幸福
その日から、彼女の目は変わった。
幾度と痛めつけられようが、彼女の涙ぐんだ目の中には少なからず、希望が混じっていた。
言わずとも、その原因は私にあるのだが。
「・・・・少し・・・・痛かったです・・・・・」
痛ましい傷口を見ている私に向かって、彼女はまるで聖母のような笑みを浮かべた。
その笑みを見るたびに私が思うことは、はてしないほどの罪悪感だったということは彼女には分かるはずもなかったが。
『あと三日でここを出られる』
昨日以前の彼女の目はまるで、死と未来の自分が受けるであろう痛みしか映していなかった。
それを見た私の口から出た言葉は、彼女をもう一度生かすこととなったのだろう。
彼女をもう一度、殺すこととなったのだ。
「ああ・・・・・・・俺は・・・・・・」
私は激しい自己嫌悪に陥った。
彼女は確かに、三日後には違う世界に居るのだろう。
そしてそこには、ご先祖達が待っているということも真実には違いない。
しかし、その意味で言った、と彼女に言えば、この纏わり付くような罪悪感からも逃げられるというのか。
それもまた違う。
この罪悪感は彼女を生かしてここから出さなければ、私に一生絡み付く。
「・・・・・・処分か」
あの男の話によれば、三日後には彼女は処分される。
それはもうこの病院には『必要ない』ということだ。
ならば、その不用品を私が拾えばいい話ではないのだろうか。
「・・・・・・やってみるか」
私はあの忌々しい白衣を纏った化物の元へ向かった。




