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ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


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28-11


「全員、生きてるか?」

「生きてるよ。意識がないのがいるけど」

「魔法士だな?」

「さすがは先生」

 

 ざっと周囲を見ただけで、状況がわかっている。



 焦げた匂いがまだ空気に残っている。


 声の主から視線を外し、あたしは周囲へと一度だけ目を走らせた。



「ガルドを診てくれない?。一番重症だから」

「うむ」

「俺は、後でいいです…隊長を先に」


 彼は気丈に話すが、横になったままだ。


 視線が合った一瞬で、無理をしているとわかる。


「先生」

「ああ、わかっとるよ」


 先生はガルドの背中を診る。その顔は、見る見るうちに険しくなっていく。


「これはひどいな…」

「火傷だと思うんだけど」

「ああ」


 ミラルド先生も覗き込む。彼女の顔にも、同様に驚きと心配の色が浮かんでいた。


「ここで治療するよりも医務室のほうがいいですね」

「うむ。シエラ」

「はい」

「お前さんは、帰って薬の準備してくれ」

「わかりました!」


 シエラが走りだす。


「スチュアート!シエラを乗せてあげな」

「はい」


 シエラのスチュアートの竜に乗って去っていく。



「次はお前か?ヴァネッサ」

「いや。あいつを先に」


 あたしは、アレクシスを指差す。


「おれは大丈夫だ。かまわないでくれ…」


 彼はレイラを抱きかかえ立ち上がる。


 リクとイーナも立ち上がった。


「すぐに立ち去る…もう、迷惑はかけない」

「ちょっ…」


 私は思わず声を上げたが、フリッツ先生の怒鳴り声がそれを遮った。


「馬鹿者!」


 フリッツ先生がアレクシス達を一括する。


 フリッツ先生の怒声は、まるで雷鳴のように響き渡り、アレクシスを含め兄妹達がフリッツ先生に圧倒される。彼らは、その場に立ち尽くすしかなかった。


「怪我人を放っておけるか!。わたしは医者だぞ!。目の前に怪我人がいるというのに、無視できるわけないだろうが!」

 

 フリッツ先生の言葉には、医者としての強い使命感と、そして優しさが込められていた。彼の言葉は、彼らの心を揺さぶったに違いない。


「見せてみろ」

「いや…でも…」


 先生は彼を無視して火傷の状態を確認。


「処置したほがいいな。ミラルド。とりあえず包帯を巻いてくれ」

「わかりました」

 

 ミラルド先生が処置を始めた。



「ヴァネッサ、お前もだろ?診せて見ろ」

「どうぞ」


 あたしはフリッツ先生に背を向ける。


「うむ…お前も処置が必要だぞ」

「わかってるって…」


 あたしも包帯を巻かれた。



「レスター、ジル。カルドに肩を貸して上げて」

「はい」


 ガルドは両脇から支えられて歩き出す。


「びっくりしたぜ。いきなり現れて隊長の所に突っ走りやがって…」

「うるせえ…」


 レスターの言葉に、ガルドは力なく答える。彼の顔には、まだ苦痛が残っている。


 

 あたしはエレナを支え起こす。


「さあ、帰るよ」

「ええ…」


 エレナは弱々しくもどこか誇らしげな表情だった。


「歩ける?」

「問題ない…」


 と言った途端によろける。その小さな体が、大きく傾く。


「おっと!」

「すまない…」

「いいって」


 あたしは背を向けてしゃがむ。


「何をしてるの?」

「何って、背負ってやろうと」

「やめて。私は子どもじゃない」


 エレナな拒否する。


「こっちほうが早いから」

「あなたも怪我している」

「あたしのは一番軽いから」

「でも…」

「はよせんかい!」


 フリッツ先生が急かし、エレナは渋々あたしに背負われる。


「ほら、あんた達も行くよ」


 四兄妹に声をかけた。


 彼らは渋々あたしについてくる。


 フリッツ先生が厳しい表情で彼らの後ろにいるから、そうせざるを得ないよね。



「クア!」

「はいはい、ごくろうさん。あんた達も帰るよ」


 彼らは私に甘えるように頭を擦り付けてきた。


 その唸り声は、威嚇にも似た低い響きを持っていた。

 

 アレクシス達が足を止めた。彼らの顔には、恐怖と警戒の色が浮かんでいる。


「なんだよ!」

「クアアア!」

「やめろ!」


 リクが腕を広げて、アレクシス達を守ろうとしている。


 彼は竜に物怖じせず、対峙する。


「やめなよ」

 

