第10話 力の差
七日後...騎士団の立て直しに入るヒューナ一同
ヒューナとアマネの魔術で資材を用意し、メア、レン、クレハで各役割を果たし、順調に完成に近づいていった
「良い感じになってきたわね、訓練部屋、司令室、食堂、広場、模擬戦専用の森、これだけ揃えれば十分じゃない?」
「そうだな、流石騎士に憧れていただけあって、何が必要か理解してるなクレハ」
「当然よ、ずっと憧れてたんだから」
更に月日が経ち、まだ不完全な場所もあるが建物自体は完成した
新生騎士団、司令室~
「できたー!かんせーい!!」
「やっと完成したわね、後は他にも衛生兵とかナビゲーターがもう少し欲しいところね...」
「我ながら良い出来ね〜...ってあれ?ライちゃんとレンちゃんは?」
「すまない、待たせたな、騎士団の完成とは別に私とレンで色々な人をスカウトしていたんだ、2人しかいないが来てくれたぞ」
「やあ、久しいな諸君」
「レイチェル!あれから私もう順調よ!」
「いや〜ん!チェルちゃん久しぶり〜!元気してた〜?相変わらず小っちゃくて可愛い〜!!」
「この人程の治癒が出来る人なら心強いわね」
「辞めろ暑苦しい近づくな」
レイチェルに抱きつくメアとアマネ
「さあ、次の人を紹介する、さあ入ってきてくれ」
「こ、こんにちは〜...うわわっ!!」
何も無いところでつまづく1人の女性
「大丈夫か?」
倒れた女性を起こすレン
「お、お気遣いなく〜...」
「自己紹介をしろアルア」
「あっ!申し遅れました!アルアといいます!皆様を導くナビゲートをさせていただきます!ふつつか者ですがよろしくお願いしますっ!」
「こいつはアルア、少しドジをする時があるがナビゲートをするには逸材の人物だ、頭脳で言えばアマネと良い勝負かもしれんぞ?」
「わ、私と同じくらい?ってことは....ねえねえ貴方実験とか生物に興味あるかしら??」
息を荒らげ興味津々にアルアに近づくアマネ
「えっ、えーと...」
「おい困ってるだろ、離れろ、というか貴様まだ懲りてないのか?」
「じ、冗談よ〜、アマネちゃんジョークっ!あはは....」
「全く...さて、これで仲間は7人となった、そこで私から提案がある」
「ちょっと待ってくれ、俺、ヒューナ、メア、アマネ、レイチェル、アルア...6人じゃないか?クレハの意見も聞かないで勝手に仲間にしていいのか?」
「何言ってんのよ、そりゃ初対面は分からなかったけど、ここを建て直す期間ずっと貴方達の事を見てきたわ、戦って実力なんか見なくたって貴方達が強いって事は分かったわ、それにこの期間ずっと楽しかったの、だから私も仲間に入れてちょうだい」
「大歓迎だよ、改めてよろしくな」
レンとクレハは互いに頷き握手を交わす
「正式にクレハが仲間になったし、話を戻してもいいか?私の提案というのが、結界は破られないが破壊を試みようとする悪魔がいるのはお前達も知ってるだろう?そこでレン、メア、クレハの3人で結界に近づく悪魔を駆除して欲しいんだ、勿論訓練は今まで以上に過酷になる...やってくれるか?」
「任せて、レン君と一緒なら何でも出来るわよ」
「やっと悪魔を倒せる...腕が鳴るわね」
「2人ともやる気満々みたいだな、俺も賛成だ、ただ俺達が結界の外に出るってどうやるんだ?結界を消す訳にもいかないだろ?」
「その点は問題ない、人1人通れるスペース分の結界を解除する、お前達はそこから通り、すぐに結界を張り直す、そして駆除が終われば先程言った工程を繰り返すだけだ」
「そんな1人分の結界を消すって出来るの?」
不安そうにメアが質問する
「ああ、私とアマネで結界石を使い実験を何度も試したから問題ない」
「そうと決まれば、訓練するわよ、レン、メア!」
「まあ、待て、訓練の内容についてだが、お前達3人と私で戦ってもらう、肉体が限界を迎えたらレイチェルに治癒して貰い続け、私が納得するまでやってもらうぞ」
