第3話 狂気と知識
異常な実験動物に溢れた部屋を見て、メアはぞっとし後ずさりしながら逃げ出そうとするが、すぐにアマネに捕まる
「ちょっとちょっと!どこ行くのメイドちゃん!見てよこれ!私の最高傑作のキメラ!」
キラキラとした笑顔で檻に入ってる生き物を指さすアマネ、檻の中には上半身は分厚い筋肉で覆われた獣、背中には大型の鳥の翼が、下半身は筋肉で覆われた見た事もない動物の下半身が無理やり縫い合わされていた
「く、狂ってる...貴方何考えてるの...?」
「狂ってる?私が?冗談よしてよ〜、どこが狂ってるって言うのよ〜」
無垢な笑顔でメアを見つめるアマネ、この人は異常だ、まとも話し合えない、そう思ったメアは話題を逸らし結界石の使い道を聞く
「と、ところでさっきの結界石は何に使うんですか?」
「ん〜?これ?...これはねぇ...」
不敵な笑みを浮かべるアマネ、手に持った結界石を半分に割ってしまうが、割れたはずの結界石がみるみる修復し、半分の大きさであるが2つの結界石が完成する、それを何回も繰り返す、そうして最初に持っていた大きさとは比べ物にならないくらい小さくなってしまったが沢山の結界石が机の上に並べられた
「これを...こう...!!」
1つの結界石を別のキメラにぶつけると、周囲に結界が出現し、何が起こったのか分からないキメラは恐怖で暴れるが強度な結界の為傷1つ付かない、それがまたキメラの恐怖心を倍増させ、気狂いしたかのように更に暴れる
「あはははははははは!!!良い眺めね!!最っっ高よ!!」
小さいサイズの為結界の効果すぐに切れてしまい檻を破壊しようとするキメラだが、アマネは結界石と似たような水色の石を今度は手のひらで砕くと、手のひらから火炎が現れキメラを焼いた
あまりの衝撃にメアは腰が抜けてしまう
「た、助けて...レン君...」
「んん!?ライちゃんだけじゃなくレンちゃんの事も知ってるの??ね!ね!レンちゃん元気してる〜?」
「殺さないで...ここから出して...」
「そんな怯えなくてもいいのに〜、でもその反応小っちゃい時のレンちゃんにそっくりね〜〜いじめたくなっちゃう」
「い、いや!」
メアは高速移動でその場から抜け出しドアを開こうとするが何故か開かなかった
「あ、開かない!なんで...!?」
ハイヒールの足音をゆっくり立てながら、アマネは近づく
「ごめんね〜、それ私じゃないと開けられない仕組みなの、それに貴方能力者だったのね〜、私人間の解剖はした事ないから能力者の心臓にどんな血管が付いてるのか、すっっっごく気になってたのよ」
息を荒げながら、フラフラと歩み寄る
「誰かぁぁぁ!助けてぇぇぇ!!!」
メアは大泣きしながらドアを必死に叩くが、虚しい事に何も返事は帰ってこなかった
「捕まえた...さあメイドちゃん?こっちにいこうね〜」
「嫌ぁぁぁ!やめてぇぇぇ!!!ごめんなさい!!!許してください!!」
同じ身長、体格でありながら、アマネはメアを軽々持ち上げ椅子に優しく座らせる
「ぅ....う....グスッ....許して...」
震えながら涙を流しアマネに許しを乞うメア
その姿を見てアマネ喜んでるように見えるが、心の中では、かなり焦っていた
「(ど、どうしよ〜...!!ちょっとからかうつもりだったのに...ここまで泣いちゃうなんて思わなかった〜〜!!こっからどう巻き返せばいいのよ〜!!今更冗談でした〜なんて言えば余計怖がらせちゃうかもだし...かと言ってこのまま続けてたらメイドちゃんが可哀想だし...)」
「ご、ごめんね?メイドちゃん?ちょっとからかうだけだったのよ、本気にしないで?ね?貴方に危害は加えないわ」
優しく問いかけても、メアはずっと泣いていて謝っている
