No.6 初任務②
狼は突進の構えではなく、短く吠えた。それだけで風が吹き荒れる。
「がっ!やられた!」
栞さんからそんな声が聞こえる。そちらを見るとなぜか膝をついている栞さんがいた。
「どうした!」
「さっきの吠えたときにおそらく風魔法を仕込まれた!足をやられて速くは動けない!」
(やられた!俺の攻撃力じゃ届かないからな。栞のやつがやられたらまずい。)
狼は身体の向きを栞さんの方に向け突進の準備をしている。
「クソっ!」
悪態つきながらも仁は栞の方に向かって走り出す。
(水魔法も間に合わねぇ!)
狼は走り出した。
ガンッ!バキッゴキッ!ペッ!
間一髪水魔法を駆使して自分を弾き飛ばし栞を攻撃範囲外に弾き飛ばした仁であったがそのまま狼の突撃に当たり、噛まれ、全身にトラックに轢かれたような衝撃が走り狼の口から吐き出される。
(いっっっっっっっっってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。)
「なんでっ!」
『大丈夫ッ?』
そんな声が聞こえるが、聞こえなくなるほどに頭を回す。
装備からはエネルギーが漏れ出してバチバチと音がなっている。かろうじて変身は解除されていないようだがもはや動けないだろう。
「か、、み、、、や、さん。」
『何?』
「しおりさんに、、つたえて、、、ください。おれが、、、きどう、、りょくを、、そ、ぐと。」
『無茶よ!フィック回収してもらうわ!』
「俺の攻撃力じゃ、通らない。栞の攻撃力がいる。俺に策がある。」
「『フルチャージ』、『大津波』」
ベルトにあるセンサーにカードをかざしtype-Oの奥義である”大津波”を発動。魔力を消費して大量の水を生成。狼は水に飲まれ動きが鈍る。栞の周りの水を操り狼の真上に持っていく。
「ぶち、、かませ!」
『栞!やって!』
「言われなくても!」
「『フルチャージ』!」
栞が持つハンマーについたブースターが起動しハンマーを加速させる。狼に直撃し狼は消し飛んだ。
「やったか、、、」
撃破を確認し仁の意識は途絶えた。
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「知らない天井だ。」
「起きて〜第一声それって〜どうなんですぅ〜?」
「神谷さんか。あの後どうなったんだ?」
「フィックが〜魔法を使用して〜向かえに〜行ったんですよぉ〜。」
「何時間ぐらい寝てた?」
「30分たってませんよ〜。タフですねぇ〜。」
目が覚めるとそばには神谷さんが座ってバイタルのチェックをしていた。
「とりあえず〜生身には〜あまり〜ダメージが〜いってないので〜筋肉痛程度の〜痛みが3日ほど〜続くだけで〜済みそうですねぇ〜。」
「栞のやつは?」
「大した〜怪我もなく〜寝ていたあなたに〜馬鹿って言って〜帰りましたよ〜。」
「OKあいつはしばく。」
「僕の到着まで君を見守っていたのは栞なんだからやめな。」
「フィットチーネか。」
「フィックだ。断じてパスタじゃない。」
「よく知ってたな。」
「もう一度眠らせてあげようか?」
「ストップですよ〜。」
そんな会話をした後、仁はベッドから起き上がりそばに置いてあった上着を羽織る。
「帰る。疲れた。」
「おつかれ〜。お大事に〜。」
「初任務お疲れ様。報酬は君の口座に振り込んでおくよ。」
「あざっす。さよなら。」
仁が部屋を出た後。
「まったくぅ〜素直じゃ〜ないんだからぁ〜。」
「言ってあげるなよ。」
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コンコンコン
ノックをする。
「入るぞ。」
ガチャリ
「返事ぐらいせいや。」
「っ」
「よう元気か?栞さんよぉ。」
「人の気も知らずに。」
「そうかよ。で?何引きこもってんだよ。」
「…」
「はぁ...とりあえず、ありがとな。」
「…」
「てめぇがいなけりゃあいつは倒せなかった。」
「なんでッ私を庇った!」
「馬鹿かそんなこともわからんか?俺じゃ火力足りねぇんだよ。」
「最後の”大津波”!あれを操作すればあの硬さも貫けただろう。」
「バーカ。俺より長くやってるのに見誤るなよ。それに、火力が足りないことにしておくんだよ。」
「っ。」
「これ以上言わせんなよ。あぁそれと、俺が気ぃ失ってる間も見守ってくれてたそうじゃねぇか。ありがとな。じゃあ帰るわ。」
