第11話 悲しみの連鎖
Φと共に、謎の空間に転移するブルグ
「危なかったな、流石の俺でもあのお方を力を受ければ無事じゃすまねえだろうな」
「そうですね、あのお方の様子を見る限りΣは既に死滅していると考えられます、どこ探しても見つからない訳ですね」
「全くΣは余計な事をしやがって、人形風情があのお方の姉として振る舞えると思っていたのか?」
「...そうですね」
「あ?どうしたΦ?何か言いたそうだな?」
「いえ、あのお方に会えた喜びを噛み締めているのです」
「ハッハッハッ!それはそうだろう、今回は邪魔が入ったが次こそは連れて帰るぞ」
「承知致しました」
騎士団~司令室
あの件から丸一日たった今、アマネとヒューナは俯いたまま食事も取らず、一言も話さない状態になっていた
「ねえ、いつまでそうしてるつもり?司令官やナビゲーターの貴方達がそんなんでどうするのよ」
クレハの言葉に何も反応しない2人
「いい加減にっ...」
「ま、待ってください!ヒューナさんもアマネさんも色々あって気持ちの整理が着いてないだけなんです!」
「だからって、あれからずっとこの調子じゃ無理よ!」
「いいのよ、アルアちゃん...そんなに聞きたいなら教えてあげる...メイドちゃんも連れてきなさい」
「やっと喋ったわね、今呼んでくるから待ってて」
別室で眠っているレンにずっと寄り添っていたメアを無理やり司令室に連れてくるクレハ
「なによ、どうせ何言っても話してくれないんだから、ここに来たって意味ないじゃないのよ」
「今からアマネが話してくれるみたいよ」
「率直に言うとね、レンちゃんは悪魔の王と昔捕縛されたお姫様の子供よ」
「え......?」
時が止まったように動かなくなるメア
「ちょ、ちょっと待って...つまりレンは見た目は人間だけど悪魔の血が流れてるって事なの...?というかそもそもその話って変でしょ!この都市に姫とか王なんか、いなかったわよ!少なくとも私はそんな存在知らないし、親からも聞いた事ないわよ!?」
慌てふためくクレハに口を重たくしたヒューナが答える
「....当然だろう..姫が連れ去られたのは300年も前の話だからな」
「300年前!?尚更おかしいじゃない!だったらなんでレンの見た目が若いのよ!!エルフや悪魔じゃ.....!」
「流石のお前でも理解しただろ、レンは人間では無い...って事なんだよ...」
「いや!!!もうやめて!!聞きたくないよ...そんなの...」
涙を流し床に座り込んでしまったメア
「...でもやっぱり変よ、貴方はレンの親代わりだったんでしょ?だったら歳をとるのが遅いレンに気づいてるはずじゃない」
「全部....全部嘘だったんだ...」
拳を握りしめ大量の涙を流すヒューナ
「う、嘘ってなによ、どういうことなのよ」
涙を流し嗚咽するヒューナの背中を撫でるアマネだったが、アマネも同じく大量の涙を流していた
「ライちゃん...もう話さなくていいよ...大丈夫...私がずっと傍にいるからね」
「アマネまで...教えてよ...」
「さっきも言ったでしょう...?嘘だったのよ、ライちゃんがレンちゃんとアリナちゃんを拾った時から全部...魔術で作られた偽物の記憶って事よ...」
「偽物...!?なんで...?」
「さっきレンちゃんが無意識に使った謎の技でね...理屈は分からないけど魔術の効果を打ち消したみたいでね...後々になって今までの記憶が魔術で操られてたってのが分かっちゃったの..」
「そんな...そんなのって...」
机を叩き大声でヒューナは泣きながら叫ぶ
「全部嘘だったんだよ!!!あいつらがボロボロで森に彷徨っていて、私と出会った時...幼いアリナは私に魔術をかけていたんだ...今まで楽しく3人で過ごしていたのは幻で、実際の私はただ操られ2人を育てる人形のような日々を送っていたんだよ...もう嫌...私が何か悪いことをしたというのか...?なんでこんな...」
今までのヒューナとは想像つかないくらい精神が弱ってしまい
「少なくとも私が出会った時の貴方は人形には見えなかったわよ、誰より優しいお母さんのようにしていたじゃない...」
「それはね...多分魔術をかけていたアリナちゃんが亡くなって、人形のように操られていた効果は消えたけど、記憶は思い出せないって効果が残っていたと思うの...それすらも消してしまうレンちゃんの力の影響で、ライちゃんは全部思い出しちゃったのよ...」
「....」
もうクレハは何も言えなくなっていた、アルアはただ下を向くことしか出来ず、メア、ヒューナ、アマネはただずっと泣いていた
