第9話 平穏なひととき
あれから騒音がしなくなり、部屋の様子を見に行くレン、家の中は荒らされ、机にうつ伏せのまま動かないクレハとメア、椅子に座り気持ちよさそうに寝ているヒューナとアマネ
「....よし、寝よう、俺は何も見なかった」
翌日~
「うう...頭痛い...」
「最悪よ...やっぱあの時帰っとけば良かった...」
頭を抑え青白い顔色になっているメアとクレハ
「んん...?もう朝...?ライちゃん...起きて、起きてってばー」
眠っているヒューナを無理やり揺さぶるアマネ、頭痛が酷い中、メアはレンの言葉を思い出した...ヒューナは寝起きが悪いという事を...
「うるっっさい!!!私に命令するな!!!」
身体強化の魔術を使いアマネの頬にフルスイングでパンチをするヒューナ
殴り飛ばされた衝撃で木製の壁にアマネがめり込み、壊れた壁の中に頬が腫れたアマネが白目になり気絶している
あまりにも衝撃的な出来事で二日酔いが一気に冷めるメアとクレハ
「ア、アマネ...?大丈夫?」
「こりゃダメね、完全にのびちゃってる...」
「お前達まだ酔っ払ってんのか?もう朝だぞ?」
物音を聞きつけレンが部屋から出てくる
「はぁ...壁直すのこれで何回目だよ...アマネも馬鹿だな、対策を忘れてんのか?」
「た、対策...?」
メアとクレハは同時に首を傾げる
「そうだ、眠ってるヒューナを無事に起こすにはこれが必要なんだ、まあそれでも失敗する時もあるがな」
そういうとレンは部屋のクローゼットから、小さい箱に入ったオルゴールを取り出す
「それってオルゴール?綺麗な箱...」
「結構古そう...相当年季が入ってるわね」
「これは俺と姉で作ったオルゴールなんだ、気に入ってくれたのか、これを聞くと大抵はヒューナの機嫌は良くなるぞ?」
レンはオルゴールのネジを回し、部屋の中に綺麗な音色が響き渡る
「ん?この音色...どっかで聞いた事あるよな...?」
クレハは首を傾げ思い出そうとする
「これは戦いに出る騎士団の無事を祈る為に、聖歌隊が歌う曲なんだ、騎士に憧れていたクレハは恐らくこれを聞いたから聞き馴染みがあるんじゃないか?」
「そう!それよ!それ!懐かしいー!」
「...んぅ...?アリナ...?レン...?」
オルゴールを聞きヒューナは目を覚ます
「おはよう、ヒューナ、水飲むか?」
「夢だったか...水は大丈夫だ...これくらいなら治癒魔術で治る...私は何故酒を飲んだんだ...?全く覚えてない...それに何故そこの壁にアマネがめり込んでるんだ?」
「いつもの寝起きの悪いヒューナがアマネを殴り飛ばしたんだ」
「またやってしまったか...寝起きの悪さだけはどうにもならん...」
「また直せばいいさ、今日はどうする?騎士団の片付けをするなら俺も手伝うぞ」
「構わんよ、魔術を使えば簡単に華麗に掃除出来る、その後の建て直しは手伝って欲しい、レンとメアは久々に2人でどこか遊びに行くといい、ここ最近色々あったし、ゆっくり出来なかっただろう?」
「え!ヒューナ!いいの!?やったー!レン君どこ行く?」
「メアの好きなところでいい、俺はついていくよ」
「そうと決まれば早速行こ!行こ!」
レンの手を引っ張り家から出ていくメア
「あの子って結構嵐みたいに騒がしい子ね...私もこの部屋を掃除してから帰ろうかしら」
「いや大丈夫だ、さっきも言ったが魔術を使えば簡単に綺麗に出来る、おいアマネいつまで寝てるんだ起きろ」
アマネに治癒をかけて、腫れた頬が治り目を覚ます
「あ、あれ?私何してたんだっけ?」
「酔って壁を壊したんだろう?全くお前という奴は」
「(アマネのせいにしたわね、このエルフ)」
ジト目でヒューナを見るクレハ
「んじゃ、私は帰るわね、建て直しなら私も手伝いから呼んで頂戴?」
「ああ、助かるよ」
振り向きざまに手を振りクレハも家から出ていく
「さて、私達も行くぞ」
「はいはい」
部屋を片付け、転移魔法で騎士団へ向かうヒューナとアマネ
繁華街~
「騎士団の件があるから、街の雰囲気が暗いわね、そりゃそっか悪魔が来たら戦える人がいないんだもんね」
「いざって時は俺達でやるしかないが、俺やメア、そしてクレハも悪魔との実戦は経験がないからな...」
「アマネは?あの人もレン君と同じで無能力で、騎士団の人ではないし実戦の経験ないんじゃないの?」
