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夢は叶う、ただし骨

「これが……世界樹を封印できるってやつ?」

俺は桐箱をしげしげと眺め、それから手を伸ばす。

表面に触れると―—突然、紫電が走った。

「いっ!バヂッっつった、バヂッって!」

「おや?世界樹の一部を隠し持っているのかい?神木封じ(シギルム)に弾かれるなんて」

「俺世界樹ライダーだから世界樹の臭いでも染み付いているんじゃない」

「ふむ、どうするかね。これを【蒼】の世界樹のところまで持って行ってほしいんだけど……」

骨人形師の女性は、少し躊躇った後、手を叩き骸骨竜を招いた。

大きな図体の竜が、部屋の出口から顔を覗かせる。女性は桐箱をその竜の背に括りつけた。

「しょうがないね、うちの子を貸すよ。これで世界樹のところまでお行き」

「本当!?わーい、ありがとう!ところで、この中身って何?」

「骨で作った斧。レシピは秘密だよ」

俺は気絶しているカタナを抱え、骸骨竜に乗る。

一応、蔓で編まれた鞍が付いており、安全性は確か。見た目はどうであれ今この瞬間、俺はドラゴンライダーだ。生きているドラゴンではないことは置いておいて。

「お願いだよ、【蒼】の世界樹の目を覚ませておくれ」

「任せて、ボッコボコにしてくるから」

竜は、骨が細かく張り巡らされた翼を動かす。すると、軽やかに離陸した。中身がスカスカだからだろうか、あっという間に加速する。最後に、女性は慌てて呼びかける。


「それ!弾かれるようならそこの女の子に渡すんだよ、そうじゃないと使えないから!」


「え、こいつ絶対協力してくれないよ?」

「え」

「あ」

…終わった。




同時刻、『ドラゴン亭』の前には。

「あなた、しぶといですねぇ……」

「貴様こそ、死神のくせによくやる」

霜が張った結界が広がっていた。

鎌を担ぎ、白い息を吐くのはサーラ。シスター服から見え隠れする手足には氷のかさぶたのようなものができていた。

辺りには激戦の後を物語るように氷片がいくつも散らばっている。

「爆発する花粉と凍結させる枝のコラボレーション……さすが世界樹、としか言いようがありませんね」

サーラは頬についた氷を払いのける。

すると、ごとり、と音がして()()()()となった氷が落ちた。

それを生み出したのは、後ろに控えるヴェルティア。

「『妖精の粉』も残り少ないわ!これ以上氷を解くことができないから、ご免、極力攻撃は受けないで!」

「ふふ……無茶な要求ですね」

光の粒が降る。

サーラに纏わりつく氷が巨大化し、体から離れていく。妖精姫(ヴェルティア)ならではの解呪技だ。

【蒼】の世界樹は、追い詰められた様子のサーラに微笑を落とす。

「ほら、早くあがけ。我が推すに足りる、ささやかな反抗を見せてみろ」

「こっの性根が腐った〇〇……っと、失礼しました」

ここには書けないような暴言を吐き捨て、サーラは鎌を振るう。

衝撃波だけで氷塊が吹き飛んだ。

だが足りない。


飛ばしきれなかった氷の粉がサーラに這いよってくる。


サーラは柄を短く持ち替え、正面で小さく回す。

すると、全てまとめて、灰となって散った。

「無生物の命の流れ……やっとつかめてきましたよ」

「おお、死神の本領を発揮してきたようだな」

拮抗していた戦況がサーラの方に傾く。

―—と思われたが。


「サーラっ、ヴェルティア!シデが、シデがー!!!」


そこで、草むらから飛び出してきたのはコレネだった。

「コレネ?どうしたの?今、大変な事態で―—」

「シデが追っ手の姉ちゃんと一緒に穴に落っこちた!」

一瞬、サーラの手が緩みかけ―—持ち直した。

いや、今は動揺している場合ではない。

「無事!?よね!?」

「たぶんなー、でもあのおっかない姉ちゃん、シデに対する執念がすごかったんだよな、んー、やんでれ?つんでれ?っていうの?」

サーラは心を無にして鎌を振るい続ける。聞いていない、何も聞いていない。

「敵の子と一緒にいるのは危ないわ!早く、助けに行かなくちゃ!」

「そうそう、あの姉ちゃんのことだから分かんないぞ。シデに責任取ってって迫ってたし……今頃二人でちゅーでも……」


「させるかぁああああ!」


サーラは平静を失った。

勢いよくコレネに振り向く―—が、それは敵に背を向けると同義。

【蒼】の世界樹が隙ありとばかりに唱える。

「『氷枝』」

瞬間、サーラは氷に包まれた。

死神の鎌ごと凍てつかされ、動きを封じられる。サーラは首から下を氷漬けにされたまま呻く。

「くっ……卑劣な罠を……」

「勝手に喚いて勝手に防御を捨てただけだろう。我は何もしていないぞ」

一方、外野のコレネとヴェルティアは顔を見合わせ、

「……やっちまったー」

「ど、どうする?ワタシ戦えないわよ」

「あたしだって戦いたくねー、木なんかとは」

「これ簡単に見捨てるんじゃありません、コレネ!このままじゃ世界樹様が……」

【蒼】の世界樹は退屈そうに【翠】の世界樹が囚われる籠を見やる。

「まぁ、そろそろ頃合いか。早くカタナを連れて撤収しなければ」

「まっ、待って!」


そして、【蒼】が【翠】に手を差し伸べた時だった。


樹々の間から姿を現したのは―—ゴーレムに乗った世界樹ライダーだった。



読んでいただきありがとうございます。

次の次くらいで決着がつくかな?と思います。

段々とシデが当初の目的から離れている気が……。ドラゴンの骨には乗れたから良かったですね

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