No.16 優しさと煙草と刀と脳筋②
首を狙ったお返しとして弓月の腹に喧嘩キックをお見舞いするもあまりダメージが通ったように見えなかった。
(風魔法で後ろにずれることでダメージを減らしやがった。)
「さすがの技量っすね。」
「この程度は気付いてもらわないとな。」
後ろに下がった弓月がまたも刀を振るもその刃は仁には届かないように見えた。
(何をしてっ!)
「”伸びろ”ハービンジャー!」
「ウオッ!」
弓月が叫ぶと同時に持っていた刀が伸び、仁に迫るも仁は上に飛ぶことで回避。そのまま水魔法を発動し、空中に水の足場を作り出す。
「ちょこまかと。だが飛んでる内は避けれまい。”伸びろ”ハービンジャー!」
仁はまだ空中の足場に着地しておらず、弓月によるハービンジャーの振り下ろしが届きそうになるも空中の足場を移動させ、自分にぶつけることで横に身体をずらし、間一髪で回避する。
「次はこっちのターンですよ〜。」
空中の水の足場を何分割にもし、弾丸として弓月に放つ。
「面倒な。【風魔法】。」
「させないっすよ。」
「チッ。”縮め”ハービンジャー。」
「...流石っすね。」
風魔法で移動速度を上げ弾丸の着弾地点から逃れようとするも、仁はそれを先読みし、広い範囲にバラけて弾を放つことで避けた先にも弾が降り注ぐ。弓月はハービンジャーを縮め、すべてを切り裂こうとする。
「想定が甘いっすね。」
「お前がな。」
弓月はそのまま弾を切るのではなく。そのまま弾に当たりながら、仁に向かって走り出す。
「無茶しすぎじゃないっすか。」
「この程度は無茶とは言わん。」
(なるほどあいつが脳筋と評した理由はこれか。)
素の耐久力に任せた強引な接近。仁はこれを咎めるすべは無く、接近を許してしまう。
「クソっ。」
「”伸びろ”ハービンジャー。」
伸ばされたハービンジャーによる斬撃には銃剣の剣モードで対応するもあまりの衝撃に、数メートル横に飛ばされる結果となった。
「防御はマスクドシステムの素の防御力に任せるか回避、攻撃力はそのハービンジャーを伸ばした先に行けば行くほど集まっている魔力による強化斬撃。高い防御力に任せて敵にある程度近づき、ハービンジャーの先端を当てて斬る。それがあなたの戦法でしょ。」
「...ふむ、観察眼はあるか。」
「当たらずとも遠からず。いや、別の戦法も隠しているってとこかな。風魔法による高速戦闘とか?」
「...はっ。」
「当たりかな。いやこの感じだと遠距離戦が一切できないというのもデマかな?おおかた栞の勘違いかなにかだろう。」
「そう思った理由でも聞いておこうか?」
「最初の一撃から高速戦闘ができるんだろうなとは思っていた。後はさっき後ろに下がったときに、遠距離も近距離もできる人特有の間合いの取り方をしていた。具体的には少し離れて飛び道具が来たらすぐに反応できて、かつ自分も詰めやすく、相手が詰めて来てもすぐに下がって魔法を放てる距離。」
「見抜いたのはお前が初めてだ。これから私が最も得意な戦い方を披露してやろう。」
「勘弁願いたいところですね。」
弓月は上に手を掲げ風魔法を連射、風魔法によって発生した斬撃が辺り一帯に降り注ぐ。
「だるいっすね!」
弓月は仁が一瞬上を向いた隙を見逃さず風魔法による移動速度の強化によって仁に近づく。
「『フルチャージ・大津波』」
「そう来るか!『フルチャージ・スラッシュ』!」
仁が大津波を発生させ、一帯を水で沈めようとするが弓月もフルチャージを切り、弓月の首目掛けて刀を振るう。仁は後ろに仰向けに倒れるようにして回避、水位が上がり一帯が水に沈み、仁は倒れた勢いを利用して一回転し、水の中を高速移動する。
「面倒な!」
「俺からしたら褒め言葉ですね!」
弓月のモデルも亀なので水中での移動ができるのだがオルカである仁には及ばず風魔法で加速することで仁に追いつこうとする。
「水ん中じゃ刀も速く振れないでしょ!」
