第5話 懸念
沢山の志願生達が負傷し、並んで横たわっている中、数多くの衛生兵達が慌てて治療をしている
事を聞きつけヒューナとメアも駆けつけてきた
「レン!大丈夫なのか!?何があったと言うんだ!」
「そうよ!どこか怪我してない?辛かったら今は話さなくていいのよ?大丈夫...?」
必死な表情で2人はレンを心配する
「大丈夫だ...俺自身分からない...あれは夢だったのか...?」
座ったまま困惑しているレンに司令官のフィネガンが近づいてくる
「レン殿...でしたかな?司令官のフィネガンと申す、気持ちの整理がついてないのは百も承知だ、あそこで何があった?」
「黒いローブを纏って鳥のようなマスクを付けてる人間に恐らく皆やられた...試練中知り合った奴もやられた、なのに俺には何故か敬うかのように接してきたんだ...もう何が何だか分からない...」
「ローブを纏った鳥マスクか...我々騎士団の目を盗んでどうやって試験場に忍び込んだと言うんだ...?奴らの姿は愚か痕跡すら残っていない状態だ、他に何かないのか?」
「そういえば、あいつタイプ∑とか言ってたな...」
「なに?タイプ∑...?」
ヒューナは険しい顔しながら答える
「ヒューナ?何か知ってるのか?」
「∑...というのは分からないが、私達エルフが人間と共に戦ってきた頃、悪魔達はタイプなんとかを良く口にしていたんだ、しかし結界が張られてる今悪魔達は都市に入れないはず...人間の中に裏切り者がいるかもしれない」
「裏切り者...そんな奴がいるってのか...」
レンは苦虫を噛み潰したような苦痛な顔を浮かべる
「...そうだ、後マスクの奴は自分が誰だか分かるかという質問に対して、俺が分からないと言ったらタイプ∑は使命を果たしてないとも言ってた、つまり俺に関係する奴がタイプ∑...?」
「ふむ...だがお前の知り合いは私、アリナ、メアしかいないだろう?この中に裏切り者がいるなんて有り得ない話だ」
「そうだよな...なんなんだよ...本当に」
レンは顔をうずめて精神的に追い詰められていた
「とりあえず、貴殿達は帰って構わない、特にレン殿には申し訳ない気持ちでいっぱいだ...折角騎士になるという場なのに、こんな事になってしまって...司令官として情けない限りだ」
フィネガンはレン達に深々と頭を下げ謝罪する
「とんでもないです!司令官は勿論これは誰も悪くないです、悪いのは奴らなんですよ...」
「君は優しいんだな、流石にアリナの弟だ、そういう所良く似ているよ...試験再開までかなり長い時間が経つと思うが必ず再開すると約束する、また君の顔を見れる事を楽しみにしているよ、レン殿」
そう言うとフィネガンは衛生兵達の元に向かう
「さて、私達も帰るとするか、レン今日はゆっくり休め、お前は悪くない、気に病むな」
「そうよ!レン君は悪いわよ!今日は私が何でもするから遠慮しないで言ってね」
「ありがとう2人とも、その言葉だけでもかなり救われるよ」
空元気のように振る舞いながら、歩き始めるレン、後に続くメアに対してヒューナは耳打ちをする
「メア、すまないが先にレンと帰っててくれ、私はちょっと用事を済ませてから帰る」
「え?い、いいけど、どうしたの?何かあるなら手伝うわよ?」
「馬鹿、お前が傍にいてやらなくてどうする、あいつは精神的に参ってるからな、お前のような奴が1番励ましになるのさ」
「そう言われると...なんか照れるわね、分かったわレン君の事は任せてちょうだい、でも早く帰ってきてね、レン君にとって1番大切なのは多分ヒューナなんだから」
「ふっ、分かってるさ、すぐ帰るよ」
「お前達何話してるんだ?早く帰るぞ」
「あっ、ごめんねー!ヒューナは用事があるんだって、先に私達は帰ろ!」
「そうか、じゃあ先に帰るぞヒューナ」
「うむ、気を付けてな...さて」
ヒューナは足元に魔法陣を生成させ、転移魔法を発動する
アマネ宅~
「邪魔するぞアマネ」
「うひゃぁ!?きゅ、急に部屋の中に出てこないでよ、ライちゃん!!」
「すまない、だが急用なんだ、真剣に聞いてくれ」
「...何があったの?」
「実は昨夜、騎士の入隊試験の最中にレンが何者かに襲われた、そいつはタイプ∑と口にしたらしい、しかも襲った連中はレンを敬う感じにしていて、タイプ∑とレンが深く関係がありそうなんだ」
「レンちゃんと!?それにタ、タイプって...あの自立型戦闘人形よね!?」
「そうだ、レンとメア、そして騎士団の連中には黙っておいたが....アマネ、お前はこれを聞いてどう思う?」
