再会1
【シメフクロウ】
今は写し師という職業があって、複製技術が進歩してるから貸出し可能な図書館も少しずつは増えているらしいけど、あの図書館は特殊だもんなぁ。貴重な本も沢山あるし、悪人にとっては喉から手が出るほどってやつよね。
店のなかでコーヒー豆を仕分けながら、幽霊図書館で起きた盗難事件についてブツブツと呟き思考を巡らせている私は、うかつにも来客に気付けず、座っていた椅子を勢いよく倒して立ち上がった。
『ガタッ』
「すみませんお客さま、いらっしゃ……え?」
扉の前に立っていた人物は、とても見覚えのある元メイドの女性だった。
「ソフィア! 久しぶりじゃない、元気そうね!」
「お久しぶりですアミュレットお嬢様、お嬢様も元気そうでなによりです」
もうお嬢様はやめてほしいんだけどなぁ。というかソフィアどうしてまだメイド服を着てるのかしら?
「一年振りくらい? お母さんの具合はどうなの?」
「正確には一年と三ヶ月振りです。母はお陰さまで良好で、いま私は家を離れ【ファルゼンローズ】にて調合師を目指しています」
「フローディアから近いじゃない。そんなに近くにいたのなら会いに行けばって…………調合師?」
蜂蜜バターで有名なファルゼンローズに住んでいた話は少し置いといて。
「調合師に、ソフィアが? なんで?」
「それは秘密です」
なぜ秘密に。ま、まぁいいわ、それよりも調合師を目指すなら確かに学問の街でも有名なファルゼンローズなのも納得ね。ソフィアは姉御肌って感じでいて勤勉で努力家だし、ついでに私よりスタイル抜群だし。私より……。
でも待てよ。学園の調合師専攻って二年制だったはずだわ。
「ソフィア今は学生なんだ」
「いえ、私は一年で卒業することが出来まして。現在は調合師としての活動を待機中です」
なんですと! 二年のところを一年で卒業なんて。スゴすぎるじゃない。
待機中ってのは確か、調合師として本格的に活動するには例え成績が優秀で学業の残りを免除された身だとしても卒業から一年間はお店を出したり研究結果の申請が出来なかったはず。でも似たようなことは出来なくもないらしいけど。
何にせよ、おめでたいわ。カッコいいなぁ。
「……あの、お嬢様。実はお伝えしなければならないことがありまして」
「ん? なになに?」