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楽しいゴーレムハント

突然だが、ゴーレムを生け捕りにするのはなかなか骨が折れる仕事だ。

まず、ゴーレム協会の監視の目を潜り抜けて迷宮に不法侵入……

じゃなかった、お邪魔させてもらう。ちなみにゴーレム協会の方々は賄賂に弱いらしい。

それから、古代のエルフたちが作り上げた至高の一品、今では絶滅危惧種のゴーレムを狩る。

不眠不休でゴーレムと格闘しているせいで目がキマちゃっている彼らに、何度食料を奪われてきたことか。本当、ゴーレムハンターとはろくでもない無法者だらけだ。

……と、思っていたのが懐かしい。

「ラヲゼさん、ラヲゼさま、ここはどこですか」

「ン、知らないかい?この地方のB級迷宮……『巌腕(いわおかいな)の洞窟』だよ」

目の前には、巨大な岩が幾重にも積み重なる、鳥の巣を逆さまにしたような形の洞窟がある。

乾いた失笑が漏れる。

本当はドラゴンに乗りたい世界樹ライダー、ゴーレムハンターに転職する。




始まりは、俺が非情にもゴーレムを大破させたことだった。

空き地の上でひたすら土下座に徹する。

「すみませんすみませんはい、こうなったら弁償のために寒中の魔物の死骸さらいでもなんでもしますので」

「そんなことしなくても大丈夫。君が並の腕前じゃないってことは分かったから……」

並の腕前だったら村の神木にドラゴンともども激突するわけない。

壊した後に、あの神木、耐久力ないからただの木じゃん、と言ったら、ぶん殴られて村を追放されて迷宮へ奴隷のように売り飛ばされた。さもありなん。

血と汗にまみれた回想にふけっていると、ラヲゼさんが優しく俺の肩を叩いた。

「始めはみんなそんなものだよ」

さすがラヲゼさん……。どこかの仏の見た目をした死神より仏をしている。

「シデのやらかしは今に始まったことじゃありません、同じ失敗を繰り返すおバカですけど、何事にも全力で熱くなってしまうだけですよ」

「え、それって褒めてる?貶してる?」

「……褒めてるんですよ」

サーラは頬を膨らませてそっぽを向く。

なんか最近当たりが弱くなったような……と首を傾げる俺に、ラヲゼさんは提案を一つ。

「でもさ、ゴーレムないのは困るから……ゴーレム狩りに行かない?」




そうして今に至る。

「あの大きさじゃ洞窟に入らないから世界樹は置いてきちゃったけど……俺全く戦えないよ?申し訳ないけど役に立たな……」

「囮って役割があるだろー」

「ン、ゴーレムハントにおいて囮は立派な仕事だよ」

「もう帰りたい!」

狩りという言葉に、樹液に群がるカブトムシのように食いついてきたコレネも加えた一行は、洞窟の奥へと進んでいく。

具体的には狂戦士に武人に囮。なんてこったい、支援職が一人もいない。

「ヴェルティア連れてくれば良かったんじゃ……物の大小を操れるんでしょ?」

「いや、師匠のは魔力が強い物には利かないから……。って、あれは……」

そこで、先頭を歩いていたラヲゼさんが立ち止まった。

見ると、目の前には……()()()なゴーレム。

「何、あれ……?黒なんて見たことない……」

迷宮で聞いたあらゆる情報を思い返しても、全く心当たりがない。

嫌な予感に、胸がざわつく。

「変異種かー?素体は普通のロックゴーレム[小]みたいだけどー……まぁ殴れば分かるか」

真っ先に駆け出したのはコレネ。巨大なナックルを装着して、ゴーレムに肉薄する。

一瞬で距離を詰める。(コア)がある頭部めがけて、拳を振り下ろす。

――しかし。

『ゴアアアアアアッッッッッッ!!!!!!!!!』

咆哮。

それだけで、コレネの小柄な体はいとも簡単に吹き飛ばされた。

「コレネっ!」

洞窟の岩に激突必至のコレネを、すんでのところでラヲゼさんが受け止める。

だが、衝撃を殺せず二人ともども壁に打ちつけられた。俺も、慌てて駆け寄ろうとする。

――だが、人の心配をしている暇はなかった。

『ゴルアアアアアアアアアアッ!』

「狙いは俺ぇっ!?ちょ待、俺戦エマセーン!お手柔らかにぃぃぃっ!?」

ゴーレムの丸太のような腕が振り回される。単調な動きで良かった!攻撃の軌道はすでに把握している。

……それでも。

「攻撃速度速いっ!反則反則!」

ゴーレムは尋常ではないほど機敏に動き回る。軌道なんて読めたものじゃなかった。

腕が水平に薙がれ――俺の胴へと吸い寄せられていく。死、の一文字が頭をよぎる。

「あ――」

視界の端から迫るのは、黒。俺の意識も合わせて暗転していく。

と、その時。

「手綱!」

ぐん、と体が引っ張られる感覚がした。

命を刈り取る腕が目と鼻の先を通過していく。九死に一生を得た、と気付いたのはラヲゼさんに声を掛けられたときだった。

「大丈夫か、シデ!?すまない、フォローが遅れた!」

俺の胴に巻き付けられているのは、太い綱。ラヲゼさんの肩から生えているものだった。それは武人の証である、身体武器。

「ラヲゼさん……!良し、じゃあ俺は下がっ……」

「いや、囮になってくれ」

固まる俺を他所に、ラヲゼさんは四本の綱を構える。

「ドラゴンライダー志望の君に、やってほしいことがある」

読んでいただきありがとうございます。

ゴーレムは作者が一番好きなモンスターです。人造モンスターというのに浪漫を感じます。ゴーレムは土から作られるので、よほど痛車的な嗜好にハマっていない限り茶色ですが……【黒】とは……

……あと主人公、どれだけ肩書を増やしたら気が済むんだろう

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