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ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


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28-10


 エレナの魔法が、あたし達の頭上で音もなく広がり始める。

 

 星屑を集めたかのように輝き、次第にその光の粒が結びつき、巨大な魔法陣の輪郭を形作っていく。


 あたしはずっと暴走する異様な塊を彼女ともに支えていた。


 魔法陣、大きく広がって塊を包みこんでいく。


「くそっ!また重たくなった!…」


 体中の筋肉が悲鳴を上げ、息が荒くなる。もう、腕が上がらない。


「もう少し…お願い」

「無理だって…」


 一応、あたしは女なんだけど!?…。


「いつまで、こうしてればいの?」

「暴走が安定するまで…」

「だから…いつまで…」


 あたしは堪らず、膝をつきそうなる。


 その時、一気に軽くなった。


 驚いて目を開けると、目の前にガルドがいる事に気づく。


 彼は待機だったはず。


「ガルド…いつの間に…」


 彼は何も言わずに、私が支えていた魔力の塊を、力強く支え続けていた。


「ありがと…ガルド」

「俺だけじゃないですよ」

「え?」


 わたしの隣にはアレクシスがいた。


 彼もまた、無言で魔力の塊を支えている。

 

「あんた…」

「…」


 こっちは目すら合わせない。



「こいつぁ…くそ…」


 ガルドさえも、この重さに顔を歪ませる。



「安定してきた…」


 エレナはそういうけど、あたしは変化したようには見えなかった。

 

 目の前にある暴走の塊は、依然として不気味に輝き、うねり続けている。


 彼女がそういうだから、そうなんだろう。



「私の合図で伏せて…」

「分かったよ。あんた達もいいね?」


 ガルドとアレクシスが頷く。


「それから、かなり強い光を放つはずだから、直視しないで」

 

 彼女の言葉にあたし達は頷いた。

 


 エレナの合図を待つ…。


 彼女は暴走する塊を凝視する。


 エレナは最適なタイミングを計算してるようだった。


 そして、魔法陣に変化を与えて、手を離す


「伏せて」

「いいの?支えてなくても?」

「大丈夫」


 あたし達は地面に伏せた。


 すると、地面が激しく振動し始め、鼓膜を破らんばかりの轟音が響き渡る。まるで巨大な何かが、地底から噴き出すかのようだ。


「大丈夫なの!これ?」


 あたしは大声でエレナに聞く。


「だ…じょう…これ…の…え…きょう…しか…ない」


 轟音にかき消され、彼女の返事がよく聞こえない。


 あたしは暴走を確認しようしたが、エレナに肩を掴まれ止められた。

 

 少しして、背中が熱くなり始める。

 

 焼けるような熱さが、服越しに肌に伝わってくる。


「なにこれ…」


 エレナを見ると、彼女も驚きの表情を見せていた。


 この熱さはエレナにも予想外のものらしい。


「隊長!」


 ガルドがあたしとエレナの上に覆いかぶさる。


 彼の体は、熱を遮断するように私たちの体を覆い隠した。


「あんた何してんの!」


 ガルドはあたしとエレナを庇ってくれているんだ。


 彼は苦悶の表情で熱さに耐えていた。



 逃げようにもこの振動ではまともな距離は移動できないだろう。


 そして、さらに振動と轟音が増す。耳鳴りがして、視界が揺れる。



 正直、死ぬかと思ったよ。マジでさ。



 気がついた時には、何もなかったように静まりかえっていた。


 耳鳴りが徐々に収まり、視界がはっきりしてくる。


 ゆっくりと目を開ける。


 振動も轟音もない…。


 終わった?。


 体に重み感じる。


「ガルド?」

「大丈夫ですか…隊長…」


 ガルドは、彼らしくない弱々しい声を出す。その声には、疲労と、そして安堵が入り混じっていた。


「あたしは大丈夫だよ」

「なら良かった…」

「あんたは?」

「大丈夫ですよ…」


 そう言うが苦悶の表情のままだ。


 彼はゆっくりと起き上がる。が、すぐに倒れてしまう


「ガルド!」

「大丈夫です…これくらい」

「どこ痛めたの?」

「背中…」

「背中?背中かい?」


 あたしの問いに、ガルドは力なく頷いた。

 

 ガルドの背中は服が破け、肌が見えていて、赤くなっていた。


「これは…」


 あたしはさっきの状況を思い出す。


 火傷か?。


「動くんじゃないよ」

「はい…」


 ガルドは大丈夫だ。これくらいで死ぬヤツじゃない。



「エレナ!」


 あたしは周囲を確認する。


 エレナはすぐそばで伏せていた。


「エレナ!」


 彼女を揺り起こす。


「ん…」


 良かった…意識はある。

 


