表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/25

乗り物トライアングル

俺は、ゴーレムに乗っていた。

「これ手綱どこ!?うわまじか、背中のこぶ!?握りづらっ!待って、勝手に進まないで!」

特に操縦している訳でもないのに、ゴーレムは勝手に突進していく。草をかき分け―—【蒼】の世界樹のもとへ。

右、左と足を出すごとに体が激しく揺れる。

乗り心地どうにかならないのか。さっきから岩の隆起で尻が裂けそう。

「しっ、シデ!?あなたどうしてゴーレムに乗っているんですかー!?穴に落っこちたのでは!?」

「かくかくしかじかで骨で空を飛んできたー!」

「遂に頭がおかしく……?」

遂にとはなんだ、と思うが、今はそれどころではない。

目の前には余裕たっぷりの態度で佇む【蒼】がいるからだ。


「くらえっ、先手必勝!」


背中のこぶを強く押す。

すると、ゴーレムは後ろ手に持っていた斧を振りかぶり、世界樹へ叩きつけた。

見事な強襲が決まる。

「しゃっ!見たか世界樹、カタナに『神木封じ(シギルム)』を握らせられないのならゴーレムに握らせよう作戦!これで謎に弾かれた俺でも使えるんだ!はっはー、参ったか……あ」


しかし、本当に失念していた。


【翠】の世界樹サマの補助輪がなければ、自分の操作技術は下の下だということに。


……確かに照準は合わせていたはずだった。

なのに、斧はちょうど世界樹の真横に突き刺さっていた。

しかも抜けない。

どうしましょう。

「あはは……ちょっとタンマ。もう一回登場からやり直させて……?」

「『氷枝』」

「あーっゴーレムが!」

ゴーレムの腕が、『神木封じ』ごと凍てつく。地面に手を突っ込んだ姿勢のまま固まってしまった。

俺はバランスを崩し、滑り落ちる。すってんころりん、【蒼】の世界樹の御前へ。

【蒼】は冷酷に語りかけてくる。

「我を『神木封じ(シギルム)』で斬ろうとするとはな。誰からもらった?まさか、骨人形師か?」

「だったらなんだってんだ!どうせ言っても言わなくても凍結ルートでしょ!?」

無理に強がりながら、俺は後退る。

【蒼】が袴の袖を翻し、一歩踏み出してきたその時——

割って入ったのは、サーラだった。

「いつも通りのシデで安心しました!シデに攻撃するなんて、私が許しませんよ、【蒼】!」

「サーラ……!」

シスターの後ろ姿は何よりも頼もしい。

感動の眼差しで見上げる。少しカッコ悪い構図だけれど、これがデフォルトなのだから仕方ない。


「わーいシデが帰ってきたー!サーラもはりきってるぞー!……でも、この姉ちゃんはどうして気絶してんだ?ヴェルティア知ってるか?」

「コレネ、知ってはいけない秘密もあるのよ。野暮な詮索はよしましょう」

「変な勘違いが生まれてるぅ!?こいつ一応敵だから!あ、足折れてるから手当はしてあげて!」

「そうか、カタナを倒したのか……。しかし、敵に情けをかけるなんて、甘い」


【蒼】の世界樹は、繰り返す。


「ツメが甘いな」

発散された圧に、思わずたじろぐ。

呑まれそう―—そう感じた瞬間。

「っ!?」

腕を覆うように生えてきたのは、氷の棘。

霜焼けのような痛みが内から湧き上がってくる。

覚えがある。この技は。

「『氷茨』……っ、だっけか!精神攻撃じゃなかったのかよ!」


「何を勝手に思い込んでいる。我の『氷茨』は時間差攻撃。体内に根を張り、徐々に蝕んでいく技。そして、再び茨が芽生えた時には……もう手遅れだ」


棘が、肘、二の腕、肩、と広がっていく。

芯から凍っていく感覚。

えげつない、よりも先に、怖い、と思った。

「シデっ、シデ!?しっかり!ヴェルティア、『妖精の粉』を!」

「発動しているけど、追い付かないわ!どうしよう、このままじゃ……!」

「我の術はそう簡単に解けるものではない。

【翠】によって『神木弾き(カレスト)』が施されているようだが、()()()凍結し 

 てしまえば問題ない」

命を奪えないなら、凍結保存、ということか。

体中から棘が生えた、ウニみたいな見た目で?

冗談じゃない。

俺は、遠くの、氷の籠に囚われた【翠】の世界樹を見据える。


信心なんて全くないし、神木を壊した身ではあるけれど、願わずにはいられなかった。


―—世界樹、なんとかしてくれよ。


世界樹は、沈黙している。起きているのか、眠っているのかも分からない。


―—あんたなら、お茶の子さいさいでしょ。


信心なんてない。けれど、サーラは言っていた。信仰と信頼は違うと。

俺が世界樹ライダーとして【翠】に寄せるのは、間違いなく信頼だ。


―—また、俺と一緒に空を飛ぼうよ。


どんな(しがらみ)からも抜け出して、自由に飛ぼう。

そう、願った時だった。


狭窄する視界の端で、閃光が瞬いた。


同時に、冷え切っていた体が、熱を帯びる。

「あ……」

翠の、陽だまりの中にいる。

瞼をゆっくりと上げ、やや遅れて気付く。

「は?我の氷が……」

いつの間にか、霜焼けのような痛みは消え失せていた。

氷の棘も、きれいさっぱり溶けている。

俺は目を見開く。

「あれ……?生きてる?」

「う、うそ」

サーラが呆然と呟く。

「この光は、世界樹の、加護……?」

「はぁーっ!?シデ、それってあれだぞ!?世界樹様に認められた人間しかもらえないっ、超超超やばいご褒美一生の誉れ!」

「そうなの?」

きょとんとする俺に向けて、コレネがまくし立てる。どうやら俺は世界樹の凄い技によって蘇生させられたらしい。

「『神木弾き』だけではなく加護まで……。何故だ、何故、【翠】はそこまでこの少年を……」

「おお、体が軽い。さすが世界樹だなぁ」

狼狽する【蒼】の世界樹。

俺は笑みを浮かべ、宣言する。


「さ、返してもらうよ、【翠】を」


ドラゴンの飛翔音が近づいてくる。

かくして、総力戦の火蓋が切られた。

読んでいただきありがとうございます。

補足:世界樹の攻撃手段 第一弾 【蒼】編

・『氷枝』 

基本的な技。鼻をほじりながらでもできる。ペンライトを鼻にぶっさしながらでもできる。即座に凍結できるため、面倒くさい相手にはこれ。

・『氷茨』

時限爆弾的な技。余程ムカついた時か完全に凍らせたい時にしか使わない。タイパは悪い。

・『千年凍歌』

体内の水分を消費する大技。災害レベルの花粉爆弾。

・『神木封じ』

世界樹全員に備わっている。仲間の世界樹が暴走した時のためのストッパー。発動条件が厄介。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