「ごめんなさい...ごめんなさい...私誰にも言いませんから...ここから出して...殺さないで....」
「(どうすればいいのよ〜〜!!助けてライちゃん〜〜〜!!!)」
2人ともパニックになり収拾つかない状況に陥っている中、ノックする音が響き、外からヒューナの声がした
「アマネ、私だ、そっちにメイドが来なかったか?」
アマネは急いでドアを開け、ヒューナに縋り付いた
「ライちゃん〜ごめん〜〜からかうつもりがメイドちゃん泣かせちゃったぁぁぁ〜〜〜」
メアと同じようにアマネも号泣してしまう
「やはりこうなったか...レン、メアの元に行って落ち着かせてやれ、私はこいつを何とかする」
そう言うとヒューナなくっついて泣き喚いてるアマネを面倒くさそうに宥めている
「分かったよ」
メアは椅子に座ったまま、ヒューナとレンが来た事に気づかないくらい恐怖に怯えていた
「メア迎えに来たぞ、さあ一緒に帰ろう」
「ひっぐ...グス...レン君...?うぅ...ごわがっだよぉぉぉぉ」
「もう大丈夫だ、安心しろ」
それから30分過ぎた頃、コアラのようにレンに抱きついているメアはようやく泣き止み落ち着きを取り戻す
部屋の真ん中には正座してるアマネに説教をしてるヒューナがいた
「私はこんな事する為に結界石を渡したんじゃないんだぞ?メアから聞いたが、この前渡した魔術石も同じ使い方をしていたそうだな?キメラの実験に使うなど、聞いて呆れる...これは私の魔力を無駄にした事とメアを泣かせた罰だ」
そう言うとヒューナの足元に大きな魔法陣が生成され、小声で何かを呟くと部屋の中にいたキメラや実験動物が全て砂のように消えてしまった
「わ、私の作品達がぁぁぁぁ!?!!?ライちゃん!!なんてこ...ムグッ!?」
喋り終わる前にアマネの口を塞ぐヒューナ
「作品?まだそんな事言ってるのか?どうやら反省してないようだな、お前もキメラ達のようになりたいみたいだな?あの世で奴らと仲良く実験なり好きな事をするがいい」
「す、ストップ!!分かった!反省しておりますから許してください〜!!もうキメラを作ったり実験はしません〜!!」
「許しを乞うなら私じゃなくて誰にするべきだ?」
アマネはメアの元へ行き、反省した顔で謝罪する
「メ、メイドちゃんごめんね...?反応が可愛かったから、つい調子乗りすぎちゃった...最初からメイドちゃんには何にも危害を加える気は無かったのよ、それに謝罪として後でハーブティーと私が焼いたケーキもご馳走しようと思ってたのよ」
「もういいんですよ、でも反省はしてくださいね、本当に怖かったんですから...ちなみにケーキの材料って...?」
「ほんとごめんね反省するわ、ケーキの材料って言っても普通よ?あ、でも隠し味に良いものを入れてあるの、確か...この容器に...あったあった!じゃーん!」
アマネは容器から手と同じサイズのワームを取り出した
「いや!気持ち悪い!やっぱりこの人苦手!!」
再びレンに抱きつくメア
「えぇ...?そんな反応されると思わなかったんだけど、確かに見た目は苦手な人がいるかもだけど...でもね?このワームって実はすっごく濃厚でクリーミーな味がするから意外とケーキとの相性がよく...て」
アマネの後ろには怒りのあまり般若のような顔をしているヒューナがいた
「お前は何度言えば分かるんだ?ゲンコツでもされたいのか?」
「ちょ、ちょっと待ってよ!これもダメなの!?今のはいじめるつもりじゃないのよ!ほんとに美味しいからオススメしただけよ!」
「実験ばかりして引き篭ってるから、普通の人間の感覚がズレるんだ!!!外に出て常識を学んでこい!!」
雷が落ちるかのようにヒューナは怒鳴った
「うぅ...ごめんなさい...」
しょぼくれたようにアマネは縮こまってしまう
「さあ、色々あって疲れたな...レン、メア、帰って今度こそ飯にするぞ」