 あたしは竜とリク、両方に声をかけた。


「こいつ、俺達を食おうしてる!」

「竜は人を食ったりしないって…」


 あたしの言葉に、リクは半信半疑といった表情だ。


 口笛で竜を呼ぶ。


「あいつらは、もう敵じゃないから。威嚇するんじゃないの。仲良くしな」


 そう言われた竜は、あたしとリクを何度か見て、クアっと一鳴きして威嚇をやめる。

 

 あたし以外の竜も威嚇をやめた。



「今度はなんだよ!」


 竜がまたリクに近づく。けど、威嚇はしていない。


「ふっ…あんたと仲良くなりたいってさ」

「ふざけんな!」


 リクは竜を突き放そうとするが、竜はリクの周りを回り始め、まるで遊びに誘うかのように、追いかけっこを始めた。その光景に、あたしは思わず笑みをこぼした。


 姉のイーナは怖いのか、アレクシスにピッタリとくっついてる


 あたし達はまた歩き始めた。



「竜は人の言葉がわかるのか?」


 アレクシスが驚きつつ、訊いてきた。


「そうだよ。知らなかった?」

「ああ」

「そう。竜を見るのは、初めてじゃないよね?」

「初めてみた」

「わたしもです」


 アレクシスとイーナはそう話す。


「ノーストリリムにも竜騎士いるでしょ」

「いない」

「嘘でしょ?」

「本当にいないんだ。竜は寒さに弱いからだと聞いたことがある」

「へえ」


 そうなんだ。


 うちの竜達は、冬でも元気だけどね。


 慣れなのか、それともシュナイツ程度の冬は大丈夫なのか。



 リクはまだ竜と戯れる。


「リク、お前は竜騎士になりたいって言ってなかったか?」

「なりたいよ。でも…」


 リクは言い淀む。


「でも?なんなの?」


 あたしは、彼に尋ねる。


「こんなに意地悪なヤツだとは思わなかった」

「あははは!」


 あたしは思わず笑ってしまった。

 

 リクの素直な言葉に、思わず頬が緩む。


「あんたと仲良くなりたいだけなんだよ。竜は」

「どうすればいいんだよ…」

「逃げずに黙って立ってればいいの」

「それだけ?」

「それだけ」


 リクはあたしにそばに来て立ち止まる。


 すると、竜達が鼻先でリクの匂いを嗅ぐ。


 その大きな鼻先が、リクの体に近づくたびに、彼の体がビクッと震えるのがわかる。


「大丈夫なんですか?…」


 イーナが心配そうに聞いてくる。


「大丈夫だよ。これ普通だから」

「そうですか…」

「あんたもやるかい?」

「け、結構です…」


 彼女は苦笑いを浮かべて断った。


 その表情には、まだ竜への恐怖が残っているようだ。リアンを思い出すね。

 


 竜達が、リクに鼻先をこすり始める。


「なんだよ…どうすんだよ、これ?…」

「顔を撫でてあげな」

「顔…いいのかよ、触って」

「竜は触ってほしいんだよ」


 リクは恐る恐る竜の顔を撫で始めた。


「鱗には触るんじゃないよ。指切るからね」

「わかった…」


 彼が触り始めると竜が喉を鳴らし始める。


 リクが笑顔で竜を触っている。


 もう大丈夫だね。



「すげえ!兄貴、おれ竜にさわってるぜ!」

「ああ、そうだな」

「リクが笑ってるの久しぶりに見たわ」

「ああ…そうだな…」


 アレクシスとイーナは感慨深げに話している。


 彼らの瞳には、弟の笑顔を見て安堵してるようだ。


「はよせんかい…お前らは怪我人なんだぞ」

「死ぬわけじゃないでしょ?」

「処置がまずければそうなるかもしれん」

「ガルドの話でしょ?構わず先行っていいから」

「全く…」


 フリッツ先生がため息を吐く。


「じいちゃん!おれは大丈夫だから」


 リクがそう言いながら、竜達を従えて追い越して行く。


 彼の足取りは打って変わって軽やかだ。


「じいちゃん…誰がじじいだ!先生と言え!先生と!」

「ふふっ…」


 フリッツ先生の後ろにいたミラルド先生が笑ってる。m


「笑う所か?どうゆう教育してるんだ…」

「申し訳ありません。後で注意しておきます…」


 アレクシスが先生に謝罪してる。

 


 医務室に到着。

 

 怪我人の治療が始まる。




Copyright©2020-橘 シン

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