第4話 入隊試験に向けて
地獄の食卓から次の日
「もう起きてたのか、2人とも...随分早いんだな...」
「ああ、おはようヒューナ...やっと体調が良くなってきたところだ...」
「おはようヒューナ、私はあの後一瞬気絶しちゃったけど、それからは何故か絶好調ね」
眩しい笑顔で親指を立てるメア
「やはりまだ私は気分が優れない...もう少し横になる...何かあったら起こしてくれ...」
「簡単に言ってくれるな...寝起きの悪さでヒューナの右に出る者はいないよ、俺は試験に向けて訓練をしにいく...そういう願いはメアに言ってくれ」
レンはふらつきながら剣を持ち外に出る
「全く...反抗期か...?まあいい、メア何かあれば起こしてくれ、私は寝る」
「えー...私貴方に怒られたくないんだけどー...ってもう居ないし...」
小屋の外で剣術の稽古をするレン、練習相手は妄想だが心の中で姉が目の前にいて互いに戦う気持ちで剣を振るうがやはり実態が無いと経験値がつかなかった
「はぁ...やっぱり実際の相手がいないと訓練にはならないよな...」
「ふふ、それなら私が相手になろっか?」
振り向くと両手を顎で支えてニコニコしながら座ってるメアがいた
「俺が能力者のメアに勝てる訳ないだろう?」
「別に勝ち負けじゃないでしょ?レン君が強くなる手助けになってくれればいいのよ」
そう言うとメアは立ち上がり木製の剣を持つ
「確かにそうだな、それなら相手をしてもらおう」
レンも本物の剣から木製に持ち替えて構える
「んじゃ、いくわよ?降参なら降参って早く言ってね」
その直後メアは高速移動でレンの後ろに回り込みから剣を一振する
「くっ...早い...!」
振り向きざまに剣を振るうが、既にメアの姿はなく、今度は下から顎を狙うように襲いかかってくる
「グハッ...!?...はぁ....はぁ...やるな...」
顎に一撃を与えられレンはよろめく
「(思い出せ...姉ちゃんの剣術を...)」
レンの回想~
「レン、もういいだろう、お前に剣術はまだ早い」
「まだ!もう1回やらせてくれ!」
アリナに剣術を教えて貰ってる幼きレン、身体能力、筋力、攻撃がどこから来るのか予想する思考力、全てがレンには未熟だった
「ならばレンには1つの技を教えよう」
「技?」
「そうだ、居合という技だ、己の全神経を集中させ油断して近くに来る相手に一撃を与える技だ」
「おお!強そう!教えてくれ!!姉ちゃん!」
「ああ良いとも、ただし...この技は初対面の相手が条件で通用するのは1回のみだが、急所に与えられればどんな相手でも一撃で倒せる」
「1回だけかよ...それじゃあ外したら終わりじゃんか」
「外さないように神経を研ぎ澄ますんだ、ものにすれば目隠しをしても相手の位置が分かるくらいになるぞ」
「...分かった、教えてくれ...姉ちゃん」
幼い子供の目とは思えないくらい真剣な表情をするレン
「そうと決まれば特訓だ、レンなら使いこなせるよ、なんさ私の弟だからな」
メアとの模擬戦に戻る~
「(そうだ...居合...やってみるか...!)」
レンは目を瞑り、腰に木製の剣を抑え、構える
「ん?レン君?何してるの?目なんか瞑っちゃったら戦えないじゃない」
「大丈夫だ、さっきみたいにかかってこい」
「ほ、ほんとに...?なら遠慮なく...!」
メアは再び高速移動でレンの正面から斬り掛かる
「....そこだ!!!」
メアの高速移動より早い動作で剣を抜きメアの脇腹に一撃を与える
「カハッ...!?」
メアは自分の予想してない動きと想像以上の激痛を与えられ、その場で倒れる
「メ、メア!大丈夫か!すまない...痛むか?」
「いっ...たぁ...だ、大丈夫よ、というかそんな強いなら訓練しなくても良いんじゃないの?」
「いやこれは一撃必殺の技だ、失敗したり、2回目は通用しない」
「他に技とかないの?」
「技という技はさっきの居合だけだ、後は普通の剣術だから何かしら他の人より強みになるものが欲しいところなんだ...」
「それなら、さっきの居合の時に私の動きを見切ったのは?あれも居合の時じゃないと見切れないの?」
「あんなの普通だろ?他の人と実戦はやった事ないが皆出来て当然だろ」
「いやいや、普通の人間は私の動きを見切れる訳ないし、目を瞑った状態で相手がどこにいるかなんて分からないわよ、ヒューナにどんな訓練させられてきたの?」
「居合と動きの見切り方はヒューナの教えじゃない、俺の姉から教わった物だ」
「へえ、お姉さんいたんだ?もしかして部屋の写真立てに一緒に写ってた赤い髪の人?今何してるの?」
「そうだ....もういないよ、10年前の襲撃で亡くなった」
「ご、ごめんなさい、余計な事聞いちゃって...」
「気にするな、同じ住人としてメアにはいつか伝えておこうと思ってたんだ、丁度良かった」
