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竜の巣

あらすじ

カタナに追い回され、挙句竜の巣に落下した主人公。

果てして主人公はもう一度世界樹に乗ることができるのか。作者も祈っております

狂戦士幼女シスターコレネは、崖の下を覗き込んでいた。

「どうしよー、シデもあのおっかない姉ちゃんも落ちて行っちゃったし……。

 なんかなー、あの穴気持ち悪いんだよな、気配が……」

崖の下は大きな円形の空間になっている。

そこは、誰彼かまわず戦いを挑む狂戦士を以てしても近づきがたい、嫌な雰囲気を纏っていた。

「もしかしたら、サーラと同格の最上位(マイノリティ)種がいるかもなー」

と、コレネは最悪の想像をして、首を横に振る。

とりあえずヴェルティア辺りを連れてくるか、とコレネは心に決めるのだった。



俺は硬い岩盤に、強かに腰を打った。

「いった!何これ、大きな落とし穴……?」

涙目で辺りを見回す。薄暗い空間で、あまり光が差し込まない。どうやら深い縦穴の中のようだった。

崖の斜面を必死にスライディングしていなければ、とっくに落下死していた。危ない危ない。

周りの壁には人が通れそうなほどの丸い穴がたくさん空いている。こう、俺を取り囲むように。

「いや……こういうの、勘弁願いたいんだけど……。ははは、まさか俺が餌なんて……」

乾いた笑いを漏らしていると、同時に。

壁にできた通路から、巨大な骸骨竜が姿を現した。

「あはは……うそっ、ドラゴン!?」

しかも初見の種。文字通り骨が剥き出しになった竜は、牙をカチカチと鳴らす。その瞳からは光が完全に消え失せている。そんなっ、肉と共に理性も腐り落ちたのか!?」

「どっ、どーどー、見た感じ、俺を食べたって何の得もないでしょ?骨だけなんだからさ」

『ガアアアアアアッ!』

「まずい、余計に怒らせた!?」

骸骨竜は、骨張りの傘のような尾を振り回し、吠える。慌てて距離を取ろうとするが――そこで。

「っておい、カタナ!?」

竜の間合いに武人の少女が倒れているのに気付いた。

このままでは巻き込まれる。

俺は両足に急な方向転換を強いる。

牙が空を裂く。すんでのところでカタナを抱え、竜の股の間に滑り込む。

そのまま穴の端を目指して猛ダッシュ。

「カタナっ!カタナ、起きろよ!敵だぞ!」

カタナは腕の中で小さく呻く。落下した時に岩にぶつかったのか、額から血が流れている。

不安に駆られ何度もその細い体を揺さぶる。

すると。

「ん……あれ、ここは……」

「よかった、無事!?意識ははっきりしてる!?」

「うん……って、貴方!ぶつ切り!」

「意識はっきりしすぎても困るぅ!?」

目覚めて早々蹴飛ばされるところだった。俺は身をよじり退避する。

「こっ、このまま二対一とかやめてよね!?ほらあの竜見て、新種だよ!やばいんだよ!」

「あれは主食(メインディッシュ)。まずは前菜(あなた)

「その前にメインディッシュに食われちまうよ!」

そうこうしている内にも骸骨竜は近づいてくる。

挟み撃ち。

この場で一番弱い俺が、真っ先に袋叩きにされる。


――しかし、竜が眼光を向けたのは、俺ではなくカタナだった。


骨の尾が鞭のように振るわれる。

反射的に、カタナも脚を繰り出す。

一瞬の出来事だった。

土埃が轟と吹き荒れ、視界を覆いつくす。

衝撃波が通り過ぎ、俺が再び瞼を開くと。

「くっ……っ」

地面に片膝をつく、カタナの姿があった。

自身の武器である脚を押さえ、苦しそうに蹲っている。

骸骨竜は、高らかに雄たけびを上げている。


カタナが、競り負けた。


絶望を塗り重ねるように、壁の穴から次々と竜が現れる。

皆等しく、肉の鎧を捨てた不気味な出で立ち。

「う、足、折れた……」

カタナは、脂汗を滲ませながら、弱々しく呟く。

「あたしの、武器、もうない……」

「な、何言って」

「あ、あたし、使い物にならない。あいつに膂力で負けた……。敗れて、戦えなくなった武人に、価値はないのに……」

「はぁ!?さっきまでの威勢は!?俺を倒すとか言ってたくせに!」

目の前には大勢の竜。どいつもこいつも、俺たちを食そうと目を輝かせている。

「武人は、負けたら終わり……。あたしの村ではそうだった。お父さんにもお母さんにも褒めてもらえなかった……。戦士団には、居場所がなくなった……」

竜たちを前にして、途切れ途切れの独白をするカタナ。

俺はそんなカタナを見て、拳を強く握りしめる。

それから、カタナを背負い――一目散に駆け出した。

「放してっ!あたし、ここで死ななきゃ……なんで見捨てないの、見捨てたら、貴方は逃げ延びられるかもしれないのに!」

「じゃあ見捨てろって!?あんた、俺に負けた時は命を捨てようとしてなかっただろ!」

「あれは負けじゃない!」


「じゃあ、これもまだ負けじゃない。ちょっとくらいで失敗って決めつけんなよ!それなら俺、今までの人生負けに負けてることになる!」


背中で、カタナが驚いたように身じろぎするのが分かった。


俺はがむしゃらに走り続ける。

が、狭い穴の中のことだ。

すぐに反り立った壁が行く手を阻む。

後ろからは、骸骨竜が迫ってきている。

そして、俺は――


竜の群れの中から出てくる、一人の女性を見た。


読んでいただきありがとうございます。

世界樹たちどこ行った……と思う方もいるかもしれませんが、一応このエピソードも関係があります。

いや、オタク気質の世界樹を描いているとシリアス味がなくなってしまうので……。

【紫】姐さんの登場は先になりそうです

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