「さ、3対1ってヒューナが不利じゃないの?いくら強くたって...」
「まあそれは戦ってみてからのお楽しみと言うやつだ、アルアとアマネは試運転がてら都市、結界外付近を調べてみてくれ、魔術回路を組み込ませているモニターがあるから、そこから見れるはずだ」
「はーい、どれどれ...お!良く見える!これなら過去に見回りをしてきた兵士の役割も補えるわね」
「こちらも良く見えます!良好です!」
「...おいヒューナ、私の役割はなんだ?」
退屈そうに椅子に座るレイチェル
「お前は、いつも通りで良い、まだ完成してないが騎士団の中に診療所もあるぞ、外で戦う3人の治癒の役割や今まで通り市民達の治癒をしてもらいたい」
「構わんが、私の診療所は都市の中心部にあるんだぞ?ここに診療所を配置したら、距離のある家に住んでる人間が困るのではないか?」
「無論問題ない、都市の至る所に診療所まで転移可能な魔法陣を配置してある、怪我人はそこからここに来てもらい、仮に良からぬ連中が来たとしても私が天誅を下す」
「何から何まで用意してあるな...まあ何も問題が無いから良しとするか」
「さあ話は終わりだ、お前達は早速私と戦ってもらう、広場に集合だ」
騎士団、広場~
「よし、とりあえず3人まとめてかかってこい」
「え、1人ずつじゃなくて?」
「そうよ、3人一気に戦ったら分析が難しくなるんじゃないの?」
「馬鹿者、外に出て戦う時は3人一緒なんだぞ?連携が取れた動きをしてないと戦況は一気に変わる、そこを重点的に鍛える」
「そういう事ね、んじゃレン!メア!行くわよ!」
クレハの合図と共に2人が飛び出しヒューナに襲いかかる
1時間後~
「ちょっとクレハ!私達もいるんだからバカスカ撃たないでよ!!レン君に当たったらどうするのよ!!」
「メアこそ、ちょこまかと動き回らないでよ!あんた動きが早すぎて連携もクソもないわよ!」
「ま、まあ2人とも...喧嘩するな...」
「私の思った通りだな、レンのように無能力同士が集まり連携を取る動きは比較的簡単なのだが、能力者が2人もいると話は変わってくる、相手が遠くにいる場合は先にクレハが攻撃、撃ちこぼした相手をレンが討ち取る、更にそれらを討ち逃した相手をメアが討ち取る、このような動きをしなければ、まず連携など不可能だろう」
「...とにかくそれで試すしかないわね、そのやり方でやってみるわよ!」
更に1時間後~
「ふむ、まだ覚束無いが連携としては形になってきたな、次の行動パターン...といきたい所だが今日は終わりにしよう」
「うう、体は治癒され元気なはずなのに、なんか凄く疲れた...」
「同感...早く横になりたい...」
「はは、そういえばお前達はヒューナの訓練は初めてだったな、俺の時なんか今より倍以上きつかったぞ」
「これよりきついの...?私耐えれるかしら...」
弱気になってるメアにヒューナが耳打ちをする
「この程度で弱音を上げたら、レンに愛想尽かされるぞ?訓練をして経験を積み重ねれば、あいつに良い所を見せられるぞ?」
「!!」
どんよりしていたメアの表情が一気に、はっきりとした表情に切り替わる
「凄いなヒューナの奴、一体メアに何を言ったんだ?」
「まぁー...レンは知らなくていいんじゃないかしら?(どうせレンに良い所見せられるとか言われたんでしょうね...)」
「??まあ別にいいが...」
4人が司令室に戻ろうとした時、騎士団の中に警報とアマネのアナウンスが響く
「ライちゃん大変!悪魔でも人間でもない、変な反応してる奴が猛スピードでこっちに来てる!!」
「何!?お前達3人は早く中に避難しろ!急げ!」
「ライちゃんダメ!もう間に合わない...!」
騎士団の入口を破壊し、砂煙に紛れ1人の女性が近づいてくる、そう...タイプΦだった