「...もしよかったらさ、どんな人だったか教えてよ」
「姉はとにかく強かった、俺と同じ無能力だったが騎士の隊長で能力者にも負ける事はないくらいの実力だった、ヒューナみたいに常に気が強く、弱音は一切吐かない人で俺の事を最優先で大切にしてくれてた」
「良いお姉さんね、私は赤ちゃんの時に捨てられたみたいで、ご主人様に拾われたから兄弟は勿論家族の顔さえ知らないわ、でもいいの、あの屋敷で育って今こんな楽しいから全く悲しくないわ」
笑顔で話すが、体は正直でどこか寂しげな感じのメアの頭を撫でる
「俺達なんか似てるな、俺も親がいないが、ヒューナとメアがいて今が充実して幸せだ」
「ふふ、かっこいい事言っちゃって!さあ試験までもうすぐなんでしょ!訓練再開するわよ!」
「そうだな!」
そして1ヶ月後の入隊試験
「皆良く来てくれた、私は騎士達を指揮を行ったり、この場のリーダーである司令官のフィネガンだ、試験内容を発表する、森林の中で我々が用意した悪魔の像を破壊し、目的地に着いた者は晴れて兵士になれる、そこから民を守り街の治安を管理する兵士になるのか、負傷した兵士や民を治療する衛生兵になるのか、最前線で悪魔と戦い兵士や衛生兵を導く騎士になるのか、どこに入るのかは君たち次第だ、今より期間は3日とする、諸君の健闘を祈る!では試練開始!!」
その言葉が終わると同時に志願生達が動き出す、レンも後を追いも深い森の中へ入っていく
試験場森林~
「はぁぁ!!」
レンは今までの訓練を思い出し次々と像を破壊しながら先に進む、周りには他の人間の姿は見えないが像の破壊する音が微かに聞こえる
「...負けてられないな」
地図に記された目的地に進むレンだったが、1人の志願生と出くわす
「おっ!良いところに!1人じゃ寂しかったんだ!それしてもこの森薄暗いし自分がどこにいるのか分からなくなっちまうよな、俺の名前はアギお前は?」
「レンだ、確かに深いよな...ところでアギは試験に受かったらどこに行くんだ?」
「俺は兵士かな、騎士のお供として悪魔と戦うかもしれないがやっぱり市民を守りたいって気持ちが強い、小さい頃から憧れてたからな!レンはどこに行くんだ?」
「俺は騎士になる、いつか戦場でばったり会うかもな、その時は市民をしっかり守ってやってくれ」
「任せとけよ!レンも悪魔を倒して俺たちを導いてくれよ?」
「当たり前だ、...そろそろ日が暮れそうだな、ここら辺で休むか」
「お!賛成賛成!動きっぱなしで疲れちまったよー...ん?おい、レン、あそこの奥にいる奴にも声かけようぜ、数は多いほど賑やかになるしな!」
「全く...まぁ像を破壊しながら3日以内に目的地に着けばいいしな、いいだろう」
「よっしゃ!おーーい!そこにいるお前ーー!こっち来いよー!!って...は...?」
姿が見えたのかアギは、ピタリと足を止め、怯えた表情になる
「アギ?どうした?...なっ...!?」
レンとアギの視線の先には、ペストマスクを装着し黒いローブを纏った人間の足元には、血溜まりに倒れてる志願生がいた、ローブの人間は、ゆっくりこちらを見て襲いかかってきた
「アギ!!一旦退け!!」
既に手遅れだった、ローブの人間はアギの腹を剣ではない、見た事もない武器で刺していた
「レ...レン...逃げ...ろ...」
アギを振り投げレンの元に歩み寄っていく
「貴様...!!」
レンが剣を抜く前にローブの人間は、レンの前にひざまつき、機械のような声で喋り出す
「よくぞ...ご無事で...ご立派に成長なされて我々は感極まるばかりでございます」
「は...?何言ってんだよ...」
分からない、何故自分を襲わないのか、何故自分が崇拝されてるような扱いを受けているのか
「さあ...我々と帰りましょう、余計な騎士を増やす訳にはいきませんからね...芽を出す前に私と他の者が全て駆除しておきましたよ、流石に今いる騎士や兵士達を駆除するには時間がかかりますから、野放しにしております、申し訳ございません」
「アギだけ...じゃないのか...?」
「何を悲しんでおられるのですが?...もしや?....私の事はお分かりで?」
「知る訳ないだろ、誰なんだお前は!!ここは騎士団の敷地内だぞ!どうやって入ってきた!!」
「はぁ...どうやらタイプ∑は使命を果たしてないようですね...おい命令だ、任務放棄したタイプ∑を見つけ出し速やかに排除せよ」
ローブの人間は通信しているのか、1人で何かを話している
「タイプ∑ってなんだよ...俺はお前達のなんなんだよ!!」
「いずれ分かりますよ、一からお話するには時間がない...必ずお迎えに伺いますので、ではまた」
そう言うとローブの人間は闇夜に消えていく...
一体奴は何者なのか、何故レンを崇めているのか、ほのかに血の匂いがする森の中でレンは、ただ困惑し戸惑っている事しか出来なかった。