扉に触れようとすると。
「なんで私を助けた?お前が死にかねなかっただろう?なぜ自分の命を投げ出してまで私を残そうとした?…お前は…怖くないのか?」
気付けば栞は涙を流していた。
「さっきの答えが余程気に入らなかったか。」
「そうだ…何かはぐらかされてるような気がする。」
「まあ隠してることはあるが、嘘はついていない。」
「っ、やっぱり一人でも倒せるんだな。」
「否定はせんが火力が足りん。そのまま死ぬのがオチだろうよ。」
「私がいなかったら、邪魔じゃなかったらダメージも対して負わず時間をかけて倒せたのだろう?」
「そう自分を卑下するなよ。自分を役立たずと思うんじゃねーよ。それに何度も言うがtype-Oじゃあ全体的に火力が足りない。お前の火力がないと俺は犬死にだっただろうよ。」
「なぜそこまで私に嘘をつく。」
「あーもう、うるせーよ。恥ずかしいんだよ。言わせんな。俺は俺の前で人が死んでほしくないんだよ。あと俺は一切嘘をついてないぜ。見た目以外で。」
「じゃあ自分が死ぬのは構わないのか?」
「いや自分が死ぬのも嫌だよ。でも、俺は自分の命よりも他人の命を優先したいんだよ。」
「なぜそこまで他人の命を守る!」
「俺は託された側の人間だから、更に次に託せそうなやつを守るのが俺の使命なんだよ。」
「どういう意味だ?」
「いつかわかるよ。ほれ、くれてやる。もし助けが必要になったらそれに魔力を流せ。いつか役に立つ日が来る。」
そう言って腕輪を投げ渡す。
「なぜこんな物を渡す。」
「気に入った。それ以上の理由は無い。」
「そうか...。さっきの話に戻るがお前は何を託されたんだ?」
「意思。俺はそれを託されたし、次に託す。」
栞は言い合いをしているうちに泣き止んでいた。
「気はまぎれたかい?お嬢ちゃん。」
「誰がお嬢ちゃんだ。貴様のほうがお嬢ちゃんの見た目をしているくせに。」
「気はまぎれてきたようで何より。自分が必要とされていることを忘れんな。自分が変えのきかない存在であることに自身を持て。もっと胸張って生きろ。お前は今まで必要とされてきたし、少なくとも俺はお前(の力)を必要としている。例えばお前と同じ事ができるやつがいたとしよう。じゃあお前はいらないのかと聞かれたら俺は必要だと答える。なぜなら同じことができようともお前の性格、記憶、行動はお前しか辿ってない変えの聞かないものであるからだ。」
「っそうか。」
「じゃ「もう少し話を聞いてくれ。」」
「何?」
そう言って栞はポツポツと話し始めた。
「単なる身の上話だ。聞いてくれ。私はもう何年も前に、それこそ記憶もはっきりしない頃だ、魔物に両親を殺されている。あとから聞いた話だがな、両親は死にかけになりながらも私を<HEROES>の隊員に託したらしい。それ以来私はこの施設で育った。この施設から学校に通っているしフィックや司令が親代わりだ。けれども学校に通っていても楽しいとは思えなかった。いつも馬鹿にされ親無しと笑われた。子どもの遊びとわかっていても辛かった。それでも<HEROES>として戦うことに誇りを持っていたし誰にも言えない自慢でもあった。でも優秀な隊員が入ってくるうちに自分は必要なのだろうかと思うことが増えていった。圧倒的な戦い方で敵を翻弄するやつ。遠くから安全に市民を守るやつ。そんな奴らが増えていって力しか取り柄のない私なんかがこのままここにお世話になっていいのだろうか。そんな気持ちになっていった。でもお前にあえて良かった。まだ私を必要と言ってくれた。前を向けと言ってくれた。お前は私にこの腕と生きる気力をくれた。本当に感謝してもしきれない。だからありがとう。」
どうやら下を向いていた栞にも前を向いて歩ける日が来たようだ。
「そんなことを話してくれるほど信用してくれたことを嬉しく思うよ。」
「そうか!引き止めて悪かったな!」
「ああ、またな。」
「また会おう!」
そう言って仁は部屋を出て扉を締める。
「盗み聞きは良くないんじゃないのフィッツ。」
「僕は無職で転生した人の妻の一人ではないかなぁ。」
「で?言い訳を聞こうか。」
「栞が最近悩んでいるのは知っていたよ。でも僕たちには何も話してくれなかったからね。」
「言い訳になってない。有罪口に氷を詰めてあげよう。」
「モガッモガッ(やめろ!冷たい!)」
今度こそ家に向かって歩き出す仁であった。
毎日投稿はきつい。