「.........姉ちゃん.......?」
「まずい!メア!!レンを担いで早くどこかに行け!!」
「い、いや....あの人....」
メアは腹を蹴られ異常な強さを見せつけられたトラウマが植え付けられ足が震え動けなくなっていた
「ヒューナ!!私が2人を避難させる!あいつを足止めしてちょうだい!!」
「クレハ!すまない!頼んだ!!」
「レン!しっかりしなさい!!メア立てる!?私が担ぐから早くどこか逃げるわよ!!」
「姉ちゃん!!俺だ!レンだよ!!姉ちゃん!!!」
「え!?お姉さん!?...でも今は行くわよ!!」
「離せ!!今行くぞ!!姉ちゃん!!」
「チッ...ごめんねレン!悪く思わないで!」
クレハは麻酔銃を生み出しレンのうなじに撃ちレンはぐったりしたように動かなくなる
大好きなレンがそんな目にあっても、メアは恐怖で怯えそれどころでは無かった
「クッ...2人同時はやっぱり重い...ヒューナ...耐えてよね...!!」
急ぎ森の中へ姿を消すクレハ達
「...お前がタイプΦという奴か?丁度いい聞きたい事が山ほど...ッ!?」
話終える前にタイプΦはヒューナの顔面めがけて蹴りをいれようとしたが間一髪躱すヒューナ
「どうやら、話し合いは出来ないようだな...ならばお前を潰す」
「エルフごときに何が出来る?其方に用はない、私はあのお方に用がある、さっさと往ね」
「あのお方?なんだそれは?(フィネガンとメアの言う通りだ...あれは紛れもないアリナだ...だが何故...?)」
「往ねと言ったはずだ」
「なっ...!?はやい...グハッ...!?」
タイプΦの左足が槍に変化し、目にも止まらぬ速さでヒューナの腹部を貫く
「馬鹿な姫君だ、やはりエルフは邪魔な存在、直々に我がここを破壊したと言うのに、性懲りも無くまた建てるとはな」
「ライちゃん!!!!テメェェェェェェ!!!!!」
急いで広場に来た、アマネは走りながら怒りの形相で魔術石を使い魔法陣を生成しようとするが、本能が危機を察知したのか足を止めてしまう
「なんだ?汝は魔術を扱えるのか?人間の分際で...それに危機管理能力もあるようだな、自分の首が飛ばされる未来でも見えたか?」
「(なんなのこいつ...勝てない...勝てる気がしない...まさか...こいつがタイプシリーズ....なの?)」
「ふむ、黙りか、まあいい貴様もこのエルフと同じ所へ...む?」
足に突き刺さり動かなくなったヒューナの体が光り輝き広範囲の封印魔術が発動した
「すなわち罠か、封印の術、実に妙なるかな...」
「私をあまり見くびっては困るな?アマネ反撃だ、封印がある今がチャンスだ、奴を拘束するぞ」
「ライちゃん...生きててよかった...グスッ...えぇ!任せて!」
涙を拭きヒューナと魔術を唱え始めるアマネだった突如封印魔術が破壊され、唱え始めていた魔法陣も破壊される
「なに!?」
「嘘...?ライちゃんの魔術が...」
空高くから赤黒い鎧を纏った男が着地し地面には大きな亀裂が走る
「Φを封印するとは、大した魔術だな...?だが足りねえな?Φ、俺も加勢する、ついでにここも破壊しろ」
「やめろ!!!」
森の中からレンが飛び出しヒューナ達を守ろうと剣を構え鎧の男の前に立ち塞がる
「レン!!」
「レンちゃん!ダメ!!逃げて!!」
「ほう?貴様達はレンとお呼びになっているのか、この方に相応しくない名だな、邪魔だ大人しくそこで眺めていろ」
鎧の男ヒューナとアマネに謎の魔術をかけ、2人は動けなくなり、声も出せなくなっていた
鎧の男とタイプΦはレンの前で膝まづく
「お初にお目にかかります、我ブルグと申します、ご挨拶が遅れて申し訳ございません」
「我タイプΦと申します、お会いできて光栄でございます」
