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「ラキ様、聞いてください。僕、正式に婚約が決まりました!」
「えっ!」
「婚約の打診はあったんだけど、『男らしくない令息に娘はやらん』って保留になってたんです。僕は三男だから別に急がなくて良いかなって思ってたんだけど、ラキ様とみんなと話すようになって、このままじゃいけないと思って勇気を出して向き合ってみたんだ。そしたら認めてもらえて、先日無事に婚約が決まって……」
「わぁっ、おめでとう! 幸せになるんだよ!」
ラキが満面の笑みで令息の手を握りしめると、令息は顔を真っ赤にしながら「ありがとうございます……! 全部、ラキ様のおかげです!」と感極まった様子で頭を下げた。
さらに、別の令息が手を挙げる。
「ラキくん! 僕もね、ラキくんに『君の描く絵は温かくて好きだな』って言ってもらえてから諦めないで描き続けたんだ。そしたら、お父様が初めて僕の絵を褒めてくれて……」
「すごい、すごい! みんな本当に頑張り屋さんだね!」
周囲の令息たちは、仲間が幸せを掴んだり成果を出したりする度に自分のことのように喜び、お祝いの言葉を掛け合っていた。
だが、そんな平和すぎる光景を少し離れたテラス席から生徒たちは首を傾げながら観察していた。
「ラキ様~」
集まりに遅れたのか、ラキたちがいるテラス席へ駆け寄る令息二人。
「なぁっ、ちょっと良いか?」
「なんですか?」
一人の男子生徒が令息二人に声を掛ける。
「お前ら、しょっちゅうハネスト男爵令息の周りにいてキャー言ってるけどさ。ハネスト男爵令息に惚れたりしないのか?」
男子生徒の質問に周りの生徒たちは『それ、知りたかったやつ!』と耳を傾けた。
「「「しない」」」
「えっ、マジで!? あんなに美形なのに?」
「うん。僕たちにとってラキ様は憧れで、推しなんだよ。ラキ様の笑顔を見ていられるだけで充分なんだ。ラキ様を恋愛対象としてみることはないよ」
「そうそう。第一、ラキ様はカムグロス侯爵令息の婚約者だからね。僕たちがどうこうできる相手じゃないし、そんな不届きな真似をしたらラキ様たちと一緒に過ごせなくなるじゃん。絶対にしないけど」
「仮に僕らが本気で惚れたところでラキ様と結ばれないのは分かりきっているし、ラキ様も婚約者がいる身だから気をつけてくれてる。だから僕たちは、純粋にラキ様を敬愛して、ラキ様の近くにいても恥ずかしくないように自分を高めてるのさ」
「他の奴らとハネスト男爵令息を取り合いしたりしねぇの?」
男子生徒は次の質問をした。
「みんなとギスギスしたり、足の引っ張り合いをする理由がどこにあるっていうんだよ?」
「みんなと話したことなかったからラキ様を通して仲良くなれたのも嬉しいよね」
あまりにも清々しい笑顔で答える令息2人に質問した男子生徒は「すげえな……」と圧倒されるしかなかった。
ドロドロとした恋愛沙汰や嫉妬による醜い足の引っ張り合いなど一切存在しない。
あるのはお互いの成長を讃え合い、共通の“推し”を全肯定して愛でるという最も平和で尊い空間だけだった。
「もういいかな?」
「僕たちはこれで」
「おう、教えてくれてありがとな!」
令息2人はラキのいるテラス席へと駆けて行った。
「お前、すごいな」
「思ってても普通は聞けねぇよ」
質問した男子生徒を褒める生徒たち。
「………」
「どうした?」
「良いなぁ……俺もあの輪の中に入りてぇ……」
「「「!?」」」
後日。ラキが声を掛けなくても、ラキの周りには令息がまた一人二人と増えていくのだった。
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