「え?私も...?でもまだ貴方に許しを貰って...」
「何言ってんだ、あんなのは私なりの冗談だ、狂人のアマネに会わせてみたらどうなるのか気になって言ったまでだよ、こんな事になるとは思わなかった、私も深く反省してる、すまなかったなメア」
「私冗談の為にあんな怖い思いして...みっともなく鼻水垂らして大泣きしてる所を見られたなんて...お嫁に行けない...」
メアは魂が抜けたように遠くを見ながら失笑する
「まあまあ、泣く事なんか誰でもある、気にする事じゃないさ」
レンはメアの肩を軽く叩き、宥める
「では私達は失礼するぞ、これに懲りたら精進する事だな、正しい事に使うなら結界石なり魔術石なり譲るからそう落胆するな」
「ぅぅ、外に出たくない...引き篭ってたい...」
アマネに声は届かずダンゴムシのように丸まっている
「こりゃ暫く落ち込んでるだろうな...」
レンは苦笑いをする
ヒューナ宅~
「さあ!材料は揃った、約束通り今日は私が拵えるとしよう、お前達は今日の疲れを癒しながら待っててくれ」
「そ、そんな!悪いわよ、私も手伝うわ、こう見えて昔は屋敷でご主人様にご飯作ってたんだから!」
「そうか、なら軽く手伝ってもらうとしよう、私は野草や肉の下処理するから、メアはシチューの様子を見ててくれ」
「はーい!」
メアは、じっとシチューとにらめっこをしているが、どこが不満そうな顔をしている
「うーん...彩りが足りないわね...これを入れて...香りを付けるためにこれも...あとこれも...」
「待たせたな、焦がしたりしてないだろうな?」
「ばっちりよ!ほら!良い匂いもするでしょう?」
「む?本当だ、シチューには出せないような美味そうな匂いがする...これは楽しみだな」
机にはシチューやパンが並べられる
「頂くとしよう、それからメア、ようこそ我が家へ、暫くはここでのんびり暮らしていると良い」
「やーね、そんな厄介者にはならないし、ちゃんとすぐに稼ぎ口を探すわよ」
「俺もそろそろ試験があるからな、お互い忙しくなりそうだな...ウグッ!?」
シチューを口にしたレンの顔色が一気に青ざめる
「ど、どうしたレン?シチュー変だったか...?ムグッ!?」
同様にヒューナの顔色も青くなる
「な、なによ2人とも変な顔して、美味しくないの?」
「メ、メア...お前シチューに何を入れた...?」
頭を抱えたヒューナは質問する
「え?彩りが無かったから魚の生き血を入れて、あんまり香りもしなかったから私の好きな匂いのバニラエッセンスを入れて、隠し味にチョコレートと砂糖を入れたわ!」
自信満々にメアが答える
「何故屋敷の連中はこんな奴を野放しにしたんだ...こいつもアマネと同じ狂人なのか...?」
「なによ!失礼ね、あんな人と一緒にしないで!そりゃ料理人とか他のメイドがいた日は私に料理をさせてくれなかったけど...そんなに酷い訳じゃないでしょ?どれどれ....パクッ.......」
現実を認めたくないかのようにメアは黙る
「どうだ...少しは自分の愚かさが分かったか...?」
「お、美味しいわよ...とっても...レン君も美味しいでしょ...?」
「あ...あぁ...少し癖のある味だが...メアらしくて良いと思うぞ...?」
「こいつを甘やかすな...これ以上被害を出してはならない...今ここで断ち切らなければ...私...達が...ガクッ」
「ヒューナ...大丈夫か...うう...腹が...バタッ」
「ちょ、ちょっと...2人とも気絶しないでよ...わ、私まで気持ち悪く...ドサッ」
メアの歓迎会のはずが、地獄の食卓へ変わってしまった、果たして新しく仲間になったメアと3人で、これからどうなってしまうのか...




