第2話 メイドさん
アリナの死から10年後、森の奥にある小屋の外で、1人の青年と小さいエルフが訓練をしていた
「どうした!こんな物を防ぎきれないようじゃ騎士にはなれないぞ!」
「クッ...なめるな!!」
攻撃を振り払い押しのけるレン、魔術で作った剣を破壊しヒューナに尻もちをつかせる
「ふぅ...全くお前は貶さないと力が出ないのか?最初から全力で来い」
「分かってるさ、ただ相手がヒューナだから本気になれないだけだ、俺にとってたった1人の家族だからな...」
「レン、私にとってそれは凄く嬉しい言葉だが本気で騎士になりたいなら、その考えは捨てろ、もし私が悪魔に操られてお前に襲いかかってきたら、どうするんだ?」
「...操ってる奴を切るまでだ、ヒューナには怪我して欲しいくないからな...姉ちゃんの墓に行ってくる」
「待て!...全く...そんな甘い気持ちじゃ戦っていけないぞ...レン」
アリナの墓の前には、生前アリナが好きだった、ガーデンシクラメンの花が沢山添えられていた
恐らく兵士達が墓参りに来たのだろう墓標には、こう刻まれている
ヒューナの娘、レンの姉、最強で美しきアリナ ここに眠る
「姉ちゃん...俺もうすぐ騎士の入隊試験に挑む事にするよ、姉ちゃんが使ってたこの剣で俺は必ず仇を取るからな、いつまでも見守っててくれ」
ヒューナが追いかけてきて、後ろから声が聞こえる
「ほう、ガーデンシクラメンか..あいつが一番好きだった花だな」
お互い何も喋らず、ただアリナの墓の前で手を合わす
「レン、先程は意地の悪い事を言ってすまなかった、ただ最悪のケースがあるという事を理解して欲しかったんだ」
「理解はしてるよ、ただ実際そうなったら俺はどう対処するのか正直想像出来ない、そういった面でもまだまだ鍛え直さなきゃな」
「そうだな、私は応援しているよ、よし!そんな頑張ってるレンの為に今日の夕飯は私が野草シチューを拵えよう!...と思っていたが訓練に夢中で肉を買うのを忘れていた、すまないがレン街に行って買ってきてくれないか?」
「それくらい良いが...前から思ってたんだがシチューに野草を入れるってのはどうなんだ?味は悪くないから良いが、たまに見た目が怪しい草が入ってる時があるから心配だ」
「全くお前は野草の魅力に気がついていないのだな、いいか?野草というのは....」
「い、いい!分かったから!肉だよな、すぐ買ってくるよ!」
駆け足でその場を立ち去るレン
「なんだあいつ...そんなに野草嫌いだったのか...?」
都市~繁華街
「危ない危ない、あのままほっといたら野草の話から説教に繋がりそうだったからな...さて、肉を買いに...ん?」
街の裏路地に3人の男と1人のメイドが入ってく姿が見えた
「なんか怪しいな...様子を見に行くか」
裏路地~
「ほんっとしつこいのね、金を積まれようが、拷問しようが私は貴方達に協力する気はないわ、そもそも能力を悪用に使うなんて男として恥ずかしくないの?」
「よく吠える女だな、お前の能力があれば大金を簡単に手に入れる事が出来るんだぞ?分前も半分渡すし悪い話じゃないはずだ」
「人の話聞いてんの?能力を悪用に使うなって言ってんの、時間の無駄だし話が終わりなら私の視界に入ってこないで」
「そうか、同じ能力者同士だから話が合うと思ったが残念だ」
「は!?あんたも能力...」
女性が話終わる前に、男は魔法陣を作り出し中から獣が這いずり出てきた
「なんだどんな能力かと思ったらしょぼい能力なのね、大口叩いた割にはハズレなのね」
「好きなだけほざいてろ、さあこの女をくいこ...ろせ」
女性が危険だと思い、とっさに体が動き男を峰打ちで気絶させる
「大丈夫か、怪我は無いか?」
「えっ、は、はい、私は大丈夫で...って危ない!後ろ!」
残りの男達に気付かず斧を持った男達がレンに襲いかかる
「伏せろ、小汚いクズ共が」
間一髪、ヒューナが男達に重力の魔術をかけ、男達が地面にめり込む
「ヒューナ!助かった」
「やれやれ、帰りが遅いと思ったらこんな所で油を売ってるとはな、私の教えはどうした?油断をするなとあれだけ教えたよな?」
「この人の身が危なかったんだ、それで周囲にまで気が回らなかった...すまない」
「はぁ...自分の身の危険より誰を助ける心構え、アリナにそっくりだな」
「そりゃ姉弟だからな、当然だよ」
2人が話してる中、女性が恐る恐る声をかける
「あ、あの〜...助けていただきありがとうございました」
「ん?あぁ、お嬢さんが無事なら大丈夫さ、お名前は?」
「メアと申します、先月までご主人様に仕えていたのですが年齢によりこの世を去ってしまい...働く所を探していた所をこいつらに目を付けれてしまいまして...」
「いやかしこまらなくていい、楽な話し方をしてくれ、それにしても何故こいつらはメアを必要としていたんだ?気を悪くしたらすまないが、悪事を働くにしても体格的にバランスが悪いと思うのだが...」
ヒューナは腕を組み不思議そうに考えている
「そう?なら遠慮なく、私は能力者なの、能力は超高速移動、目で追いつけないどころか生体感知にすら気づかれない速度で動けるわ、それを使って恐らく金貨を溜め込んでいる富豪の家に忍び込めって命令する気だったのよ」
メアは肩を竦めて、ため息をつく
