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深呼吸  作者: 西くん
3/4

絶対禁止的希望

重々しい扉を開け、真っ暗な廊下を記憶力任せに歩く。

「・・・・・っと、ここだな。」

自分の仕事の対象を見つけるのには時間が掛かったが、なんとかたどり着くことが出来た。

「・・・・・」

あと三日。

この部屋にいる少女の命だ。

恐らく、その間も拷問は続くのだろう。

「・・・・・・いっそ、俺の手で殺せば」

この少女は拷問を受ける事は無い。

どうせ死ぬのだ、そのほうが楽だろう。

今でさえ、今日の拷問の痛みで苦しんでいるに違いない。

私は鍵を挿し、ドアを開けた。

そこには、予想の通り背中をこちらに向け、泣きながら呻く少女の姿があった。

その背中には幾つもの刺し傷と、焼けたような後。

何をされたかなど、想像したくも無い。

「あ・・・・・」

少女はこちらに気付いた途端、何かを後ろに隠した。

「・・・・・・何を?」

銃だろうか。

別に撃ってくれても構わないが。

「あ・・・・・ああ」

少女は何かを言おうとしたが、それを止めて即座に『何か』を自分の手首に走らせた。

「・・・・・・おい!やめろ!」

慌てて『何か』を取り上げたが、その行為は止めないほうが良かったのかもしれない。

「・・・・・ご・・・・・ごめんなさい」

少女は泣きながら、決して広くは無い部屋の角へ逃げた。

その『何か』は、私達の軍隊に支給されているダガーナイフだった。

握るタイプの物で、特に力は入らず相手を殺せる物だ。

「なんで、こんな物・・・・・」

誰に聞くでもなく、ただ独り言のような発言だったのだが、

「お・・・・・落ちていたんです」

それに酷く臆病に答えてくれたのは、他でもない異常な程の恐怖感だったに違いない。

「・・・・・自殺か。」

たしかにこれを握って手首に垂直に突き刺せば、簡単に死ねるだろう。

そして、刺した後の痛みは想像を絶するに違いない。

だが、この少女はその覚悟を決めた上での行為だったのだろう。

その行為をまんまと踏みにじったのは、他でもない私である。

「・・・・・・ああ」

なんてことをしてしまったのか。

私は酷く脅える少女に近付いた。

「・・・・・」

なんと言えば良いのか分からないにもかかわらず。

「・・・・・」

目の前の少女の目に映っているのは、さぞかし人間の形をしていないのだろう。

「君に、一つ。」

酷く惨めな見かけの少女に、化物は言った。

「戦争は終わった。あと三日で君はここを出られる。だからそれまで耐え抜くんだ。」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・何を?

・・・・・・・・私は何を言っている。

何を言った?

「・・・・・・ほ・・・・本当・・・・ですか?」

責任感からだろうか、良心からだろうか。

はたまた、ただの偽善に過ぎない。

「勿論本当に決まっている!辛いかもしれないが、なんとか耐え抜いてくれ。」

耐え抜く?

一体何に?

目の前の少女に言ってる言葉なのか?

「・・・・・・!」

・・・・・・ああ。

少女の目に、希望が宿ってしまった。

「あ・・・・・・ありがとうございます!」

「いや・・・・・当たり前のことを・・・・・」

言葉につまり、私は外に出た。

何かに向かって礼を言い続ける、一人の少女を残して。

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