない。

その日の夜、宿屋で女将が言った。

「今日も守ったんだって?」

「守ってない」

「謙遜ねえ」

謙遜の意味も、たぶん間違っている。

翌日から、変化が起きた。

依頼内容が変わった。

【畑の見張り】

【参謀待機(町内)】

待機。

立ってるだけでいいらしい。

「……畑ですらないんだけど」

それでも立っていると、町の外から報告が届く。

「敵が動きません」

「参謀殿は、まだ来ていないですよね?」

「そのはずなんですが……」

来ていない。

来ていないから、勝っている。

王都は満足した。

「やはり、参謀は“切り札”だ」

「使わないからこそ、効く」

本人は、畑の隅で思った。

(何もしてないのに、使われてる気がする)

そして今日も、畑は平和だった。

守ってもいないのに。

参謀でもないのに。

評価だけが、前線で戦っていた。

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