その時司令室のドアが開き目を覚ましたレンが入ってきた
「みんなここにいたのか、っておい!なんでヒューナ達が泣いてるんだよ!クレハ、何かあったのか?」
「それは....」
言葉を濁すクレハ、喋りたくない気持ちで心がいっぱいになっていた
その気持ちも知らないで2人に質問攻めをしていた自分の行いを深く後悔していた
「うぅ...レン...こっちに来てくれ...私の傍に来てくれ....」
「どうしたってんだよ...こんなヒューナ見た事ないぞ...?」
レンにしがみつき泣くヒューナ、その姿は迷子になり泣き喚く子供を、あやしている大人のようだった
「レン...何があってもお前は私の息子だ...」
「何言ってんだよ、そんなの当たり前だろ?誰に何言われようと俺と姉ちゃんの母親はヒューナだよ」
「違う..アリナは....」
「ライちゃんダメ!!!!」
ヒューナの口を乱暴に手で抑えるアマネ
「お、おい!アマネ!どうしたってんだよ!!」
「お願い...レンちゃんは何も聞かないで...何も知らないで....」
「....」
レンは何も答えない、何を言えばいいのか分からない状態になっていた
「とりあえずレンとメアとアルアは私と別室に行きましょう、今は2人きりにしてあげましょう」
「レンちゃんに少しでも言ったら、絶対許さないわよ...もし言ったら殺してやる...!」
涙を流し怒りの表情をするアマネ
「アマネ落ち着け!お前達なんでそんな仲が悪くなってるんだよ!俺は何も聞かない!聞かないからそんな事言わないでくれよ...」
「大丈夫、感情的になってるだけよ、私の事は良いから行きましょう、アマネ...私達は何も言うつもりはないわ、信じて」
返事をせず、ただ泣いている2人を背に部屋を出るレン達
別室~
「アルア、ここに来たばかりなのに、こんな事になってすまないな...本当は俺が何とかしてやりたいんだが...」
「い、いえ、私は大丈夫です...ただ他の方達が...」
椅子に座ったまま泣き続けるメアと窓の外を見つめるクレハの方をチラッと見るアルア
「メア、何泣いてんだよ?俺ならここにいるじゃないか?そんなに泣くなよ」
「だって...私...」
「メア!」
「分かってるわよ!!いちいち突っかかってこないで!!」
「お前達一旦落ち着け!何があったのか気になるが俺から何も聞くつもりもないし、メアもクレハも言うつもりはないってのは良く分かった、とりあえずはそれでいいだろ?俺達で連携を取って訓練した時を思い出せよ、1人でも欠けちゃいけない、3人で1人なんだよ俺達は」
「レン君...」
「レン...ごめんメア...信じるはずなのに、どうしても敏感になっちゃって...」
「ううん...私こそ怒鳴ってごめん、変に誰かが喋ると勘ぐっちゃうよね...」
「流石レンさんですね!みんなをまとめるその姿、まさに騎士さんのようですよ!」
雰囲気を少しでも明るくしようとするアルア
「俺はもう立派な騎士だ、これくらい出来て当然だ」
「レンったら無理にカッコつけちゃって、耳赤くなってるわよ?」
「ほんとだ、レン君照れてるんだ!」
「う、うるさい、見るな!」
先程とは真逆のように明るく話す4人、いつの間にかメアも泣きやみ笑顔を見せる
別室のドアの外にはヒューナもアマネが立っていた
「流石レンちゃんね...さっきまであんな状況だったのに、みんなの笑い声が聞こえるわ」
「このはしゃぎ声を聞いてたら、私達の気分も晴れてくるな...奴らがなんだと言うんだ!今までの偽りの記憶ならこれから良き思い出を作っていけばいいだけの話だ!」
「ふふっ、すっかりいつものライちゃんに戻ったわね、頼りにしてるわよ司令官?」
「茶化すな馬鹿者...と言いたいところだが、ありがとうアマネ...お前が傍に居てくれて嬉しかった」
「あのライちゃんの口からそんな事が...?明日は槍が降るかも...」
「そんな訳ないだ...ろっ!!」
アマネの尻を蹴るヒューナ
「あいった〜〜...!!手加減してよ〜」
「さあ、あの人形が破壊した入口を直しに行くとするか」
「そうね....ところでライちゃん?その件について私から良い案があるんだけど」
「む?なんだ?」
「あのね...ヒソヒソ」
「...かなり良い案だな、すぐに取り掛かろう!」
「よっしゃ!任せといて〜!」
破壊された入口を直しに行く2人と、笑い合う4人、そして殺風景な部屋に1人考えるレイチェル、その表情は考えてるようにも、どこか悲しんでるようにも見えていた