「いや、アマネは過去に悪魔と戦った事がある、あいつは元兵士だったらしい、ただ騎士達が殺した悪魔の一部を勝手に回収して実験に使っていた事がバレて騎士団から追い出されたんだ」
「昔から変わんないのね、あの人...でも戦えるって事は強いの?」
「アマネは見かけによらず結構強いぞ?魔術メインだがな、魔力も無い普通の人間が魔術石と研究するだけ魔術を扱えてしまうなんて有り得ない事だ、それをヒューナは興味を持って、あの2人は仲良くなったって感じだな」
「確かにアマネが家に来てから、あの2人ずっと一緒にいるわね、殆どお説教しかされてない気がするけど」
「なんだかんだ言ってヒューナはアマネの事が大好きなんだよ」
「ヒューナってツンツンしてる割には、結構愛情深いわよねー、でもこんな事言ったら、馬鹿者、私は正しい道に導いてるだけだ...とか言いそう」
「はは、間違いないな」
その頃ヒューナとアマネは~
「クシュン!」
「あら、ライちゃんのくしゃみ可愛い〜誰か噂してるのかも〜?」
「つまらん事を言う暇があれば、さっさと手を動かせ、ほらそこにまとめてある木材を捨てにいけ」
「人使い荒い〜ライちゃんの鬼〜...」
「そうか、頑張った褒美として魔術石でも渡そうと思ってたが残念だ」
「他に何か捨てるものある!?私なんでもするわよ!!」
「ふふ、張り切るのは良いが怪我をするなよ?」
「このくらいへっちゃらよ〜〜!!」
再びレンとメアの会話に戻る~
「あら、貴方達こんな遠くまで遊びに来てたのね?」
「クレハか、帰ったんじゃなかったのか?」
「帰ったけど、何もすることないから射撃の練習でもしようと思ってたところよ」
「クレハの射撃は見たこと無かったな、見せてくれよ」
「いいけど...」
クレハはメアの方をチラ見する、メアは2人っきりで出かけたかったようで頬を膨らませ不機嫌そうにそっぽ向いている
「き、今日は辞めといた方がいいんじゃない...?ほら2人で出かけに行ったんでしょ?」
「2人より3人の方が楽しいだろ?メアもいいだろ?」
「えっ!?も、もちろん!人数が多い方が盛り上がるしねっ!」
レンに不機嫌そうな顔を見せたくないのか、笑顔を見せる
「そ、そう?ならいいけど...ここからちょっと歩いた所に古い教会があるの、そこなら誰も近寄らないし銃声も聞こえないから練習に丁度いいのよ」
「よし、んじゃそこに行こう」
教会~
「折角だし貴方も銃を使ってみる?」
クレハは両手に2つのハンドガンを生み出し、レン達に渡す
「これが銃か...いつも剣しか使ってないしな」
「そう身構えなくてもいいのよ、これくらいなら誰でも扱えるわ、手始めにそこにある瓦礫を狙ってみて」
「よし!」
身構え撃つが、全く狙い通りに当たらない
「最初はそんなもんよ、当てられる方が珍しいわ」
「こんな難しいとは思わなかったな...メアはどうだ?」
「ぜーんぜん当たらない、こんなので相手を倒すより私の移動で奇襲した方が楽だわ」
「まあ使い機会はなさそうね、でももしかしたら使う時が来るかもしれないから練習して損はないわよ?」
「それもそうだな」
数時間程練習した後、数発ではあるが狙い通りに撃てるようになった2人
「だいぶ様になってきたじゃない、お疲れ様」
「腕上げっぱなしだから痛いー...」
「だが良い訓練にはなった、ありがとうクレハ」
「礼なんかよしてよ、今日は帰りましょう」
クレハと別れ、家着くレンとメア
「帰ったか、良い気分転換になったか?」
「ああ、クレハとも偶然会って銃の扱いを学んだりしたな」
「ん...?あれ...今日ってメイドちゃんとレン君の距離を縮める為のお出かけだったんじゃ...ムグッ!」
「馬鹿...!余計な事言うな...!あいつらに聞かれたらどうする!」
アマネの口を抑え小声で囁くヒューナ
「ん?アマネなんか言ったか?」
「い、いやいや!なんでもなーい!私ご飯作ってくるね〜」
「そ、そうだ!なんでもないぞ!私も手伝うとしよう!」
慌てたようにコソコソ逃げるアマネとヒューナ
「なんだったのかしら...?」
「さぁ...?」
「そうそう、七日後から建て直しの作業に入るから、お前達と手伝ってくれ」
「はーい!」
「ああ、わかった、俺からクレハに伝えておくよ」
「助かる、さあこれから私達で、この都市を守っていくぞ、皆気合い入れろよ!!」
「了解!!」
新生騎士団の誕生、この出来事がレンを狙う謎の人物達にとって、どのような印象を与え、どのような行動をとってくるか誰にも分からない...