「あくまで私の予想だけど、タイプシリーズが既に都市に潜んでいてレンちゃんに何がアクションを起こそうとしていた、もしくは私達人間の中に悪魔と加担してる奴がいる、この2択だと思うわ、ライちゃんはどっちだと思う?」
「私は前者と予想している、他のエルフやお前以外はタイプシリーズの事は知らないからな、あいつらには後者と伝えているがな」
「タイプシリーズ...何で今になって...ライちゃん私に協力出来る事はない?何が凄く嫌な予感がするの」
「そのつもりで来たんだ、アマネ、お前には暫くレンの護衛と私の研究の手伝いをしてもらいたい、無理を言ってるのは分かってるが、頼めるのはお前しかいない、頼む」
「ちょ、頭上げて!そんなの頼まれなくてもやるわよ!」
「すまない...よろしく頼む、早速だが今日からうちに住み込みで来てもらいたいが、大丈夫か?」
「構わないわよ、持っていきたいものはライちゃんに消されちゃったし....」
「そうか、なら早速行くぞ転移魔法を使う、捕まれ」
「はいはい、あ、ライちゃんの手って意外とちっちゃいのね、可愛い〜」
ヒューナ宅付近~
「さあ、着いたぞ」
「小さい手のクセになんて握力....」
「お前が余計な事を言うからだ、それよりくれぐれもレンやメアには言うなよ?」
「当たり前じゃない、言える訳ないわよこんなの」
遠くの方からメアの声が聞こえる
「ヒューナーー!おかえりーー!!随分遅かった....ね...」
「やっほ、メイドちゃん?」
「で、出たぁぁぁ!?!ヒューナ!!なんでこんな狂人呼んだのよ!!」
「まあ、色々あってな、今日からアマネもうちに住んで貰う事になった」
「はぁぁ!?冗談じゃないわよ、私またあんな怖い思いしたくない!」
「問題ない、メアに何かしらちょっかいをかけたら、こいつが作動するようになってる」
綺麗なブレスレットがつけられてるアマネの腕を指さすヒューナ
「あ、あら?私いつの間にこんなの付けられてたの?」
「アマネ、ちょっとメアにちょっかいかけてみろ」
「え?いいの?じゃ遠慮なく〜、メイドちゃん髪綺麗ね〜サラサラで....うぎゃああああああ!?!!!」
ブレスレットから強力な雷魔法が発動し、アマネに落雷が直撃する
「どうだ?これならメアも安心だろ?」
「安心ね!ありがとヒューナ!」
「わ、私の心配もしてよ...」
「ところでレンは大丈夫か?、ちゃんと眠れてるか?」
「色々悩んでて起きてたけど、布団に連れてって子守唄歌ってたらいつの間にかレン君寝ちゃってたわ、クールぶってるけど、まだまだ甘えん坊さんね、すっごく可愛かった」
「そこがあいつの可愛いところさ」
3人がレンについて盛り上がってる中...
???の空間~
赤黒い鎧を纏った謎の大男の前に、鳥のマスクの人間がひざまづいている
「それで?あのお方を連れて帰らず、小物を駆除しただけで、帰ってきた訳か?お前は」
「も、申し訳ありません...何せ騎士の連中のお膝元ですから騒ぎになる事はリスクになると思い...」
「お前の口は言い訳をする為に付いてるのか?それにタイプ∑はどうした?何故あのお方に我々の存在が知られてないんだ?答えろ」
「そ、その件につきましては、どうやらタイプ∑は役目を果たしてない上に行方が不明でして...下の者たちに見つかり次第駆除命令を出していますが、見つからないようで...」
「やはり∑なんぞ使い物にならなかったんだ、それにお前と∑はもう用済みだ、Φ、やれ」
「了解致しました」
「タイプΦ!?お、お待ちください!!次こそは!次こそは必ず、あのお方を連れて帰ります!!お約束致します!!」
「と、言っておりますがどうなされますか?」
「まあいいさ、もう一度チャンスをやる、だがしくじれば...分かるな?」
「承知しております!!で、では失礼します...」
「よろしかったのですか?生かしておいても」
「構わん、こちらにはΦ、そしてαのタイプシリーズがまだいるからな、それにあいつには初めから期待していない」
「左様でございますか、命令があれば即私が連れて帰りますがいかがなさいますか?」
「いやまだ良い、あのお方の〇〇〇〇〇してからお迎えに上がれば良いだろう」
「そうですね、私やαも、あのお方のお帰りを心からお待ちしております」
「これから楽しくなりそうだな、ハッハッハッ!!!」
謎の大男、鳥マスク、Φやα、そして∑とは一体何なのか、謎は深まるばかりであった。