「痛っ!」

 

 突然、ふくらはぎと太ももの裏に痛みが走った。


 そこだけなく、他の所も痛い。なんかヒリヒリする。

 

 恐る恐る自分の足を見てみると服が破け、皮膚が赤くなっている。


 あたしも火傷してた。



「エレナ」

「…ヴァネッサ…」


 彼女のローブは一部が焦げているようだ。

 

 ローブのおかげが、幸い火傷はあたしよりも少ない。


 他は…。私の視線は、周囲をゆっくりと巡る。


 すぐそばにレイラとそれに覆い被さっているアレクシスを見つける。


 アレクシスはレイラを守ろうと、彼女の上に覆いかぶさっていた。


「ちょっと、あんた大丈夫?」


 一応、息はしてる。


 アレクシスも火傷しているが、上半身は革鎧を着ているので、ガルドよりは軽い症状だろう。


「あ…くっ…」

「大丈夫かい?」


 気がついたアレクシスの顔を覗き込む。


「終わったのか…」

「ああ」

「はっ!…レイラ!」


 彼は慌ててレイラを呼ぶ。


 しかし、レイラの反応はない。


「嘘だろ…レイラ!起きてくれ!」

「落ち着いて…」


 エレナが弱々しく起き上がり、這うようにレイラに近づく。あたしはエレナを支えて上げた。


「大量に魔法力を消費している。しばらくは意識は戻らない」


 彼女はそう言って、レイラの手を掴んで目を閉じる。


「大丈夫…魔法力が残っている…」


 そう言うとエレナも倒れた。


「エレナ!」

「大丈夫…私は、疲れただけ…レイラほど消費はしていない」


 エレナは顔色は悪いものの、受け答えはしっかりしている。



「隊長!」


 声がする方に目を向けると、レスターが竜に乗ってこっちに近づいくる。


 その後ろに、スチュアートもいた。さらにイーナとリクも。



「大丈夫ですか!」

「なんとかね…」

 

 竜を降りたレスターは安心して息を吐く。


 彼の体からは、緊張の糸が解けたかのような力が抜けているのがわかる。


「一時はどうなるかと…」

「あたしも死ぬかと思ったよ。地面は揺れるし、背中は熱いしで…」

「え?」

「え?って…すごい振動だったでしょ?」


 レスターとスチュワートは顔を見合わせ、首を傾げる。


「周囲へ影響は出来る限り限定した…」


 エレナがそう話す。


「あ、そうなの…」


 レイラの魔法の暴走による被害は、最小限に抑えられていたのだ。

 

 エレナの最後の魔法が、どれほどの力を持っていたのか、改めて思い知らされる。




「レイラ姉ちゃん!」

「姉さん!」


 リクとイーナがレイラのそばに駆け寄る。


 二人とも涙を流していた。


「レイラは寝てるだけだ」

「ほんと?」

「ああ」

「良かった…」


 リクがあたしの視線に気づき、睨みつけ、殴りかかってくる。


 彼の顔は、怒りで歪んでいる。


「よくも姉ちゃんを!」

「リク、やめろ!」


 アレクシスはリクを止めた。


「なんでだよ!兄貴!こいつらがレイラ姉ちゃんを」

「逆だ…助けてくれたんだ…」

「嘘だ!」

「本当の事だ。でなければ、こうやって話をしていない」


 リクはあたしを睨んだままだ。


 彼の瞳には、まだあたしへの不信感が宿っている。


「あんた達がどう思おうと勝手だよ。あたしらは自分達を守っただけさ」


 それだけなんだよ。



「スチュアート」

「はい」

「先生達を呼んできて」

「わかりました!」


 スチュアートが竜をかっ飛ばして離れていく。


「ライノは?」

「ミャン隊長が連れていきました」

「そう」

「腹痛えって呻いていてましたよ」

「ふっ…」


 あたしは思わず吹きだす。


 丈夫なヤツで良かった…。



「すまない…本当に」


 アレクシスは小さく呟く。


「謝る事なんかないのに…」


 リクが聞こえるように言う。


「リク、いい加減にしろ」

「でも…」


 アレクシスに窘められたリクは納得いかない顔をしている。



「怪我したのは、あたし達だけか…」

「おそらく」


 その程度の被害で良かったよ、ほんとにさ…。



 しばらくして、フリッツ先生達がやって来る。




Copyright©2020-橘 シン

 

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