第三章-今を変える決意-(1)
島の住民たちが、廃れた商店街から団地の火事を見つめている。
住民たちは「おいおい、大丈夫か!?」とか、「こりゃあ、もうダメだなぁ~」とか、他人事のようにそれぞれの感想を述べていた。
――だったら、少しは動けよ。
そう思いながら、自転車で人の群れを光大たちは横切る。
彼は、後ろにいる葦貴と共に自転車で現場へと向かっていった。
そのやりとりの中で、
「花楓の家も被害にあっているだって!?」
そう。葦貴の家の真正面にある花楓の家が全焼しているのだ。葦貴は元々、このことを知らせるために光大の家に向かったということだった。
(花楓……無事でいてくれ!)
焦る気持ちを抑え込み、団地の坂を登って行く。
「ま、まってよ~」
ハァ、ハァと自転車を降りて息を漏らす葦貴。ゲームばかりして、小太りになった体は悲鳴を上げている。
そんな彼に光大は、
「俺は先に行くから、ゆっくり来い!」
と言い、先へと向かう。
「そ、そんなぁ~」
葦貴の情けない喚き声を無視して、必死に自転車を漕いで行く。
少しでも、花楓を戦火から逃がせる時間を稼ぐために――必死に!
※※※
「つ、着いた」
光大は火事現場へと辿りつく。火は、横一列に立ち並ぶ家をすべて焼き尽くしている。
「ひでえ」
思わず声が漏れる光大。
家と家の間にある道路の手前で、ここに住んでいる住民だろうか、パジャマ姿で家が焼けていく惨状を見つめている。その中を光大は、「すいません、通ります」と言いながら、かき分けて、最前列へと進む。
警察が、せっせと虎ロープでその道を封鎖している。
その中で、
「花楓――――――っ!!」
「お、落ちついてください!!」
花楓の母親が必死になって、警察の者たちの壁を壊そうとしている。
「おばさん!」
「こうくん……」
花楓の母親は涙を零しながら、駆けつけた光大を見つめる。
「花楓がどうかしたの!?」
「花楓が……あの子がまだ、家の中に……う、うわあぁぁ――――――っ!!」
花楓の母親はその場で泣き崩れた。母親がこんなことになっているのに、まだ消防車は来ていない。警察も突っ立っているだけ。
花楓の他にも、落ち着かない未来人の消息も不明。
二人の安否が確認されていないことに、ただただ呆れ果てる。
――こんなのが、日本の治安を守っている奴らなのか。
火事で危険だからって何もしない警察に苛立ちを隠せない。
「おばさん、俺に任せて!」
「こうくん……」
花楓の母親は光大を見上げる。
「任せろ」と言わんばかりの態度を光大は見せる。格好つけてなんていない。彼の幼馴染みを助けたいという、強い意志がそこにはあった。
まずはこいつらどうにかしないと。そのためには……。
――光大は背負っているケースから竹刀を取り出し、
「やあぁぁぁっ!!」
警察に向かって勢いよく光大は、竹刀を振り回す!
「うわぁぁっ!」
「こらっ! 危ないじゃないか!!」
警察は避けながらも、光大を抑え込もうとする。しかし、光大は剣道で全国大会までいった実力を発揮し、隙を与えない。
「邪魔だぁぁっ!」
勢いよく横へと振り払う!
「うわぁああぁ!!」
警察たちは、らしからぬ悲鳴をあげながら、竹刀を振る勢いに押されたのか、尻餅をついてしまう。
「こ、コウ……?」
葦貴がようやく姿を現す。彼の体は汗でぐっしょりと濡れている。
「よっしー、走るぞ!」
「え、えぇっ!?」
葦貴は、何も状況が理解できないまま、尻餅している警察たちを後にして、光大に引っ張られるがまま、虎ロープを掻い潜る。
「悪いな」
光大は警察に平謝りして、先へと進む。「ま、待ってよ~」と、葦貴も軽快に走り抜く彼に、必死について行った。