「またそれかよ...だから何なんだよ、それは!!!何故俺を慕う!?それにお前は誰なんだ!!何故姉ちゃんの姿をしているんだ!!答えろ!!!」
「ブルグ将軍、やはりルディアの報告通り、タイプΣは役割を果たしていないようです」
「丁度良い、では私からご説明致します、貴方は我々悪魔の王が捕虜として捕獲した、かつて人間達の女王に値する女との間に生まれた存在なのです、ですがエルフと人間が協力した事により悪魔は退かざるを得ない状況になり、タイプΣと貴方様を逃がし、そこで我々の事、貴方が何者なのを説明するようにタイプΣに任せたのですが、この有様です、他には何かお聞きしたい事はございますか?」
「俺が...悪魔と人間の子...?嘘だろ...じゃあ...そこにいる姉ちゃんも...?」
「ん?姉?...ああ、そういう事でしたか、恐らく貴方様の姉こそタイプΣと見受けられますね、何故姉として振る舞い、使命を放棄したのか不明ですがな」
「え..?姉ちゃん..がタイプ..Σ...?...俺が...悪魔..俺..が..」
その瞬間レンの周囲から黒いオーラが出現した
「む!?これは一体...?おいΦなんだこれは?」
「分かりません、将軍ここは一旦退きましょう、何か嫌な予感がします」
「逃げる気か...?貴様ら」
レンがゆっくり歩み寄り剣を抜く、その瞬間レンの目の前の空間に亀裂が入る
「おお!それこそ我が王の力!!さあこの忌々しい人間の巣を飲み込んでくだされ!!」
「卑劣なる人間達の繁栄に終止符を」
「私が刈り取るは貴様らのみ、破滅を望めば全てが終わるだろう」
そう言うとレンは剣を一振する、その直後にレンの周囲にある空間、物質、魔術、概念、全てを斬り裂き、境目から底が見えない闇が覗かせる
「お、お待ちくだされ!我々は貴方の下僕です!思い出してくだされ!」
「寸」
タイプΦが、一言呟くと一瞬でブルグと共に消え去ってしまった
魔術が斬り裂かれ、自由になったヒューナ達は急ぎレンを魔術で静め、その場でレンは倒れる
倒れた瞬間、境目も無くなり辺りは静寂に包まれた
「ライちゃん...これからどうしていけばいいの...あんな事聞いちゃったら...私...」
「...レンをレイチェルの所へ連れてってやれ、暫く何も考えたくない...」
森の中からメアとクレハが走ってくる
「レン君!」
「レン!大丈夫!?起きなさい!...良かった...眠ってるだけのようね...アマネ、何があったの?それにあいつらは?」
レンを抱き抱えたクレハが聞く
「逃げたわよ....ごめん、今は何も話したくない...チェルちゃんの所にレンちゃんを連れてってあげて...」
「アマネ....?」
絶望したような表情をしたアマネとヒューナはふらついた足取りで騎士団の中へ入ってく
「大丈夫か、お前達」
残されたメア、クレハ、眠っているレンの元にレイチェルが来る
「レイチェル、何があったの?見た事ない表情してたわよ...あの2人...」
「私は戦闘に向いていないから、離れた所で見ていたせいで、会話までは聞き取れなかったが...目で見た事は話そう」
メアとクレハに先程の事を説明するレイチェル
「レンが変な力を使うだけじゃなく、ヒューナ達を拘束できる程の魔術...メアから聞いたけど、レンのお姉さんなの?あいつは」
「正直私にも分からない、こいつの姉...アリナとは数回しか会った事しかないが、見た目や立ち振る舞いは間違いなく本人だ」
「ヒューナ達に聞いてみないと分からないわね...」
「私、聞いてくる!」
立ち上がり中に走ろうとするメアをレイチェルが引き止める
「おい待て、あいつらの気持ちも考えてやれ、今は休ませてやる事が先だ、お前達もとりあえず休め、レンは私が連れていく」
レンを魔術で浮かし、レイチェルは去っていく
残された2人は話す事もなく、ただその場にいる事しか出来なかった