「メアも災難だったな、自己紹介が遅れた、俺はレン、こっちのエルフはヒューナだ」
「耳が尖っているし、まさかと思ったけど...エルフって初めて見た...って事はさっきのは能力じゃなくて魔術?」
「うむ、そうだ、先程のは懲らしめる程度の簡易的な魔術だがな、この都市の殆どの結界は私が作り上げた物だ」
「貴方1人で!?他のエルフは?」
「他のエルフ達ではこのレベルの結界は張れないんだよ、つまり私がこの世を去れば...どうなるか分かるな?その最悪なケースに備えて他のエルフ達には結界の作り方を教えているんだが、魔力的な問題で上手くいかなくてな」
「サラッとやばい事言ってない!?貴方今何年生きてるの!?」
「私自身もう何年生きたか覚えてない...そうだな...恐らく1000年くらい生きているだろう、古代より生きてきたエルフ達は皆4000年は生きているから、お前達人間は心配する事はない」
「なーんだ、焦って損したわ、ねえところでエルフさん?ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
メアはレンから距離を置き、ヒューナに耳打ちをする
「あのレンって子、貴方とどういう関係なの?話し方からして親しいと思うんだけど...」
「な、なんだコソコソと...一応レンは私の息子だ、血は繋がってないがな」
「レン君のお母様!?もしお母様が宜しければレン君を紹介して欲しいなー、なんて」
「レ、レン君...?寒気がしそうな呼び方はやめろ...というかお前初対面の相手を好くとは、どんな教えを受けてきたんだ...?」
「いいでしょ!恋愛に初対面もクソもないわよ、とにかく助けてくれて手を差し伸べてくれた、その姿に一目惚れしちゃったのよ、私奥手だから...お願い!協力してよ、お母様〜」
「や...やかましい女だな、気になる相手がいるなら自分の力で掴み取るもんだ、誰かの助けを借りて手に入れたものに価値などない」
「そんな殺生な〜...」
「おい、2人ともコソコソと何の話してるんだ?腹減ったよヒューナ」
「む?そうだな、さっさと肉を調達して帰るとするか、お主も早いところ帰った方が良いぞ」
「帰るって言ったって家なんかないわよ、ご主人様がいなくなったんだもん、住む所もなければ稼ぐ所もない、お先真っ暗よ」
「なら稼ぎ口が見つかるまで、うちに来るか?森の奥にある小屋に俺とヒューナで住んでいるんだ」
「ええ!いいんですか!(かっこいい上に優しい〜〜!)」
「おいおい、まだ私の了承を得てないぞ?お前達のような若造2人の乳繰り合う姿なんぞ見たくない」
「いやいや...俺とメアは初対面なんだし、恋人じゃあるまい、そんな事はないから大丈夫だよ」
「そ、そうですよ〜(こんのクソエルフ余計な事言うんじゃないわよ)」
怒りのあまり笑顔が引き攣るメア
「なら条件を出す、それをこなせば、うちに住まわしても良いぞ」
「条件?」
レンとメアが首を傾げる
「うむ、条件と言っても難しものではない、ここから数キロ離れた風車のある小屋に私の友人がいる、そやつにこれを届けて欲しいんだ」
ヒューナは懐から黄金色に輝く光の玉をメアに渡した
「なにこれ...綺麗...宝石?」
「石ではあるが宝石ではない、それは私の魔力が込められた結界石だ、それを対象とする建物に投げ入れれば、たちまち建物に強度の高い結界が張られるという代物だ」
「ふーん、これを届けるだけでいいの?思ってたより簡単そうね」
「ふふ、簡単そうだろう?さあ行くといい、友人の名前はアマネだ」
ヒューナは、いたずらを思いついた子供かのように不敵な笑みを浮かべる
「アマネさんねOK、すぐ戻るわね」
そう言うとメアは一瞬で消え去り、姿形が見えなくなってしまった
「おいヒューナ...アマネって確か...」
「ふふ、そうだ、お前が良く知ってるアマネだよ」
「気の毒に...初対面だが骨は拾ってやるぞ...メア」
風車小屋~
「っと、ここかしら?」
先程から2~3分も経たない内に到着したメア、小屋をノックし声をかける
「すみませーん、ヒューナさんから届けて欲しいという物を預かってましてー」
ドアが開き、見るからに不健康そうな女性が出てきた
「あら、ライちゃんのお友達にこんな可愛いメイドさんいたかしら?」
「あれ?ライ...ちゃん?ヒューナさんではなく?」
女性は手元を抑えくすくす笑う
「ヒューナちゃんで合ってるわよ、お友達なのに名前も知らないの?ヒューナ・ライアルスって言うのよあの子」
「そ、そうなんですか、実はヒューナさんとは今さっき知り合ったばかりで...色々あってこれをアマネさんに届けて欲しいって」
メアは渡された結界石を見せるとアマネは人が変わったように興奮する
「きたきたきたーーー!!!ライちゃんお手製の結界石!!これがあれば...あれをこうして...これをああして...ってメイドちゃん何見てるの!貴方もこっち来なさい!」
「えっ!?わ、私その、もう帰らな」
メアの話を聞かず無理やり部屋に連れ込むアマネ
中には動物と動物を無理やり合成したかのようなキメラもあれば悪魔の角をネズミの額に縫い合わせ、瀕死であるが擬似的な悪魔を作り上げていた
メアは額に冷や汗を流し、心の中でレンに助けを求め、ヒューナに騙されたと後悔するメアであった