「待ちやがれ!」
仁は大津波によって発生したみずを操り、自分を加速させたりし、見事な3次元機動を見せ、弓月を翻弄する。
「だるいことしやがって。」
弓月は仁に追いつくことを諦め、カウンターに徹する。
「結構厄介っすね!でもこれだったら関係ないでしょ!」
仁は弓月の周りの水圧を無理やり上げることで攻撃する。
「クソがっ!」
「どうです?即興でやった割には強力でしょ。」
「チッ。わーった俺の負けだ。」
ここで弓月は負けを認め試合が終わり、訓練室の中が元通りになる。2人は変身を解除しラウンジに戻る。
「すごいぞ仁!まさか弓月さんに負けを認めさせるとはな!」
「珍しいことではあるよねぇ〜。」
「ピースピース。」
ラウンジから観戦していた栞と刀は仁が帰ってくるなり褒めた。
「これで弓月から<HEROES>を辞めろって言われなくてすむんだな!」
「口には出さねぇと思うが心のなかではずっとやめてほしいと思ってるよ。」
「とりあえず自己紹介しません?」
「ん?あぁお前には自己紹介してなかったな。弓月蓮41歳だ。」
「古屋仁16歳です。普段は栞と同じ学校通ってます。」
「私たちは通っている学校が同じなんだぞ!」
「そうかよ。」
「まぁよろしくお願いします。」
「あぁよろしく。」
弓月と仁は握手をした。
「これで仁の顔あわせは全員すんだかな?」
「うわっびっくりした。アシ○クスか。」
「よくそんなにすぐ違う名前が出てくるね?靴とか売ってる店じゃないんだよ?」
突然後ろにフィックが現れ、話しかけてくる。
「で?どうしたんだ?」
弓月がそう問いかける。
「思いの外仁が強かったからね。そろそろカラーズパレットの回収に戻れそうかなと思ってね?」
「あぁ!そういえば<HEROES>はカラーズパレットを集めているんだったな?そういえばどうして集めているんだ?」
栞がカラーズパレットを集めている理由を聞く。
「理由としてはすべてのカラーズパレットを使ってかなり全属性に対応した魔力兵器を作ろうと思っていてね。そしたら君たちがわざわざ魔物を討伐する手間が減るからね。」
どうやらカラーズパレットは兵器に利用されるようで、魔物を討伐するのにいちいち仁達の手間をかけなくて良くするためらしい。
「前にも何度か聞いたことが会ったような気がするねぇ〜。」
「前やってたのは鉄也がいた頃か。」
「そうだね。彼がいなくなったことで君たちの負担が増してしまったからしばらく中断していたんだ。」
「へー。」
どうやら鉄也が所属していた頃は、魔物の殆どを鉄也が倒していたらしく空いていた刀や弓月がカラーズパレットの回収を行っていたらしい。
「そのカラーズパレットってのはどこにあんだ?」
仁が聞く。
「回収した分は支部長が持ってるよ。回収してないのは魔王ダンジョンの周りにいる魔物の額にあるよ。」
「魔王ダンジョン。」
「そうだ。旧ハワイにある魔物災害が始まった場所だな。」
魔王ダンジョン→ハワイにあるすべての元凶。40年前にこれが発生すると同時に魔物が出現し、ここを中心として魔力が広がり、世界中で魔物が発生するようになった。その中心には初めて出現した魔物である巨大な龍が存在しており、人々はその龍を魔物の王と呼び、周りの魔物の強さからハワイ諸島を魔王ダンジョンと呼ぶようになった。
「あそこって攻略できるもんなんですか。」
「俺と刀は何回か遠征したことがあるな。」
「そうですねぇ。あそこはまさに地獄ですよぉ。」
「具体的にはどんなかんじなんですか?」
「まず近づくにも海は海竜やらが多くて船がバラバラにされる。」
「じゃあ空はどうなんです?」
「この前君たちが見た翼竜型の3倍ぐらいデカいのがゴロゴロいるよぉ。」
「それはきついっすね。」
次回に続く?
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