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【翠】の世界樹争奪戦

前回までのあらすじ 

【蒼】の世界樹の襲撃を受けたシデ達。シデは世界樹を取り戻すためカタナと戦うことになる


カタナとの衝突。

それは必然であり、逃げても追ってくる(ゲロ)ハウンドのようでもあり――

俺に最も勝ち目がない戦いだった。

「氷の剣って何!?世界樹の力借りんの反則じゃね!?」

「どの口が!この世界樹泥棒!」

二本の氷柱が頭上から降り注ぐ。

俺は森の中を縦横無尽に駆け回りながら、ぎりぎりのところで躱す。

氷柱――もとい、カタナの脚による猛攻を。

終いには俺がブリッジで避けだすものだから、カタナは怒りを爆発させた。真剣にやってるのに!

「ちょこまかと逃げるな!堂々と戦え!」

「いや無茶だろ!世界樹に乗ってない俺はただの一般人だからっ!?」

カタナはもう冷静さを欠いている。

力でゴリ押ししてくる戦士ほど厄介なものはいない――と、迷宮にいた時に聞いたことがある。

そんなことを語った当の先輩下働きは、その後ドワーフの女性と結婚していた……いや、今はどうでもいい。

「あのさあっ、お宅らは世界樹は取り返すことが狙いなわけじゃん!何も俺を攻撃する必要はないと思うんだよねー!」

「〇ス!」

「わぁ話が全く通じてない!」

そこで、俺は木の根に躓いてしまった。あ、と呟いたがもう遅い。

その先が坂道だったこともあり、勢いよく転がっていく。巨木にぶつかったことで止まりはしたものの、すぐに体勢を立て直せない。


これは――


サーラと一緒にイフリートに出くわした時よりも、直感的な悟り。


死ぬな。


背後からカタナが襲い掛かってくる。

俺は固く目を瞑る。

が。

――氷の剣は、目と鼻の先で弾き返された。

「っ!?」

()()()()で殴られたカタナは宙を舞う。

唖然とする俺の横には。

「シデ、下がってるんだー。ここはコレネ様の出番」

シスター服を纏った茶髪の少女、コレネがいた。

「けほっ、貴方も……いちょう切りにされに来たの?」

「全く当たってねぇぜー、姉ちゃん。あたしは戦いをしに来てんだ」

瞬間—―コレネは発走し、カタナに膝蹴りを食らわせる。

先手必勝。

と言わんばかりの不意打ち。

みぞおちを押さえながら吹っ飛ぶカタナに、すかさず二撃目を放つコレネ。

今度は回転してからの殴打。容赦がない。


カタナの脚の氷武装に亀裂が入る。


「【蒼】の世界樹の武装に傷を……!くっ、狂戦士……!」

カタナは木に背中から激突し、轟音を鳴らす。

俺はひとまず息を吐こう――としたところで、コレネを見てギョッとした。

「コレネ!?おいどうした、怪我したのか!?」

コレネは、目から血の涙を伝わせ、口からも血を滴り落としていた。

「あー……。大丈夫だー、敵を倒す代償だから。呪いの跳ね返りみたいなもんだー」

「じゃあ大丈夫じゃないだろ!どうやったら血を止められる!?」

「うーむ、ここまで心配されると変な感じがするなー。サーラに申し訳ない……。まぁ戦わなければ血を流すことはないがなー、そしたらシデが……」

「よし逃げよう!危なくなるまで戦うな!」

俺はコレネを米俵みたく担ぎ、ドラゴン亭の方に向かって駆け出す。

「うー、サーラに怒られないかな、この状態……。シデ、逃げるだけじゃ駄目だぞー。あたしたちでケリをつけなきゃ……」

「分かってるよ、俺はサーラに助けを求めに行くわけじゃないんだ」

「?」

ドラゴン亭には、()()()()()が置いてある。

それは、俺が迷宮で勝ち取った戦利品。


「ゴーレム!ゴーレムに乗れば、俺だってカタナに勝てる!」




カタナの攻撃を必死に躱しているうちに、随分遠くまで来てしまったみたいだった。

復路は地獄だ。

何せ、鬼のような形相をした少女が追いかけてくるのだから。

「待て!止まらなければぶつ切りささがきみじん切りのフルコース!」

「それじゃどっちみち死んじまうだろ俺ー!!止まるもんかよ!」


こちとら何回魔物に遭遇して命からがら逃げ延びてきたと思っている!


そう心の中で叫びながらひた走る。中々俺に追い付けないカタナは遂に精神攻撃を仕掛けてくる。

「このっ、世界樹には乗れるくせにドラゴンには乗れない可哀想なヤツ!」

「うぐっ」

「空気読めない責任感ない!人様に迷惑かけてばっかり!」

「うぐぐっ」

「そうだそうだー、乙女心に気付けない鈍感野郎ー」

「なんでコレネもそっち側!?寄ってたかっていじめないで!?」

だが、仲間と敵の板挟みになっても、惨い仕打ちを受けても、足は止められない。

カタナが大声で叫ぶ。


「そんなんだから、ドラゴンに乗れないんだ!」


その言葉は、俺の逆鱗をなぞった。

憤怒に駆られた俺は、思わず振り返る。

「その言い方は……!」

――しかし、次の瞬間、俺は心の底から後悔することになる。

俺が足を踏み出した先は――崖だったから。

「う、そおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

すんでのところでコレネだけは放り出し――

俺は真っ逆さまに落下していく。

飛びかかってきたカタナと一緒に。



そして、今の俺は与り知る由もないのだが。

その崖の下は、「竜の巣」と恐れられる場所だった。


読んでいただきありがとうございます。

カタナの「○○切り」には一応彼女の心情が表れています。

いちょう切りとかは比較的穏やかで、ぶつ切りなどは殺意を示しています。

ささがきはデフォルトですね

それにしても……ドラゴンにゴーレムって、シデはどれだけ浮気するつもりなんだ

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